題材・夢と空と少年A ―現実のような夢の中で少年が見る夢のような現実―
空を見上げると太陽が見えた。
そのあまりの眩しさに思わず手をかざすと手のひらに何かが触れた。
今まで感じことが無いような感触に思わず手を引っ込めるとそこには何も無かった。
今のは何だろう?
もう一度、今度はゆっくりと手を伸ばしてみるとやはり指先に何かが触れた。
今度はそれをゆっくりと押し込んでみると、ある程度押し込んだところで急にビリッ、という音がして触れている感覚が無くなってしまった。
慌てて手をどけると空が破れていた。
ッ!それじゃあさっきまで僕が触れていたのは……空!?
「うわぁッ!」
そんな情けない悲鳴とともに僕は目を覚ました。
「……はぁ、夢か……」
ふと夢の中で空に触れていたことを思い出してベットに仰向けで寝たままの姿勢で手を上に向かって伸ばしてみる。
――当然僕の手は空を切るばかりで何かに触れた感覚は無い。
「ッ…ふぅ……」
自分の行動が馬鹿らしくなって手をおろす。
それにしても僕はなんて馬鹿らしい夢を見ていたんだろう。
あんなに高い空はおろか、こんなに近くに見える天井すら手が届かないと言うのに。
「よぉ、おまえがこんなに朝早いなんてめずらしいな。なんかあったのか?」
「いや、ただいつもより早く目が覚めて特にやることもないから学校に来ただけだよ。それとおはよう」
他より少しだけ親しい友人が話しかけてきたので少しの会話と挨拶をする。
僕らはそんな何の変哲も無いような日常を繰り返す。
ただ目覚め、食べ、学び、遊び、眠る。
そんな日常をつまらない、どこか空虚だ、と感じる人はそれこそ星の数ほどいるだろう。
こう言っている僕自身もその一人だ。
いつもそんな風に思っているから今日の朝見たような馬鹿げた夢を見るのだろうか?
よく考えてみるとあんな夢を過去にもいくつか見たことがあるような気がする。
そんないつもの夢ならぼんやり過ごしているうちにいつか忘れてしまっているだろう。
でも今回のそんな今までの夢とはどこか違っていつまでたっても頭の中から出て行かない。
なぜだろう?
ここは望めば何でもできるような夢の中とは違って空に触れることなんてできない。
なのになんでこうも強く空に触れたいと思ってしまうのだろう?
学校からの帰り道、綺麗な夕焼けが広大な空を真っ赤に染め上げる。
その空に魅入られたかのように僕はいつの間にか手を伸ばしていた。
夢の中ならともかく、現実で空に触れることができないくらい僕にはわかってる。
それでもこれで空に触れられないことがわかれば諦めがつくだろう、と思わず伸ばしてしまった手をそのまま空に向けて動かした。
――空には触れられない。これはどんな人でも知っている常識だ。だからこんな風に手を伸ばしたところで僕の手は空に触れることはかなわずに空しさだけを掴み取った手をおろすことになる、そのはずだった――
それなのに。
それなのに僕の手には何かが触れている。感じたことのない、いや、昨日までは感じたことがなかった感触。
その感触で僕は今自分の手が触れているものの正体がわかってしまった。
そして唐突に感じた僕の中に沸き起こる破壊衝動にまかせて空を思いっきり引き裂いた。
すると今まで僕の視界いっぱいに広がっていた夕焼け空が霧散してしまった。
直後、僕は激しい後悔に襲われた。
なぜ、あれほど美しかった空を一瞬沸き起こった気持ちなんかにまかせて壊してしまったんだろう?
あの美しい空はもう二度と元に戻ることはない。
「……はぁ、夢か……」
どうやら夢の中で夢を見るというとんでもなくややこしい体験をしてしまったようだ。
少し気になって窓の外を見るとそこにはしっかりと空があった。
……でもなぜ二つの夢は似たような内容だったのだろうか?
『もしかすると、ここはまだ夢の中なのかもしれない』
なぜかはわからないけど、そんな考えが僕の頭に浮かんだ。
その真偽を確かめるために僕が空に向かって手を伸ばすと――――
この話は作者が「空に触れられたどうなるんだろう?」なんて考えてしまった結果、できてしまったものです。
作者自身書いていて最後のほうには何が書きたかったのかよくわからなくなっています。
それにしてもこの話のなかで『空』って何回出てきたんでしょうか?