1/2
プロローグ
「やっぱ無理ぃいいい!!降ろしてぇぇぇえ!!」
腰に抱き着き絶叫する少年、その姿が幼い頃の自分と重なった。あの頃は高い所が苦手でよく母にしがみついて泣いていたなと思い出し苦笑する。
「山を越えるにはクーに乗るのが一番早いんだ。基本、移動はクーに乗るから早く慣れることだね」
「無理無理無理無理!!むーりー!絶対落ちる!!先生は怖くないの!?」
「最初は怖かったけど、慣れだよ慣れ」
落とされることもあったが、今ここでそれを言えば逆効果なので心の中に留めておく。
「俺、慣れる気がしない…」
「じゃあ、気を紛らわせるために昔話でもしようか?」
「昔話?」
涙目のまま、きょとんとした顔を見せる弟子の涙を指の腹で拭ってやる。
「あぁ。私がお前と出会うまで何をしてきたか、何を見てきたか教えてやろう」
泣き虫で弱虫だった私が、弟子を取るほどに強く逞しい立派な魔女になるまでの話。
…………。
嘘です少し盛りました。今でも泣き虫で弱虫です。