雪ノ花
短編の童話です。
ちょっとした少ない時間にささっと読みきれるくらいです。
お子さんも読むことができるよう、多少難しい漢字を省いております。
もし読みにくいのでありましたらすみません。
童話なので、細かいところに矛盾や不審な点がありましたら目をつむっていただけると嬉しいです。
お楽しみいただけたら幸いです。
1年のほとんどが雪におおわれた森に、雪の妖精のお母さんとその子どもが住んでいました。
2人は1年の1番寒いときに開かれる雪まつりの、会場である広場に来ていました。
子どもが言いました。
「お母さん、あの広場の真ん中に咲いている大きなお花はなあに?」
「あれはね、雪ノ花というのよ。または[7日目の奇跡]というの。7日後にまたここに来ましょ。そしたらこの花に奇跡が起こるところが見れるわ。」
そう言ってほほえむお母さんを見て、子どもは「うん!」とうなずきました。
「楽しみだなあ!どんな奇跡が起こるんだろう!!」
「そうだ、今日は寝る前に一つお話をしてあげましょう。」
その夜、お母さんは子どもをベッドに寝かせてあるお話をしました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
むかしむかし、おまつりの時は広場に氷の塔をたてていました。
「今年は誰に氷の塔をたててもらおうか。」
妖精たちの前でリーダーがこう問いかけました。
すると、2人の妖精が手をあげました。
1人は雪の妖精ユルバ。もう1人は花の妖精ネネ。
リーダーは少し考えて、氷の塔づくりを2人にまかせることにしました。
「一緒に頑張ろうね!」とネネ。
ユルバは知らんぷりして、氷の塔を1人で作りはじめました。
それでもネネはユルバに声をかけ続けました。
「何かほしいものはある?」
「何か手伝うことはある?」
あるときネネは大きな氷をかかえてユルバのもとへきました。
「氷の塔の材料を持ってきたよ!」
ユルバは冷たくかえします。
「そんなもの、いらないわよ。だって私は雪の妖精だもの。氷くらい、自分でつくれてしまうわ。あんたみたいにそこらへんで氷をけずって来なくてもいいのよ。」
ネネは少ししょんぼりしました。
ユルバはさくさくと氷の塔づくりを進め、もう完成まじかにせまっていました。
ネネはまだあきらめずにユルバに話しかけていました。
「ユルバ!私ね、きのうおばあちゃんから聞いたのだけれど、この森には伝説の花があるんだって![雪ノ花]って言うのよ。この塔にかざるときっとステキだろうなあ!」
「そんな花、ないわよ。」
ユルバが口を開きます。
「伝説なんでしょ?そんな花、ないわよ。だいたい、あんたは花の妖精でしょ?氷の塔づくりは雪の妖精がやることなのよ!」
「雪の妖精のやることだなんて、決まってないわ!!だからリーダーは私にもまかせたのよ!」
「でも花の妖精には不向きよ!もう塔づくりは私にまかせて!」
ユルバはネネを怒って突き飛ばしました。
ネネはバランスをくずしました。あわててユルバのそでを引っぱって、2人は森の中をころがりました。
やがて谷へ真っ逆さまに落ちてしまいました。
2人が目を開けると、あたり一面に白い花が咲いていました。
ユリのような形の花で、花びらの先はだんだん青くなっています。
空から谷底へさしてくるかすかなおひさまの光を浴びて、キラキラ輝いていました。
2人ともその花の美しさにほうけて、けんかのことを忘れていました。
ネネは飛び上がりました。
「これ!これだよ雪ノ花!」
「わあ、すごくキレイね。ねえ、ネネ。この花、塔のてっぺんに咲かせられる?」
「もちろんだよ!」
ネネは雪ノ花の根元につもっている雪ごと花をすくいあげました。
それから、今度こそ一緒に氷の塔づくりです。
ユルバが氷の塔の仕上げをして、ネネは塔のてっぺんにさっきすくった花を置きました。
それからネネが高く手をあげると、雪ノ花は大きく大きく成長して、ネネの背たけと同じくらいになりました。
おまつりの日、妖精たちは新しい氷の塔をたいへん喜びました。
「ネネ、無視したり、 ひどいことを言ってごめんね。雪ノ花、ほんとにキレイね!」
「私こそごめんね、ユルバ。谷に落っこちちゃったとき、花がクッションになっていなかったら危うくユルバにけがをさせるところだったよ。」
2人は仲直りして、友達になりました。
そして7日後に、ネネとユルバは奇跡を見ました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
雪の妖精のお母さんと子どもは、7日後にまた広場へやって来ました。
そこには前にみた花と、その根元から小さな新しい花が咲いていました。
2つの花はハート型のアーチをつくっていました。
お母さんが話しはじめました。
「この花はね、7日に一度新しい花が咲くの。花から落ちる雪が根元に降りつもって、新しい花のえいようになるの。古い花が枯れると、新しい花がすぐに咲くのよ。だから雪ノ花は1年中咲いているのよ。でも、こうやってハート型のアーチになるのは1年で1番寒いときだけ。」
「すごい!とてもキレイだね!雪ノ花!!」
子どもは目を輝かせました。
「はじめてここで雪ノ花が咲いてから、私たち森の妖精は何年も何十年も何百年も、この花を守り続けているのよ。」
ひととおり話し終わると、お母さんは雪ノ花に近づいて、そっと触れました。
「なんてキレイな花なんだろうね。」
いかがでしたでしょうか?
雪ノ花は完全にオリジナルの設定です。
古い花と新しい花でハート型になるので、森では友情や愛のシンボルとなっております。
ちなみに、この物語の中では妖精の寿命はとても長く、何百年も生きます。
ネネとユルバしか知らないはずのストーリーをなぜ雪の妖精のお母さんは知っていたのでしょうか。