表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

写真

作者: ト部泰史

 友人五人と旅行に行った時の写真を見ていると、ある事に気づいた。ない。何回見返してもそうだ。写っているはずのものが写っていない。

 次の日、写真を撮った友人に、そのことについて話してみた。

 

 「なあ、この前の旅行の写真なんだけど……」

 「どうした? そんな暗い顔して。写真に幽霊でも写ってたのか?」

 悠太は冗談めかして言う。だが俺はそんなことに気を向ける気にはなれなかった。

 「いや、本来なら写っているはずのものが写ってなかったんだ」

 「……どういうことだよ?」

 「この写真全部をよーく見てみろ。そうすれば分かるはずだ」

 「おっ、脅かすなよ。何が写ってないってんだ」

 

 悠太は恐る恐る写真を確認していく。一枚一枚丹念に見ていったが全部を見返しても何かに気づいた様子はない。

 「……何が写ってないんだ?」

 「本当に分からないのか?」

 「ああ。それで一体何が」

 「俺」

 「え?」

 「俺がどこにも写ってないんだ」

 悠太は改めて写真を見てようやく気づいたようだ。

 「……ほんとだ。お前がどこにも写ってない」

 「これ、どういうことだ?」

 

 悠太はしまったという顔をし、ためらいがちに口を開く。

 「……ごめん、写してなかった」

 「……やっぱり?」

 「うん。実は俺一緒に行った洋子のことが気になっててな。それで無意識にお前よりも洋子を撮っていたみたいだ」

 確かに写真を見返すと洋子を中心に移っている。それにしても俺を一枚も写さないとは。悠太が無意識にやったというのが分かるだけに悲しくなってくる。

 「そんなに俺って存在感ないのかな……」

 「ごめんごめん、悪かったって」

 「だいたいこれとか見てみろよ。俺以外の全員が写ってる」

 俺が持った写真には俺以外の五人が写っていた。

 

 「……全員? 全員つったか?」

 急に悠太の顔が強張る。

 「どうした?」

 「ここにある写真は全部俺が撮ったんだよ」

 「カメラ持ってんのお前だけだったからな」

 「俺は基本的に自分が写真に写るのは好きじゃないから、セルフタイマーは使ったことがない」

 「そういえばそうだな」

 「それで、なんで俺がこの写真に写ってるんだ?」

 写真には洋子に寄り添うようにして悠太が写っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] オチが面白いですね。でも、「悠太」が写真に存在する理由があってもよかったかも。例えば、「洋子」のすぐ隣に写っていたとか。想いが生霊になって写ってしまった、みたいな。 他にも変化球で、二人で…
2012/09/23 20:27 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ