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「暇なら物理攻撃しろ」と、双剣を渡されて旅立つ召喚士の少年の物語~【召喚士の旅】Summoner's Journey  作者: 桜良 壽ノ丞
【Responsibility】遠くない未来、そこにいる自分のために

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Responsibility-01(070)



【Responsibility】遠くない未来、そこにいる自分のために



 ゴツゴツとして乾いた岩肌、デコボコした足元。そんな深く暗い洞窟の中にコツコツと足音が響き、電球のように明るい光が移動していく。


 仄暗い中で次第に壁が色を表すも、その色は灰色か焦げ茶色だ。残念ながらそれを見て気分まで明るくはならない。


「キリムたち、上手くやってるかな」


「やってるだろうさ。俺達が束になっても敵わないウーガを、簡単に倒したステアがついてるんだ。俺達は俺達の心配をしないと」


「地下の方が強いって言っても、地上の階層の魔物が弱いわけじゃないもんね。希少な鉱石はこの付近でも見つかるし……」


「待った。そこの壁を照らしてくれ、その黒い部分!」


 魔窟での材料収集および修行を開始してから1か月。外は雪もちらつく季節となった。洞窟内の温度はあまり変化がないものの、11月は外に出れば日中でも氷点下になる。


 マルス達のパーティーは地上へと延びるコースを探索していた。


 地上のコースは初心者向けと言えど、初心者向けの弱い魔物が出るという訳ではない。


 道があまり複雑ではなく、そして所々崩れた山肌から光が差し込んでいることで方向を見失う事がない。そして、それによってある程度魔物が出ない場所があったり、一定以上の強さの魔物が地下層を好むなど、比較的安全というだけだ。


 マルス達が地上層を選んだ理由として、比較的安全だというのは勿論ある。けれど、宝石や魔物から採れる素材を除けば、貴重な鉱石は地上の方が多いのだという。


 マルス達の狙いはその鉱石だった。


 エンキが鉱石に虫眼鏡のような道具を当てて確認し、少し削り取る。その欠片を鍛冶師御用達の測定顕微鏡で除き込むと、驚きの声を上げた。


「すげえぞ、天然の強靭鋼だ」


「強靭鋼?」


「ああ。難しい事言っても分かんねえだろうけど、簡単に言うと自然に出来た合金ってところだな」


 エンキは良い鉱物が見つかれば採掘に取り掛かる。勿論、通常のつるはしやシャベルで掘ればどれだけ時間が掛かるか分からないが……。


「ハードヒット!」


 エンキが手に持っているのは斧だ。そして、付け焼刃ながら習得した斧技……要するに気力を込め、思いきり水平に振るだけの技を放つ。鉱脈は砕かれ、こぶし大ほどの大きさの鉱石が周囲に散る。


 エンキはあくまでも鍛冶師であり、材料の目利きは出来ても採掘の腕がある訳ではない。何時間も掘るのは時間が勿体なく、またマルス達をその間無駄に待機させてしまう。


 そこで旅客協会にて斧の使い方を相談し、ゴジェの伝手で斧を購入し、つるはしのように振っているのだ。鍛冶の際、誰に教わるでもなく気力を使っていたエンキは、数日の練習ですんなりと習得してしまった。


「うん、やっぱり。強靭鋼の周囲にアルテマ鋼がある」


「アルテマ鋼?」


 片刃の斧の反対側がつるはしになっており、そこを器用に使って掘り出した青黒い鉱石。それを見せて、エンキは二カッと笑顔を作る。


「ああ。そんなに量は採れねえけど、クロムなんかを含む天然の強靭鋼の周囲にあるんだ。ミスリルよりも硬くて、この斧も気力使って振わなきゃ欠けるだろうな」


「あー……それってつまり凄いってこと?」


「まあ、そうだな。かなり凄いってところだ。この感動が伝わらねえのは悲しいけど、採掘終わるまで警戒頼めるか」


「任せとけ!」


「はい。じゃあエンキには筋力を一時的に支える魔法を掛けておいてあげる」


 採掘で音が響けば、魔物も勿論寄って来る。早速近づいてきたのは上顎から下に大きな牙が生えたファングウルフだ。


「お出ましだぜ。サンはエンキの傍を離れるな! リビィは右から回り込め! ブリンク、左からだ!」


「ああ。俺達だって、負けてはいられないからな!」


 採掘が終わると場所を変え、戦いながら鉱石や優れた耐火性、耐靭性を備えた糸を吐く蜘蛛を探す。5人は今日も、最終のトロッコに間に合うギリギリの時間まで粘り、トロッコ乗り場へと駆け込んだ。


 皆が口をそろえて「キリムに負けていられない」と言う。


 ひたむきに頑張る若者達の目標は、いつしかベテランの旅人や大金持ちなどではなく、キリムになっていた。





 * * * * * * * * *





「キリム、そろそろ今日は良いだろう。力尽きるまでとは言ったが、本当に力尽きては困る」


「ハァ、ハァ……ちょっと頑張り過ぎたかな、ステアごめん、目が回ってる、立ってられない」


 その頃、もはやトロッコという言葉すら頭の片隅にもないキリムとステアは、旅人の間で地下6階と呼ばれている区域で今日最後の討伐を終えるところだった。


 この辺りになると、様子見で覗きに来るようなパーティーは殆どいなくなる。


 2階層下には安全区域が設けられ、それより下を探索する旅人が休憩している。それよりも上の階はあまり人も来ず、強いて言えば地上との行き来で通り過ぎるくらいだ。


 キリムは今日も、短剣を鞘に納めることすらままならない程の全力で魔物を倒し続けた。膝と両手を地面について体を支え、どうやらもう一歩も動けないらしい。


 そんなキリムを、ステアは当然のように抱き上げ……腕に抱えるのであれば微笑ましい光景とも捉えられるのだが……ひょいっと肩に担ぐ。


 優しさが雑なのはステアなのだから仕方がない。


 鍾乳石の柱や、硬い岩の層はどこを通っても見たことがあるような錯覚に陥る。けれどステアにはどんな場所かなど関係ない。


「瞬間移動する。舌を噛まんよう口を閉じておけ……やれやれ。5日連続で気を失ったか」


 ステアは瞬時に町の門まで戻り、そして入門の列に並んだ。辺りはすっかり暗くなったが、まだ門が閉まる時間までは少しあるようだ。門の前にはかがり火が設置され、灰色の高い外壁と、うっすらと積もった雪を照らしている。


「おい。我が主は今日も眠っている」


「ああ、あんたらかい。やっぱり噂になる程の新人となりゃあ、その気合も段違いのようだ。クラムさん、代筆だけ頼む」


 ステアに担がれたままのキリムは気絶なのか眠っているのか、声を掛けられても起きる気配がない。門番は豪快に笑うとステアへと記帳用のペンを渡した。


 「あの召喚士」を「あのクラム」が担いで帰還する。それはもはや名物になっていて、他の旅人から労いの言葉を掛けられることも多くなった。


 召喚士はクラムに戦わせ、自分はただ魔物に気を付けさえすればいいだけ。

 お気楽でいい。

 突っ立っているだけで仕事になる。


 町を歩いていて、そんな言葉が聞こえなくなったのはようやく先週からだ。


 もっとも、そんな事を言ってステアから堂々と殺気を放たれたなら、次からは言える筈もないのだが。


「やれやれ」


「あ、ステア! キリムは……あら? どうしたの?」


「力尽きた」


「……疲れて眠ったとか、他の言い方にした方が無難じゃないかしら」


 ステアが記帳を済ませ、門をくぐったところで、明日の打ち合わせをしているマルス達と遭遇した。声を掛けてきたのはリビィだ。サンがキリムを覗き込み、そしてヒールやケアなどの魔法を掛けてくれる。


「うん、典型的な疲労ダウンね。魔力は戻りが遅いから、この様子だと明日の午前中までは魔法を控えた方がいいよ」


「倒れるまで全力で戦い、気絶か睡眠か判断がつかないくらいぐっすり寝ている。俺達はこのまま部屋に戻るぞ」


「分かった。後で俺が料理を部屋まで運んでやるから、起きたらキリムに食わせてやってくれ」


「私達も気づいたらお昼ご飯食べただけで、ずっと探索と戦闘の繰り返しだったし。夢中になっちゃうの分かるな」


「色々素材も集まってるから、休みの日があるなら一度集まろう、情報共有も必要だ」


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