挿話⑬ 見えない成長
締切前の空気は、どこか重い。
全員が時計を意識している。
少しの遅れが、全体に響く。
そんな中でも、読者投稿の処理は止まらない。
中村は再び、例の原稿を見返していた。
一度読んで終わりではない。
二度、三度と読む。
そのたびに、違う部分が見える。
(……やっぱり変わってる)
最初に見た時の印象とは違う。
前は、“面白い子供”だった。
今は違う。
“読ませる書き手”に近づいている。
それも、無理なく。
「誰かに教わってるのか?」
隣の編集者が言う。
中村は少し考える。
「いや……」
否定する。
理由ははっきりしていない。
だが、感覚でわかる。
誰かに教わった文章ではない。
むしろ逆だ。
自分で調整している。
誌面を読んで、修正して、また出してくる。
その積み重ねの形だ。
「……見て覚えてる感じですね」
そう答える。
「そんなことできるか?」
「普通は無理です」
だが、目の前の原稿はそれをやっている。
だから目立つ。
だから残る。
中村はふと、ペンネームを見つめた。
何度も誌面に載った名前。
それでも、まだ小さい。
まだ“何者でもない”。
だが、こういう段階の名前ほど、後で効いてくることがある。
どこで繋がるかはわからない。
だが、繋がる時は一気だ。
「……覚えとこう」
小さく呟く。
意識して覚える。
それだけで、次に見た時の扱いが変わる。
それが編集という仕事だった。
私の2作目
「神様転生したはずが赤ん坊の自分に転生していた件」
この作品は一言で言うと神様に笑われた男が世界を笑えなくするです。(自分でも導入で笑ってしまいました)
良かったらどうぞよろしくお願いします
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