第11話:二本目を通すために
初めての謝礼を手にしてからというもの、恒一の意識ははっきり変わった。
投稿は“当たれば嬉しい趣味”ではない。
やり方次第で、確かに金になる手段だ。
もちろん、今の額では話にならない。
だが大事なのは金額そのものではなく、再現できるかどうかだった。
学校から帰ると、恒一はまず机に向かった。
雑誌の掲載欄を切り抜き、ノートに貼る。
その横に、自分の投稿原稿の下書きを写す。
「どの表現が通ったか」
「どこが編集されていたか」
「コメントがついた理由は何か」
それを一つずつ整理していく。
(偶然で終わらせない)
前世でも、仕事ができる人間はたいてい同じことをしていた。
うまくいった理由を言語化できる人間が、次も勝つ。
逆に「なんとなくうまくいった」で終わると、再現できない。
「恒一、また書いてるの?」
母が覗き込む。
「うん。前のが何で載ったのか、考えてる」
「えらく難しいことしてるのねえ」
母は半分感心し、半分呆れたように笑った。
だが恒一は本気だった。
小さな成功ほど危ない。
気持ちよくなって雑になる。
それが、一番まずい。
今回、通ったのは“視点の新しさ”だろう。
子供の目線で家庭や流行を見る。
しかも少しだけ先を読んでいる。
そこに編集側は面白さを見た。
(なら、次もそこを伸ばす)
ただし、同じ型をそのまま繰り返すだけでは飽きられる。
角度を変える必要があった。
遊び。家計。生活。
次は――人の動きだ。
「最近、商店街の様子が前と少し違うな」
そんな一文から始める構成を思いつく。
店先に並ぶもの。
客の年齢層。
売れ筋の変化。
十歳の子供でも見ていて不自然ではない題材で、少し先を感じさせる。
(いける)
夜、父が帰ってきて、食卓で何気なく言った。
「駅前に新しい店ができるらしい」
「へえ」
「小さな電器屋だとか。ああいうのは増えるかもな」
その一言に、恒一の手が止まる。
電器屋。
家電。
娯楽。
昭和の家庭の中で、これから確実に存在感を増していく分野だ。
(こういう会話も、全部ヒントになる)
未来の記憶だけでなく、今ここで流れている空気も吸い込む。
そうすれば文章の手触りが良くなる。
時代に足をつけたまま、少し先を見る。
その感覚が、ようやく掴めてきた。
「……次は、通す」
小さく呟き、恒一は二本目の原稿に取りかかった。
今まで読み専だったけどこんなストリートをもっと読みたいと思ったけどないから書いてみました
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