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『 この書を手に取ったものが最初に開いたとき、このページかあるいは同じ意図をもったページを開くことを期待して。
この書は諸君等の望む叡智を授けてくれることだろう。しかし、決して希望の書などではない。この書によって生涯を歪め、道を定めるを得ず、自ら破滅へと向かった者達の悲嘆である。
願わくは、諸君らがこの書を使うにしてもただの知識として使えることを。決して、我らのようにならぬことを。
前置きが長くなったが、これより我が生涯をここに綴っていこう。
我が名はフォルトゥナ。この書によって生まれたある種の化け物だと思ってほしい。
私がこの書に出会ったのはサルレーン帝国暦280年、10歳の時だ。当時の私と言えば、いもくさい農民の少女であり、また魔術の魔の字も理解していなかった。ただ一日を懸命に生きることしかできない、そんな少女であった。
おそらく諸君らもそうであろうが、始めてこの書を手にとった時はまだ、日記かなにかだとしか思っていなかった。』