第一の攻略者、アルフォードの回想
本日2本目。今回は攻略者アルフォード視点でクラリーチェとの出会いから恋の自覚までを綴っていきます。
俺がクラリーチェに出会ったのは偶然以外の何者でもない。あの日は授業をさぼって外で寝ていたらいつの間にか昼時になっていた。まあ腹も減ったことだしアリッサを誘ってカフェテラスにでも行こうと腰を上げて歩き出したんだ。そこで出会ったのがクラリーチェだった。木の根元に座る彼女は葉の割れ目から射し込む陽の光を浴びて金色の髪をきらきら煌めかせていた。その姿があまりにも幻想的で思わず見とれてしまった。
「・・・・」
「・・・・・・」
暫し見つめ合った俺達。それを遮ったのは・・・俺の腹の虫だった。物凄く恥ずかしかったが、彼女は微笑んで膝に乗せていた籠をゆっくり差し出してきたのだ。
「良かったら食べてください」
「・・・いいのか?」
初対面の、しかもいきなり茂みから現れた男に不信感も感じずに微笑む彼女を少し変わってるなと思った。でも空腹には勝てずにサンドウィッチを一切れ摘まみ口に含んだ。
「旨いよ」
お世辞ではなく本当にそう思った。素直にそう言えば彼女は嬉しそうに笑った。聞けばこれは彼女が作ったものらしい。名前を聞けば侯爵家の令嬢だと言うじゃないか。そんなお嬢様がこんなに旨いものを作れることに驚いた。それから彼女と数度一緒に昼を一緒にした。あの日は気づけばほとんどのサンドウィッチを食べてしまい悪いことをしたなと思ったが、次の時には得意気に量を増やして待っていたことに、俺は可笑しくなって笑ってしまった。
彼女といるのはなんだか落ち着く。話しもするけど、たまに起こる沈黙も心地好く苦にならなかった。アリッサといるときは確かに楽しいし満足していたはずなんだが、こんな風に穏やかでいることはまったくなかった。寧ろ・・・俺以外とも親しげに話すアリッサに不信感さえ湧いたこともある。それでもアリッサと一緒にいるのは他のやつに取られるのが嫌だからだ。俺は、本当にアリッサが好きなんだろうか・・・
その疑問が解けるのに、時間はかからなかった。
ある曇り空の昼時、今日はクラリーチェは外に出ないだろうと思いアリッサ達とカフェテラスへ赴いた。そこには彼女の友人だろう女生徒と楽しそうに笑っているクラリーチェがいた。そんな彼女を見て俺まで嬉しくなった。しかしそれはすぐに変わった。アリッサの暴言によって・・・
アリッサはクラリーチェの横に座っていたやたらと綺麗な男にすり寄って媚を売っていた。それはもう何度も見た光景だ。俺はまたかと思いながら傍観者に徹していると、アリッサはクラリーチェが作った昼飯を鼻で笑い彼女の行動を馬鹿にしたのだ。それを聞いて俺は思った。なんで俺はこんなやつを気に入ったのだろうと・・・俺達の前では常に自分を可愛く見せ、実際は他人を簡単に傷つける性悪だったんだと気づかされた。
前々から離れつつあった心はこの時を境に完全にアリッサから離れた。
その日から俺はアリッサとは関わらないようにしている。たまに現れてはすり寄るアリッサを撒いて俺はクラリーチェが待つあの場所へ向かう。
「あ、アルフォードさんこんにちは」
「ああ、今日も食いに来た」
クラリーチェの横にどかっと座り込むと、彼女はクスリと笑って旨そうな昼飯を差し出してくれる。
春の陽だまりと同じ、暖かい心と笑顔でいつも迎えてくれるクラリーチェとずっとこうしていたいと思うのは、きっと彼女に惹かれているからだろう。
もし彼女が俺を好きになってくれるならどんなに幸せだろうか。彼女の横顔を眺めながら、俺はどうやったら彼女の心を手に入れられるかをずっと考えていた。
しかしこの時の俺は、彼女の弟が邪魔をしてくるなんて、男として彼女を愛しているなんて知りもしなかった。
アルフォードの中でクラリーチェへの好感度がぐーんと上がってアリッサの好感度は底辺に落ちちゃいました。これからどんどん皆が離れていきますよアリッサさん。