携帯端末便利〜ユースフルハートフル〜
"範囲回復魔法:メガシャキン"
白いスマホの画面内にはドットで作られた文字でそう書いてある。
死力を尽くしてポケットから出したんだ、試さずしていられるか。親指をもってしてスマホの画面をタッチしてやった。
キラキラとしたものが風にも乗らずまるでそう設定されているからそう動く、といった具合で予定調和的に僕らの周りをぐるりと回る。
あっという間に衣服も傷も、髪も元通り。
腕がいけない方向に曲がっていた彼女の腕も、元通り。
なにもかもがなにもなかったかのようになり、さっきまで物みたいだった彼女も腕が治ってしばらくしたら何食わぬ顔で起き上がり服の土を叩いていた。
いや、それもキラキラが回るにつれて勝手に落ちていった。
「お分かり?」
復活した彼女の発言第一号はこれだ。なにをどうお分かれるのか分からないけれど僕は優しくてイケメンで聡明なので笑顔で答えてやった。
「森を抜けるのは無しにしよう。」
我ながら聡明な判断だ。賢明で聡明で自分に惚れてしまいそう。自愛しまくりそう。孔明もびっくりの妙案だ。
しめしめと彼女の顔を盗み見たけれども苦虫を歯ですり潰した時のような顔を見る限りそうでもないらしい。
ついでに頬に一発良いのをもらったので結構妙案ではないらしい。僕はすかさずメガシャキンを使った。
その時に違和感を感じる。メガシャキンを使う画面の端にバツボタンがあるんだ。ウィンドウを閉じるあれだ。僕はもちろん押してみた。人生は挑戦だ。
すると、火属性から雷属性までの呪文らしき名前のものがある。僕はすかさず彼女を見る。
「お分かり?」
僕らは勝機を得た。