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「暇なら物理攻撃しろ」と、双剣を渡されて旅立つ召喚士の少年の物語~【召喚士の旅】Summoner's Journey  作者: 桜良 壽ノ丞
【Responsibility】遠くない未来、そこにいる自分のために

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Responsibility-09(078)


「キリム君は知らないかもしれないが、旅人等級10、旅人の中で最強と言われる魔法使いだよ、3人とも」


「えっ!? 等級10ですか!?」


 あまり他人の実力や旅人登録者を調べたりしてこなかったため、キリムは偉人とも言われるような旅人も知らない。マーゴ達も等級が8であるとなれば、何らかの功績を認められているのだが……キリムはその功績に媚びる事すら思いつかないようだ。


 そんな功績ではなく、人物を慕うキリムだからこそマーゴ達も心地良い。素性も知らずに接してくれる者は、マーゴ達程にもなれば貴重なのだ。


 それは老婆達も同じなのだろう。とても優しく微笑み、孫に聞かせるように口を開く。


「長くやっとればね、それくらい出来るようになる。長くやる気があるか、ないか、そんだけよ」


「年寄りはね、出来ん事はもうどう頑張っても出来んとよ。キヒヒッ、出来る事にしがみつかにゃ(しま)えるだけたい」


「あたしらもですね、もうこうやって飛行術が使えんごとなったら、もう終いやねって言っとるんですわ」


 老婆達はもう年だからと口癖のように言い張るが、多少腰が曲がっていて、多少動作が遅いだけだ。よく喋り、サッサと行動する。ここでどうするかを悩むのではなく、取捨選択が早い。


「お婆さん達はなぜ魔窟にいたんですか?」


「このもう少し下にね、魔霊茸(まれいし)っちいうキノコが生えとるんよ。それを乾燥させてね、すりつぶして薬にしとるの」


「体にええの。天然物やないと効果が全然違うんやけど、天然物はもう地上には無いっち言われとる。体の血管の詰まりも少しずつ溶かされるし、関節痛も和らぐし、目もシャキッとするんよ、キヒヒ」


 まさか今更修行でもないだろうと思いながら尋ねると、案の定目的は魔物退治ではなかったようだ。もうこの魔窟で倒せない魔物はいないのか、治癒術士のレベッカはともかく、ヤチヨとトルクは1人でも来るらしい。


 そんな「魔女」が3人もいれば、もうマーゴ達に危険はない。ステアはキリムの腕を掴むと、キリムの意思を確認せずに8人に告げる。


「悪いが、俺とキリムは先に引き揚げさせて貰う。まだ昼にもなっていないが、これ以上戦わせることはできん」


「ああ、そうだな。幾ら強くても気力や魔力の練り方が未熟なキリム君にはきつい戦いだった。もう体を休めた方がいい」


「今年の新人がこんな所におるだけでも大したもんやし、後は任せなさい」


 キリムとステアの瞬間移動の話は何処からとなく広まっていたのか、帰還方法を訊ねられる事もない。キリムはステアの分もぺこりと頭を下げ、そしてそのままの姿勢で消えた。


 老婆達とマーゴ達が地上へと歩き出す。手当した者達も先に逃げており、被害状況は旅客協会に確認しなければ分からない。


「さて、あんた達。あの子の実力をどう見るかね」


「キリム君、ですか」


「1人で戦わせるのは危なっかしい。本人もクラムステアも、まだ自分の力を測りきれていないな」


 旅人として最上位の存在とはいえ、槍術士のニジアスタはあまりへりくだった態度を取らない。いたって冷静にキリムの戦いを評価し、レベッカに伝えた。


「ただ、クラムステアをしっかり制御できるなら、1人であの5体のドラゴンを倒せただろうな。経験不足、それに尽きる」


「ふむ、まあそういうものだろうね」


 レベッカは頷き、そしてトルクやヤチヨを振り返る。2人とも頷き、そしてレベッカは再び前を見る。


「あんた達、今回の魔窟の騒動をおかしいと思わなかったかい」


「ああ、明らかに異常だ、毎年来ているが数日前に初めて見た魔物だった。魔窟には時々強い個体が発生するが、あれはそんなレベルじゃない」


「まあ、そうやね。あたしらはあの召喚士の子を狙っとったと踏んどる」


「えっ?」


 リャーナが思わず聞き返す。


「デルがあの子の存在に気付いて、脅威だと判断したんやなかろうか。あの子の動向をチェックしとる者は多い。行動は筒抜けばい」


「ちょいと計画を早める必要がありそうやね。キヒヒ……」






 * * * * * * * * *





 キリムはノウイに戻り、今日は珍しくステアに担がれていない状態で入門の手続きをした。寒空の下、雪が降る氷点下でも、まだ昼間となれば幾分マシだ。夜はベッドの中でふとんにくるまり、さらに暖房をつけていても寒さで目が覚める。


 やれる事は昼間のうちにやっておかなければならない。キリムとステアは装備や顔や髪を簡単に拭くと、すぐに宿へと向かわず、繁華街を目指して歩き始めた。


「どこに行く」


「とりあえず食事。12時になってもないけど、せっかくだからしっかり食べるよ。血はその後でいい?」


「ああ」


 繁華街の1軒のダイナーに入り、キリムは10個程並んだ丸テーブルのうち、窓際の席についた。食事は必要ないが、ステアも向かい合って座る。


「何にいたしましょう」


 木の香りが心地よい店内はとても落ち着きがあって、どこかイーストウェイで訪れたアビーの店にも雰囲気が似ている。


 白いワイシャツに黒いエプロンのギャルソンがメニューを聞きにやって来ると、キリムは牛ステーキとタラのすり身のスープを、ステアも牛ステーキとホットビールを頼んだ。


「ステアってさ、ビール好きだよね」


「ああ」


「ステアが飲んだり食べたりしたものって、どうなるんだろう。消化とかするの?」


「さあな。墓前の供物のようなものだろう。人は自分の体に何が起こっているのかを把握しているのか」


「いや、そう言われるとあんまり分からない……まあ、いいか」


 今日の魔窟での出来事を考えたくなかったのか、キリムは当たり障りのないいつもの会話を続ける。ギャルソンが熱々に温めたビールを先に持ってくると、ステアは水を飲むようにごくりと喉を潤した。


「熱さ分からないのに、何でホットビールにしたのさ」


「味は変わるからな、たまにはいいかと思った」


「周りの人すっごくビックリしてるよ。そういえば、イーストウェイのアビーさんの店で熱い珈琲を飲み干した時も驚いた」


「どことなく店の雰囲気も似ているな。後で珈琲を頼むか」


「周りの反応じゃなくて味を楽しんでよ」


 キリムが周囲の反応にため息をついていると、ふとまだギャルソンがテーブルの横にいる事に気が付いた。どこか少し気弱そうな優しい顔、短い赤毛は少しカールしていて、ステア程ではないが背も高い。


 雰囲気からどこかであったような気がしていると、向こうも何か心当たりがあったようで、真面目な顔をしてキリムへと尋ねた。


「あの、すみません。聞き間違いかもしれませんが、イーストウェイのアビーと言いましたか?」


「えっ? あー……はい」


 幽霊のと付け加える事はしなかったが、知り合いなのだろう。ギャルソンは優しく微笑み、懐かしそうな目をして通りに面した大きなテラスを見つめた。


「……この店は、本当は姉さんが継ぐはずだったんです」


「お姉さん? アビーさん……アビゲイル・ヒューズさんの?」


「はい。ああ、まだ名乗っていなかったね。イーサン・ロアだ。アビゲイルは1番上の姉。この店は俺の2つ上の兄が父から継いだのさ」


「アビーさんのご兄弟!」


 兄弟だと聞き、キリムはそれ以上どういえば良いか分からず、そうなんですかとだけ返事をした。アビーが亡くなったのはもう数年前、キリムが会ったのは半年前だ。何故知っているのか、信じては貰えないだろう。


「……見たところ、旅人だね。歳も若そうだ。イーストウェイの出身なのかい」


「いえ、そうではなくて、ですね」


 どう伝えていいのか迷っている時、心強いのがステアだ。空気は読まないし、なんなら吸う事も吐く事も必要ないかもしれない。


「アビーの霊が現れ、旧墓地から夫の骨を持ち帰ってくれとクエリを頼まれた。今年の夏前の事だ」


「えっ?」


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