邂逅
date/XX/XX/サルレーン帝国暦280年
place-????
「こ…こ……は?」
気がついた時、あたしは泥だらけだった。
周りは木ばかり。つまり、森の中だと思う。
何がどうしてここにいるのかわからない。そう、確かあたしは家から飛び出して兵隊を見て…それで…お父さんが…お父さんが死んだ。それであたしは兵隊を…殺した?
あたしの体を思い出すと同時に全部を吐き出した。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
…どうやらそのまま意識を失ってたみたい。目を覚ませば相変わらず森の中だった。
あたりは少しうす暗くなっていて、ずいぶんと時間がたったのだと思う。ずっとここにいてもしょうがない。村に帰ろう。そう考えて立ち上がろうとした。
「痛った…」
あたしの体にはいたるところに擦り傷や軽い切り傷があったし、いろんなとこがぶつけたような痛みがあった。
全身の痛みを我慢して歩き始めようとした時、どっちに向かえばいいかわからないことに気づいた。当然だ。自分がどこにいるかわからないのだから。
あれから闇雲に歩くしかなかった。のども渇いた。お腹もすいた。でも、水もなければ食べれそうなものもない。仕方なく歩き続けるしかなかった。
どうやら進み続けた方向を間違っていてみたい。森はどんどん深くなっていった。途中で来た道を戻って反対に行こうとしても、気づけばどんどん深いほうへと進んでいたらしい。
どれくらい歩いただろうか。すっかり暗くなって足元見えない。正直もう限界だ。あたしも死んじゃうんだ…そう思った。
いよいよ足が痛くて動けなくなって、近くに大きな木を見つけそこで休憩しようと決める。涙が止まらなかった。どうしていいかわからなかった。ただひたすら泣くことしかできなかった。
大きな木にたどり着く。ちょっと顔を出しているこれまた大きな根っこをみつけたから、そこに座ろう。根の手前部分の地面に穴が開いてることも気づかず、無防備に近づき、見事に穴へと落下した。
「なに…これ?」
あたしは落下時の痛みもそれまでの痛みも忘れ、その幻想的な光景に目を奪われた。
落ちた先にあったのは祭壇のような場所。真ん中になにやら台座のようなものがあって、なにやら光ってるものが4つ、その台座のようなものを囲んで浮かんでいる。不思議とその光を暖かく感じ、また涙が止まらなくなった。
ひとしきり泣いて落ち着いたあたしは、どうにも真ん中にあるものが気になった。
よろよろと立ち上がって中央へと進んでいく。その台座の上には一冊の本があった。
自慢じゃないがあたしは読みも書きもできない。だから本来ならこの本がどんな本なのかわかるわけがない。
でも何故かその表紙に書いてある意味をあたしは理解することができた。
「わ…が…しょうがいを…ここ…にしるす?」