私のわたし 2-2
笑顔不細工の名前は〈アオ〉と言うらしい。
「アオと呼んで頂けたらと思います」そっか、宜しくね、アオ『オッフ』……気持ち悪いよ。
「す、すみません!余りにも嬉しくて、つい声が漏れてしまいまして!気を付けます!」……うん、気を付けた方がイイよ、アオ『オッフ』……『も、申し訳ありません!』
アオは鳳凰教という教会の〈青の教皇〉だそうだ。……何それ?
「鳳凰教は京や街に拠点を置き、民を助け導く為の組織になります。青の教皇は教会のまとめ役として東の街での務めを主としております。そして、貴方様は、」うん、何をしていたの?
「大陸の中心、京にて〈朱の教皇〉……法王として私達を導いて下さっていらっしゃいました」……えーと、それ、スゴイ面倒臭そうだね!
私は五年前に村で拾われた。それより前の記憶が無い。アオは私が居なくなってから、ずっと探してくれていたそうだ。沢山いる信徒の中で一番慕っていたんです!と、力説してきた。が全く覚えて無い。
「貴方様にプレゼントを貰った時には感動して涙が止まらず……」全く覚えて無い……なのに自然と涙が溢れてきた。
楽しい気持ち、嬉しい気持ち、悲しい気持ち、寂しい気持ち……色々混ざった想いが胸を『うわあああぁぁー!ああぁぁ……』ビックリしたー!思い出していたら感情を抑えられず……って、涙をダーダー流し始めた。アオ『ヴォッフ』怖いよ『ずびばぜん……』
アオが号泣し出したら気持ちが冷めた。私の涙も引いてしまった。うーん、よし!帰って貰おう『お、お待ち下さい!』私の方はもうイイんだけど。なんだろ?
「京にはいつ戻られますか?」えっ?
「御見受けしたところ、貴方様は記憶を無くしているご様子……京で生活する事で記憶が蘇るかもしれません。いや!絶対に蘇ります!そうと決まったら『決まってないよ』早速準備をして『聞いて無いね』何故でしょうか?」私が聞きたい!
私は今の生活が気に入ってるんだ……。村の皆んなのお手伝いをして、ご飯を食べて、好きな所に行って……自由に生活してる。私の事を気に掛けてくれる人もいるし、とっても居心地がイイんだ……。私は〈わたし〉の事を知りたいけど……怖い。行きたくないんだ……分かるかな?アオ『オッフ』……『申し訳ありません……』
「……御気持ちは分かりますが、信徒達や他の教皇も貴方様が戻られるのを心から望んでいます」うん、そうかもしれない。けど……。
「鳳凰様の御加護を分け与える事が出来るのは貴方様だけなのです……」私は……知りたい。でも、今の生活も捨てたく無いんだ……ゴメンね、アオ。
「では、」アオと言われてニヤけそうになるのを抑えながら、
「お好きな時にここを訪れるのはどうでしょうか?法王様のお務めは多忙を極めます。清浄な御心を保つ為にも地方をまわることは大切な事かと思います」
……そうか。帰ってこれない訳じゃ無いんだもんね。
アオからの提案に、私への配慮を感じる。じゃあ、行ってみようかな……?また戻っ『では、すぐに準備を致します!』……最後まで言って無いのに……。失敗したかな……?
アオは一枚の布を取り出すと荷物をまとめ始めた。元々荷物は少なかったから、あっ!っと、言う間に終わっちゃった。ん?これも入れといてよ『はい、承知しました。これは?』下着だよ『ぶあはぁ!』ゴメンね、汚いのも一緒にさせて『いえいえ!何も問題はありません!』……鼻血が出てるのは問題じゃ無いのかな?
まだ心が騒ついている。村の皆んなはどう思うかな?困ったりしないかな?オバちゃんは心配しないかな……?
「……では、お世話になった方々にお会いになってから向かいましょう」……私の事を良く見てくれている。……よし!とりあえず行こう!嫌だったら帰って来よう!それでイイや!じゃあ行こうか!
って、そう言えば聞き忘れていたことがあるんだけど……イイ?
「何でもお聞きになって頂いて構いません!」ヘタクソな笑顔で答えてくれた。
鳳凰様って、何なの?美味しく無いって言ってたけど食べれはする?
「鳳凰様は貴方様に無限のチカラを賜わすお方になります。貴方様の半身とも言えるかと」……ムゲンノチカラ?ハンシン?
「今は貴方様の治癒の為に御力を使い果たした為に眠っておられる様です。近いうちに御力も戻り、お話も出来る様になるかと思われます」そっか。色々聞きたい事もあるし楽しみにしてるね。……でもさ、何処にいるの?鳳凰様は何処にも居ないみたいだけど……?
「それは……貴方の御心です!」……そっか。