挿話⑭ 価値の匂い
遠藤梁は、机に置かれた原稿を手に取った。
普段はあまり読者投稿に時間を割かない。
だが、何度か名前を聞くと、気になる。
「どれだ」
中村が一枚を差し出す。
遠藤は受け取り、ざっと目を通す。
読み込まない。
流れだけを追う。
それで十分だった。
「……悪くない」
短く言う。
中村は何も言わない。
遠藤は続ける。
「ただの作文じゃないな」
そこがポイントだった。
内容は地味だ。
家庭の話。
日常の観察。
だが、見方が違う。
少しだけ先を見ている。
断言しない。
でもズレていない。
「これ、どこで覚えたんだ?」
独り言のように呟く。
答えはない。
だが、興味は出た。
「継続してるのか?」
「してます」
「ならいい」
遠藤は紙を戻す。
だが、完全に無関心ではなくなっていた。
価値になる可能性。
それを感じたからだ。
「……使い方次第だな」
そう言って席を立つ。
中村はその背中を見ながら思う。
(やっぱり見てるな)
遠藤は数字で判断する人間だ。
だが、数字の前に“匂い”を嗅ぐ。
その嗅覚は鋭い。
だからこそ、今の一言は軽くない。
投稿者の一人。
それが、“使えるかもしれない存在”に変わり始めている。
その境目に、今この原稿がある。
私の2作目
「神様転生したはずが赤ん坊の自分に転生していた件」
この作品は一言で言うと神様に笑われた男が世界を笑えなくするです。(自分でも導入で笑ってしまいました)
良かったらどうぞよろしくお願いします
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