第13話:使わない金にも意味がある
二本目の投稿の返事を待つ間、恒一は初めて得た謝礼を何度も見返していた。
大金ではない。
だが、ただの記念にして終わらせるつもりもなかった。
(使い道を決めるのも、勉強だ)
前世の自分は、金の扱いが下手だった。
稼いでも、気づけば減る。
焦って増やそうとして、さらに減る。
貯めることも使うことも、中途半端だった。
だから今度は違う。
少額のうちから、金の流れに意味を持たせる。
ノートを開く。
ページの上にこう書いた。
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使う金 / 貯める金 / 増やすための金
⸻
「……まずは分けるか」
使う金は最低限。
文房具や切手、本など、投稿や勉強に必要なもの。
貯める金は手をつけない。
種銭の芯にする。
増やすための金は、まだ使い道がない。
だがいずれ必ず必要になる。
その分類を考えているだけで、不思議と落ち着いた。
金額は小さくても、自分の人生を自分で運転している感じがする。
週末、恒一は母に頼んで文房具屋へ連れて行ってもらった。
「ノートが欲しいの?」
「うん。あと封筒と便箋も」
「また投稿するんだ」
「する」
母は少し笑って、必要なものを買ってくれた。
本当は全部自分の謝礼から出してもよかった。
だが、まだ十歳だ。
急に何もかも自分で払おうとすると不自然になる。
(今は急がない)
帰りに本屋へ寄る。
雑誌を立ち読みしながら、読者コーナーを確認する。
どんな文体が多いか。
どういうテーマが採用されやすいか。
投稿欄にも“色”がある。
明るい雑誌には明るい文章。
知的な雑誌には少し引いた視点。
相手に合わせることが大事だ。
「……営業と同じだな」
小さく呟く。
前世では苦手だと思っていた。
だが、好きなものを売る営業は案外嫌いではないのかもしれない。
その夜、父が珍しくビールを飲みながら言った。
「金ってのは、あると安心するが、あるだけじゃ駄目なんだよな」
「どういうこと?」
「使い方で人間が出るってことだ」
何気ない会話だった。
だが恒一は、その言葉をしばらく噛みしめていた。
使い方で人間が出る。
たしかにその通りだ。
(俺は、どう使う)
金に振り回される人間ではなく、金を使って未来を作る人間になる。
そのためにも、今のうちから癖を作っておきたい。
謝礼の一部を、小さな缶に入れる。
押し入れの奥にしまう。
まだ本当に小さな額だ。
笑ってしまうくらい小さい。
だが、この缶の中身は、たぶん前世のどんな給料より価値がある。
今まで読み専だったけどこんなストリートをもっと読みたいと思ったけどないから書いてみました
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