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昭和に逆行した俺、バブル前に仕込んで億万長者になる  作者: 柿の木


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第42話:手を離れたあとに残るもの

昼休みが始まる前、恒一はすでに机の上を整えていた。


基本の三枚。

補助の一枚。


昨日作った配置のまま、手に取りやすい位置に置く。


「……今日はどうなるか」


小さく呟く。


ここまでは、自分の手の届く範囲だった。


渡す。

説明する。

補足する。


だが、昨日の時点で少し変わってきている。


コピーされ始めた。


つまり、自分の手を離れ始めている。


そこがどうなるか。


それを見る。


チャイムが鳴る。


同時に、数人が近づいてくる。


「今日もいい?」


「ああ」


いつも通りのやり取り。


だが、その中に一つ違う流れがあった。


「これさ、もうもらってる」


別の子がそう言う。


手には、自分が作ったものに似た紙。


「どれ?」


受け取る。


見る。


内容は、ほぼ同じ。


だが、少し違う。


言葉が変わっている。

順番も少し違う。


そして――


「……ここ、抜けてるな」


一箇所、重要な部分が消えている。


“最後にもう一回書く”という部分。


それがない。


「これ、誰が作った?」


「え、友達」


「どこ?」


別のクラスの名前が出る。


(やっぱり来たな)


コピーがコピーを生む。


その過程で、情報が変わる。


前世でも何度も見てきた現象だ。


伝言ゲーム。


そして、それは必ずズレる。


「これだと、ちょっと弱いな」


そう言いながら、ペンを取る。


その場で、一行だけ書き足す。


「最後にもう一回同じことを書く」


それだけ。


「これでいい」


「……ああ、なるほど」


相手はすぐに理解した。


「確かに、こっちのほうがいい」


その反応で、確信する。


(ズレる前提で考えるか)


コピーは止められない。

なら、ズレることも前提にする。


そのうえで、どうするか。


「それ、他にも配ってる?」


「うん」


「じゃあ、ここだけ直しといて」


「わかった」


そのやり取りを見ながら、恒一は頭の中で整理していた。


(完全にコントロールは無理だな)


自分の手で全部管理するのは無理。


なら、別のやり方が必要になる。


昼休みの途中、さらに別のパターンが出てきた。


「これ、違うって言われた」


また同じ言葉。


だが、内容は少し違う。


見せてもらう。


今度は、逆に書きすぎている。


説明を足しすぎて、まとまっていない。


「……足しすぎか」


小さく呟く。


削りすぎ。

足しすぎ。


両方が出てきている。


(極端に寄るんだな)


人は、どちらかに寄る。


その間を取るのが一番難しい。


「これ、ここ削っていい」


一箇所だけ指摘する。


全部直さない。


一つだけ。


「ここいらない?」


「うん。そこ削るだけでいい」


相手はその場で消す。


読み返す。


「……あ、まとまった」


「それでいい」


そのやり取りを見ながら、さらに確信する。


(全部直す必要ないな)


一つだけ直せば、全体が整う。


それが一番効率がいい。


昼休みの終わり頃。


紙はほとんどなくなっていた。


だが、それ以上に大きかったのは――


「これ、あいつに聞いたらわかった」


「俺も」


「ここだけ直せばいいんだな」


自分が直接関わっていないところでも、やり取りが発生している。


(回り始めたな)


完全ではない。


だが、流れができている。


自分がいなくても、ある程度は動く。


それが大きい。


放課後、帰り道。


恒一は今日の流れを頭の中で整理していた。


コピーされる。

ズレる。

直される。

また広がる。


その循環が、すでに始まっている。


「……これ、どうする」


小さく呟く。


このままでも回る。

だが、ズレは増える。


なら、何をすればいいか。


「……基準、か」


答えはすぐに出た。


基準となるもの。


“これが正しい”とわかる形。


それを一つ作る。


コピーされても、そこに戻れるようにする。


「……場所、必要だな」


自然にそう考える。


紙だけでは足りない。


どこかに“基準”を置く。


それを見れば、戻せる。


家に帰る。


机に向かい、ノートを開く。


今日のまとめを書く。


・コピーでズレる

・削りすぎと足しすぎが発生

・一箇所の修正で整う


ペンを止める。


そのあと、ゆっくりと書き足す。


「基準を作る」


これが次の一手だ。


紙をもう一度見直す。


基本三枚。

補助一枚。


これをまとめる。


一つの形にする。


だが、重くはしない。


必要なところだけ見ればいい形。


「……一枚にするか?」


考える。


全部を詰め込むと重くなる。

だが、分けすぎると迷う。


その間。


「……見出しだけまとめるか」


そう決める。


詳細は別。

だが、全体の流れだけを一枚にする。


それを“基準”にする。


書き始める。


・最初に一つ決める

・そのことだけ書く

・最後にもう一回書く

・足りなければ一つ足す

・多ければ一つ削る


それだけ。


シンプルな形。


「……これだな」


書き終える。


今までで一番シンプルだ。


だが、これが軸になる。


夜、原稿に向かう。


今日のテーマは決まっている。


“手を離れたあと”


自分が関わらなくても動くもの。


その中でズレるもの。


それをどう扱うか。


書きながら、自然と整理される。


どこで残すか。

どこを削るか。


迷いは少ない。


「……これでいい」


書き終える。


前よりも、少しだけ広い視点になっている。


自分だけではない。

周りも含めた流れ。


封筒に入れる。


今回は迷わない。


外に出る。


ポストの前に立つ。


(これも見られる)


もう当たり前だ。


その前提で動く。


投函する。


音がする。


それだけで十分だ。


家に戻り、布団に入る。


目を閉じると、今日のやり取りが浮かぶ。


コピー。

ズレ。

修正。

広がり。


そのすべてが、繋がっている。


「……面白いな」


そう呟く。


自分の手を離れたものが、動く。


それは怖さもある。

だが、それ以上に可能性がある。


「……次は」


小さく考える。


基準は作った。


なら、その次は――


“場”か。


人が集まり、ズレを直し、共有する場所。


その発想が、自然と浮かんでいた。


目を閉じる。


流れはできた。


次は、それをどこに集めるか。


その段階に、確実に進んでいた。

私の2作目

「神様転生したはずが赤ん坊の自分に転生していた件」

この作品は一言で言うと神様に笑われた男が世界を笑えなくするです。(自分でも導入で笑ってしまいました)

良かったらどうぞよろしくお願いします

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