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奇を衒う青〜ピエロブルー〜




 まだ初期に登場人物する雑魚モンスターが彼女だったほうがマシだったかもしれない。いや、見た目の点ではこいつの方が雑魚っぽくて適役だろう。イメージ通りのスライムだ。予想通りの見慣れたティアドロップ型で本当なら予想通りだから安心出来るはずなんだけれども、その安心は、僕の予想をたった一つ裏切るだけで跡形も無く消え去っていた。凡人の僕でも分かるほどに殺意がある。なんで分からなかったんだろう。ちょっと近付いただけで自分が死ぬほどの打撃を加えられようが相手を殴ることをやめない生物が殺意を持っていないはずが無いのに、液晶越しで見ている時はそんなこと考えもつかなかった。狂気を帯びた四白眼から目が離せない。地面を透過して少しミントブルーに近くなった身体が光を浴びてキラキラと光り綺麗だ、なんて言っている暇がない。というかそのキラキラ、強化呪文を詠唱した時に起こるキラキラなんかじゃないか。そうか、もう始まっているんだ。弾力のある身体が重力に負けるように少し横に潰れる、飛び掛かるつもりなんだ。二回行動。殺される。逃げたい。黒目を滑らせて彼女に向けアイコンタクトでコミュニケーションを取り逃亡しようとする。駄目だ、彼女は完璧に青いその雑魚に目を奪われている。こちらを向け。タイミングをはかって逃げるんだ。あまりに強く思ったので僕の意思が通じたんだろうか、ゆっくりと彼女の顔がこちらに向けられる。そうだ、その調子。そのままアイコンタクトを取って、逃亡の……。その時僕は察した。察したところで手遅れだった。視界の端で青が揺れた。



 いや、驚いた。その一言に尽きる。ゴキブリ並の反射神経というか、人間の可能性に万歳三唱というか。17年間眠っていた自分の才能に親しみを込めて「このこの」と肘で小突いてやりたい気持ちだ。端的に言えば雑魚モンスターを倒した。詳しく言えば彼女が小首を傾げた時に握っていた拳を飛び掛かってきたスライムの顔面に埋めてやったんだ。反射的な行動だったけれど恐らく僕にはその道の才能があるんだろう。現実世界に戻ったらボクシング部に入ろうと思う。誰にも負けないだろう。三階級制覇も夢じゃない。ライトフライ級でありながらヘビー級ボクサーと戦って判定勝ちくらい出来るだろう。夢が広がる。広がった夢のせいで高揚とした気持ちが抑えられず、どんなジャブでも捌き切れる効率的で素晴らしいステップを踏みながら、何度も虚空にジャブを食らわしてやった。ジャブだけだと思ったら大間違いだ、フックだって何度か虚空に食らわせてやった、右ストレートもだ。虚空に身体があったらもうぼこぼこだろうな。ふんふん。


「喜びの舞だなんて、文明人にあるまじき行為ですわ」


 固まっていた彼女がようやく言った言葉がこれだった。今度は僕が固まった。これは喜びの舞ではなくてシャドーボクシングという高尚なもので、男のロマンの詰まった素晴らしい物なんだと説明しているうちに高揚も失せてきた。しかしどうやら彼女はそれを始めからきちんと理解しているらしい。それを知った辺りで僕は彼女を名誉毀損で訴えたくなった。将来有望なボクサーのシャドーボクシングを不恰好というのは罪が重いぞ。





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