私のわたし 3-2
村が見えて来た。村の皆んなには、暫く会えなくなっちゃうのかな?うーん……。
五年前、私は村の近くにポツンと座っていた。その前に何をしていたかは全く思い出せずに自分の〈ミスズ〉と、いう名前だけしか分からなかった。
私を見つけてくれたオバちゃんが『狼が出るから危ないよ!』って、家に連れて行ってくれた。その時は狼の群れに家畜を襲われることが多くて、村の皆んなが困っていたなぁ。
ご飯をご馳走になった。他の物を食べたことは覚えて無いけど、美味しく感じた。何も返さないのは悪いなぁ……と、思って狼の群れを狩りに行った。チカラの使い方は覚えていたみたいで、問題なく狩りが出来た。
沢山の獲物を抱えて村に戻ったらビックリされたっけなぁ。村にはチカラを使える人が居ないから助かるって、またご飯をご馳走してくれた。それからは村のお手伝いをしながら生活をする様になって……。大きな荷物を運んだり、熊をやっつけたり、皆んなに頼りにされると居場所が出来たみたいで居心地が良くなった。今でも三日に一度は顔を見せてるもんな……やっぱり寂しくなっちゃうな。
おっ、第一村人はオバちゃんかー。オバちゃんに話し掛けると『アンタ!大丈夫かい⁈どっか悪いのかい⁈』って、いきなり心配された。
「だって、肌は眩しい位に真っ白くなっちゃうし、髪の毛なんか真っ赤っかだよ⁈あんなに綺麗な黒髪だったのに……帰ってきた連中からは意識が無くて型男に抱っこされてたって……って、後ろのアンタかい⁉︎この娘、大丈夫かい⁉︎」スゴイ心配そうにしてるから石ころを拾って遠くを飛んでいる鳥に投げて見せた。アオに拾って来て貰った鳥をオバちゃんに渡すと『うん、いつも通りぶっ飛んでるね!』って、笑顔を見せてくれた。
「いやー、アンタでも調子が悪くなる事があるんだねぇ。熊も一人で狩るアンタがねぇ。明日は雨が降るだろうから畑は心配ないね!かっかっか!」うん、私も死ぬのは『わー!わー!』アオが慌てた様に声を出す。そっか、言わない方がイイかもね。アオ『オッフ』
オバちゃんに京に行くことを伝えたら村の皆んなに声を掛けてくれた。村の皆んなは集まって来ると口々に私の心配をしてくれた。ナンダッケや顔の腫れたユン兄ちゃんもいる。ユン兄ちゃんに声を掛けると『らいろーぶだほ』とのこと。こっちの方が心配だ。
皆んなで見送ってくれた。お世話になった御礼に山で採れた物を渡したら、皆んな喜んでくれた。『また戻っておいで』って、村長が泣きながら言ってくれた。
胸がホカホカする。『うああぁぁ!わあぁぁ……』何故か後ろでアオが号泣している。
「私、こういうのが苦手で……」って、ずっと号泣してたから村の皆んなが引いちゃった。アオ『ばい』怖いよ『ずびばぜん……』
村の皆んなから暖かい気持ちを貰えた……。やっぱりイイな!また戻って来るね!皆んなと約束をすると京を目指して出発した。
……早く泣き止みなよ。『ばい……ずびばぜん……』