「2」が家を訪ねてきたときの話
これは、僕が大学生だった頃の話だ。
その日も友人たちが家に集まり、男だけで鍋を囲んでいた。
『数字の中で付き合うとしたらどの数字がタイプ?』
またいつものように、くだらない話で盛り上がっていた。
『う~ん、実際の写真とかがないとなぁ』
仕方ないので僕は雑誌を持ってきて、いくつかの「数字」のグラビア写真を開いた。
『じゃあこの中でタイプの数字を「いっせいの」で指差そう』
すると、ワタナベが「2」の写真を、、僕とカトウは「7」を指していた。
『「2」だけはないわ~』と僕が笑いながら言うと、
ワタナベはその理由を求めた。
『正直、下に傍線がある数字は好きじゃないし、そもそも偶数じゃん』
『馬鹿、下の傍線がたまらないんだよ』
『でも偶数だろ』
カトウもワタナベがまさか「偶数好き」だとは思わなかったと笑っていた。
次の日の朝
一度起きたのだが、大学も休みであったため、いつものように昼過ぎまで寝てしまおうかと考えていた。
『ピーンポーン』
『こんな時間に誰だ?』と思いながらドアを開けると
そこには「2」が立っていた。
『あ、あ、どうも』
僕は少し動揺していた。
『あの、昨日の話の件でお伺いしたのですが』
『昨日の話と申しますと?』
『「2」だけはないわ~の件です』
『あぁ、あれはなんというか』
やばい、なんでバレたんだろう。
『説明をしていただきたいのですが』
ここで「下に傍線があること」や「偶数である」ことを理由にするのはあまりに直接的すぎて、失礼にあたると思い
僕は『2はキャッチャーを連想するからです。どうしてもキャッチャー防具を着てるイメージがあるので』
そう答えると彼女はポーチからICレコーダーを取り出した。
『正直、下に傍線がある数字は好きじゃないし、そもそも偶数じゃん』
何度か再生した後に彼女は
『然るべき処置をとらせていただきます』
と言い、去っていった。
「追記」
次の日僕の電話番号、アパートの部屋番号など、僕に関係するすべて数字から「2」が消えさってしまっていた。