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第40話:広げるだけでは足りない

朝、教室に入った瞬間、空気の違いに気づいた。


いつもより、視線が集まる。


「来た来た」


「それ持ってる?」


一人ではない。

複数人が同時に声をかけてくる。


(……増えたな)


昨日までとは明らかに違う。


広がり方が一段上がっている。


「ちょっと待て」


鞄を置きながら言う。


一度に渡すには数が足りない。


というより、そもそも想定していない人数だ。


「何枚ある?」


「今日はそんなに持ってきてない」


正直に答える。


すると、周りがざわつく。


「え、足りないの?」


「後でいい?」


その反応を見て、恒一は少しだけ考えた。


(このままだと崩れるな)


広がるのはいい。

だが、制御しないと一気にズレる。


前世でも何度も見てきた。


需要に対して供給が追いつかない状態。


そのまま放置すると、質が落ちる。


「……順番決めるか」


そう呟く。


「え?」


「今日は、昨日使ってないやつ優先で渡す」


その一言で、少し空気が変わる。


不満が出るかと思ったが、意外とすんなり受け入れられた。


「じゃあ俺後でいいや」


「昨日もらったし」


(……通るな)


単純なルールだが、機能する。


公平性があるからだ。


全員に同時には無理。

だから順番をつける。


それだけで崩れにくくなる。


数人に紙を渡す。


残りは「後で」と伝える。


そのやり取りの中で、一つ気づく。


(これ、時間も取られるな)


朝の短い時間で対応するには限界がある。


授業が始まる直前まで対応していたら、本来の時間が削られる。


「……場所も決めるか」


小さく呟く。


次からは、昼休みに限定する。


そうすれば流れは整う。


授業中、ノートの端に書く。


・順番を決める

・時間を決める

・配る数を決める


書きながら思う。


(完全に仕事だな)


やっていることが、前世と変わらない。


違うのは、規模と相手だけだ。


昼休み。


机の周りに人が集まる。


だが、朝とは違い、少し落ち着いている。


「昼にするって言ってたよな」


「ああ」


「順番もあるんだっけ」


「ある」


簡単にルールを説明する。


昨日使ってない人優先。

今日はこの数まで。


それだけ。


誰も文句は言わない。


むしろ、整理されたことで安心しているように見える。


(やっぱり、制御したほうがいいな)


広げるだけではダメだ。


整える必要がある。


一人に紙を渡す。


そのとき、別の子が言った。


「これ、コピーしていい?」


その一言で、恒一の思考が一瞬止まる。


(コピー……)


前世なら、即座に止めていた。


価値の拡散。

コントロール不能。


だが今は違う。


少しだけ考える。


コピーされることで、広がる。

だが、その分ズレも増える。


管理は難しくなる。


「……いいよ」


そう答える。


ただし、続けて言う。


「でも、わからないとこあったら直接聞いて」


それだけ付け加える。


完全に放置しない。


最低限の導線は残す。


「わかった」


相手は頷く。


そのやり取りを見ながら、恒一は考える。


(完全に止めるのは違うな)


広がる力は使う。


だが、最低限のコントロールは残す。


そのバランスだ。


放課後、家に帰る。


机に向かい、今日の流れを整理する。


ノートに書く。


・広がりすぎると崩れる

・ルールで整える

・コピーは許可するが導線を残す


ペンを止める。


そのあと、もう一行書く。


「制限は必要」


それが今日の一番の学びだった。


広げるだけでは続かない。


制限することで、形が保たれる。


「……これ、投稿も同じだな」


自然にそう思う。


なんでもかんでも書けばいいわけではない。


出すものを選ぶ。

タイミングを選ぶ。


それが質を保つ。


原稿用紙を出す。


今日のテーマは決まっている。


“広げるだけでは足りない”


書き始める。


朝の混乱。

昼の整理。

コピーの話。


それらを一つの流れにする。


削りすぎない。

だが、余計な部分は入れない。


「……ここだな」


最後に残す一文を決める。


書き終える。


前よりも、少しだけ構造がはっきりしている。


「……いいな」


そう思えた。


封筒に入れる。


だが、すぐには出さない。


一度だけ、時間を置く。


最近のルールだ。


その一晩でズレが見える。


夜、布団に入る。


目を閉じると、今日の教室の様子が浮かぶ。


人が集まる。

求められる。

そして、制御する。


その流れが、自然にできていた。


「……面白いな」


小さく呟く。


前世では、これを“仕事”としてやっていた。


今は違う。


まだ何も持っていない状態から、少しずつ作っている。


だが、やっていることは同じだ。


価値を作る。

届ける。

整える。


その繰り返し。


「……次はどうするか」


広げるだけでは足りない。


なら、次は“深くする”か。


その考えが、自然と浮かぶ。


目を閉じる。


線は広がり始めた。


次は、それをどこまで伸ばすか。


その段階に、確実に入っていた。

私の2作目

「神様転生したはずが赤ん坊の自分に転生していた件」

この作品は一言で言うと神様に笑われた男が世界を笑えなくするです。(自分でも導入で笑ってしまいました)

良かったらどうぞよろしくお願いします

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