挿話② 続けて送ってくる子
「またこの子から来てます」
昼過ぎ、投稿の仕分けをしていた若手編集者が言った。
「どの子だ?」
「前に言った、十歳の」
先輩編集者が顔をしかめ、それからすぐに思い出したように「ああ」と声を漏らす。
差し出された封筒には、以前と似た丁寧な字が並んでいる。
中身を開く。
前より少しこなれている。
言い回しが軽くなり、読ませ方を覚え始めているのがわかった。
ただ賢いだけではない。
“読まれる文章”に寄せてきている。
「……修正してきたな」
「やっぱりそう見えます?」
「前回の弱いところを潰してる」
若手編集者は、感心したように原稿を見た。
十歳の子供が、落選を受けて次でここまで整えてくるものだろうか。
偶然一発当てたのではない。
おそらく、この投稿者は考えて書いている。
そのことが、文章の端々から伝わってくる。
「掲載、いけますかね」
「小さくならいける」
「謝礼はどうします?」
「規定どおりでいい」
先輩編集者はそこで一度考え、言い添えた。
「ただ、手紙は少し柔らかくしておけ。次も来るように」
編集部にとって、投稿欄は誌面の片隅にすぎない。
だが、片隅だからこそ、たまに光る原石が落ちている。
それを見つけるのも、編集の仕事だった。
「名前、覚えました?」
若手が聞く。
「まだ覚えるほどじゃない」
そう言いながら、先輩編集者は封筒の宛名を見た。
高瀬恒一。
数秒後には別の原稿に目を移したが、名前だけは頭のどこかに残った。
ストック20話まであるけど投稿ペースどうしよう
感想や評価をお願いします




