私のわたし 4-2
アオがチカラを使うと石の台が二つ、地面から出てきた。触らせて貰うと『コンコン』と硬い。調理台の様だ。何でも出来ちゃうんだね。
「この場合は圧縮して、引き上げるイメージですね。慣れるまでは大変かもしれませんが、慣れれば応用も出来る様になります。熱を加えるイメージで、」もう一つの調理台が熱くなってきた!
「火の代用も出来ます」わー!アオがいたら竃もいらないのかー!イイねー。一家に一人、アオが欲しくなるねー。
「私が欲しい……のですか?……不束者ですが宜しくお願いします」なにが?
下処理した鳥を焼き始める。加熱した調理台からはジュ〜って、イイ音が聞こえて来る。香りも……美味しそうだ。後は塩をかけて完成か……な?何それ?黒い水……。
「これは以前に貴方様が開発された〈ソース〉という調味料になります。こうして自炊する際には必ず持ち歩いております。この様に焼いた肉にかけて……」ほ、芳醇な香りが……は、早く!それを食べさせて!
「こちらを」アオが手をかざすと箸と皿が地面から現れた。皿に盛り付けると、
「どうぞ、お召し上がりになって下さい」頂きます!
かぶりつくと〈ソース〉の旨味と香りが口の中に広がる。肉の旨味と肉汁が合わさると……あー、美味しい、美味しいぞー!フフ、私は天才だったんだな……。
あ、無くなっちゃった……アオ、ゴメン。アオのも食べちゃって……。
「気になさらないで下さい。貴方様の為に用意させて頂きましたので。喜んで頂けたのであれば幸いです」
んー、いや、申し訳ない!こんな美味しいのをご馳走になったのに!んー、ん、ん、ん⁉︎イノブタを発見!『何処でしょうか?』あそこだよ!豆粒位の見えるでしょ?『……大分、離れてますね……』ちょっと待っててね。あの石ころを……えい!『パン!』
「えーと、よく当たりましたね……。普通はあそこまで投げるのも大変ですが……流石です」顔が引きつっているアオは置いといて獲物を捕りにいく。傷は……大丈夫だね!美味しく食べられそうだよ!
「私の為に……有難う御座います。……うわああぁぁ!うぅぅぅ……」アオは泣き虫だなぁ。泣きながら調理しだした。隠し味に鼻水は入れないようにね。『ばい』
イノブタも美味しそうだっから貰ったら、こっちもソースが良く合っていて思わず叫んでしまった。美味しいぞー!ソース……村に戻る時にお土産にしよう。きっと皆んな喜んでくれるね!
ゴロンとしようとしたら『失礼します』って、アオがチカラを使って水を出した。水は触っても濡れなくて、乗ると浮いた様な不思議な感じがした。スゴイ……楽だ……。いつも木の板に布を敷いた所でゴロンだったからなぁ。あまり気にはならなかったけど。
「お休みになって頂いても大丈夫ですよ」アオがそういうと、お腹が一杯なのも手伝ってか眠くなってきた。でも……ちゃんと言っておかないと……。
アオ、『オッフ……はい』美味しいご飯を食べさせてくれて、ありがとう。『……勿体無い御言葉……』あと、もう一つ伝えておかなきゃならない事があるんだ……。
「……何でしょうか?とても大切なことなのですか?」うん、アオにとって今後の人生を左右するかもしれない……。
「人生を……それは、一体……?」
アオ、笑顔が不細工過ぎるよ。練習した方がイイよ。モテないから。おやすみ。……くー、くー……。
「……うわあぁぁ、ううぅぅぅ……知らなかったぁぁ……。だからモテなかったんだぁ……ううぅぅぅ……。練習しますぅ……あ、有難う御座いますぅ……ああぁぁぁ……」