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第91話:広げた後は、勝手には伸びない

いつも通りの朝の空気や畳の匂いに台所の音、味噌汁の湯気と茶碗の触れ合う音、外から聞こえる通学路のざわめきと足音、何も変わらない朝の中で昨日の結果だけがはっきり残っていると整理する、一気にやった分だけ数字は跳ねた、三つの店は同時に変わった、同じ型で同じ順番で同じ理由まで通した、その結果として段が変わった、ここまでは想定通りだが次に来るのは別だと判断する、広げた後は放っておいても伸びるわけではない、むしろ止まる、そしてズレる、その前に手を打つ必要がある。


(ここからは維持だ)


そう決める。


「恒一」


母の声。


「朝からまた電話」


(来るな)


立ち上がる。受話器を取る。


「はい」


「昨日の店、どうだ」


田中の声。


(確認か)


「回ってる」


短く返す。


「でもよ」


一拍。


「ちょっと落ちた」


(来たな)


「どこ」


「昼過ぎ」


「少し遅い」


それだけ。


(維持が崩れた)


「見てない」


短く言う。


「え?」


「放置」


それだけ。


沈黙。


「……確かに」


小さく言う。


「最初だけ見てたな」


(そのままだ)


「毎日やる」


短く言う。


「チェック」


それだけ。


「何を」


(シンプル)


「三つ」


短く言う。


「入口」


「中」


「理由」


それだけ。


「ズレてたら直す」


短く。


「……なるほどな」


「やるか」


(決まった)


「やる」


短く返す。


電話を切る。


「またお店?」


母が聞く。


「ちょっと」


それだけ。


(止まる前に動く)


外に出る。通学路。昨日より会話が少し戻っている。


「それでいい?」


「んー……」


(遅い)


「それでいい」


別の声が被せる。


(修正が入る)


まだ揺れている。


教室に入る。すぐに気づく。


昨日より少し遅い。


決定が。


「恒一」


一人が声をかける。


「なんかさ」


「昨日ほどじゃない」


(来たな)


「どこ」


「途中」


「また迷う」


それだけ。


(理由が弱くなった)


「名前」


短く言う。


「え?」


「固定」


それだけ。


「毎回同じにする」


短く。


「……ああ」


納得する。


「日替わりにしたらダメか」


(ズレた)


「ダメ」


短く言う。


「変わると迷う」


それだけ。


「固定でいい」


短く。


「なるほど」


(戻る)


別のやつが言う。


「昨日は速かったのにさ」


「今日は普通」


(維持不足)


「見る人いない」


短く言う。


「え?」


「直す人」


それだけ。


「……確かに」


少し考える。


「最初だけやって終わりだったな」


(その通り)


「毎回やる」


短く。


「同じこと」


それだけ。


昼休み。別のクラスを覗く。


入口は強い。


中もそこそこ。


だが理由。


弱い。


「これ」


指す。


「名前変わってる」


それだけ。


「え?」


「昨日と違う」


短く。


「……ほんとだ」


(ズレ)


「固定」


短く言う。


「変えない」


それだけ。


「そっか」


「それで戻るのか」


(理解)


「そう」


短く。


「同じだから選ぶ」


それだけ。


(通る)


放課後。田中の店へ向かう。


店の前。


止まる。


入る。


だが。


少しだけ間がある。


(遅い)


中に入る。


「来たか」


田中。


「はい」


「なんかよ」


「昨日ほどじゃねえ」


(見てる)


「理由」


短く言う。


「見てみろ」


メニューを指す。


“田中定食(今日は少し変更)”


(これだ)


「変えた」


短く言う。


「少しだけな」


(それで崩れる)


「戻す」


短く言う。


「え?」


「固定」


それだけ。


「でも飽きるだろ」


(違う)


「迷わない」


短く言う。


「それが強い」


それだけ。


沈黙。


「……戻すか」


田中が言う。


(決まった)


次に中を見る。


順番が崩れている。


「これ」


短く言う。


「注文順に戻ってる」


それだけ。


「忙しくてよ」


(崩れた)


「戻す」


短く言う。


「重いの先」


それだけ。


「……はいはい」


苦笑しながら戻す。


(回る)


数分後。


「早いな」


客が言う。


(戻った)


田中が言う。


「なあ」


「結局さ」


「毎回同じことやらないとダメか」


(その通り)


「そう」


短く。


「型だけじゃ足りない」


それだけ。


「維持」


短く。


「それが一番大事」


それだけ。


「……面倒だな」


(当然)


「でも止まるよりいい」


短く言う。


沈黙。


「……だな」


小さく言う。


夜。店を閉める。


数字を見る。


「……戻ったな」


田中が言う。


(修正成功)


「ズレたら落ちる」


短く言う。


「戻せば上がる」


それだけ。


「簡単だな」


(シンプルだ)


「同じ」


短く言う。


「やるだけ」


それだけ。


夜。家に帰る。机に向かう。ノートを開く。


店①(安定)

店②(修正)

店③(修正)


その下。


拡張(完了)

維持(必要)

ズレ(発生)


(これだ)


広げるだけじゃ続かない。


維持しないと落ちる。


「……次は」


小さく呟く。


維持を仕組みにする。


人じゃなく。


流れで。


それを作れば。


もう崩れない。


布団に入る。目を閉じる。


広がった流れが少しだけ揺れる。


だがすぐ戻る。


(いける)


維持も組み込める。


その段階に入った。

今日はこれだけです

10話分ストック作ってきます

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