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最強の登頂者〜名を持たぬ異能は、百階層の頂へ至る〜  作者: アヌア


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07話 塔の実習Ⅲ ― 塔の意思 ―

その扉を抜けた瞬間、背中を突き刺していた視線は消えた。

妙な気持ち悪さがあった。

(これには慣れないな…)

「お兄ちゃん。どうかしたの?」

「なんでもない」

「それにしても…暗いね。見づらいけど、また街だ」

32階層。

俺が知っている層の中で最も暗い闇を持つ層だ。

ここの生物がとても…

「お兄ちゃん!!右!」

そうユミが大きな声で言った瞬間だった。

気づいている。

見えない暗闇から闇そのものが俺を

()()()()()()()()()()()

俺はその()を腕で薙ぎ払って消した。

闇は霧のように散り、そこにいたそれは跡形もなく消えていた。

腕にまとわりつくような冷たさが走る。

久しぶりの感覚だ。

「お兄ちゃん…今のは?」

「ああ、ここの階層だけは俺から離れるな」

「今のって…生き物?」

「生き物…といえば生き物かもしれない」

正確に言うなら…()()()()、だろうか。

「とりあえず。ユミがこの闇に触れたら少し面倒だ。俺の背中に乗れ」

「え?あぁ、うん。わかった」

ユミが俺の背中に乗る。

「太ったか?」

「うるさい!早くして!」

「嘘だ。安心しろ。少し早くなるからしっかり掴んどけよ」

俺はその瞬間異能(ちから)を使う。

俺の身体が少しずつ、自身の闇に包まれる感覚に陥る。

なるべく使()()()()()()ように。

この階層は今のユミだと危険すぎる。

「《⬛︎⬛︎》」

次の瞬間。俺は思い切り地を蹴り、走り出したのだった。


闇が俺を追っていた。

「お兄ちゃん!大丈夫?私走ろうか?」

「大丈夫だ。気にするな」

俺は数分間走り続けていた。

この階層は他の階層と違って()()()()()()()()()

つまりはその扉を早く見つけて入らなければならない。

闇は他の階へ侵入できない。

「ユミ。久しぶりだな」

「え?お父さん?」

…!!

「違う。それはお父さんではない」

「ユミ…!」

「お母さん…」

幻覚…それは本当に…

厄介だった。

「《⬛︎⬛︎⬛︎》」

俺がそう言った瞬間。

幻覚は消え去った。

「お兄ちゃん…今、なんて」

「目を覚ませ。こんな所に俺達の親が苦戦するわけがない」

「…」

ユミは黙ったままだった。

「きっと今も上の方にいるさ」

「そうだよね…」

また、嘘をついた。

俺は悪い奴だな。

この階層の闇は無限と言ってもいいほどに深く。

そして、残酷だった。

幻覚…この階層で見せられる幻覚は、

過去の自分の後悔だった。

「…      」

俺はその声を聞いた瞬間。

涙が溢れそうになった。

「お兄ちゃん。今の声…」

「ユミ、降りろ」

「え?わかった」

「あそこに扉がある。すぐに行け。俺は少し遅れて行く」

「どうして…」

ユミが心配そうな目で見てきた。

俺は何も言わずに微笑みかけた。

「わかった。早くしてね」

そう言い、ユミは弾丸のようなスピードで扉に走っていった。

闇がユミを追おうとする。

「《⬛︎⬛︎⬛︎》」

ユミを追っていた闇が消える。

「……どうして」

「あなたは死んだはずだ」

「…」

「ごめん」

「…」

沈黙が続く。

「俺は二度同じ過ちを繰り返す事はない」

「成長したのですね」

「俺はあの子を守り抜くさ」

「良き報告を待つ事にします」

「ああ」

俺はその闇に触れようとした。

右手を伸ばす。

常人ならば、闇そのものに飲み込まれてしまう。

俺は違った。

触れようとするが、スーッとすり抜けてしまう。

「私に触れる事はできないですよ」

「そうだな…」

また、涙が溢れそうになる。

「貴方はいずれ、また登る」

「…当たり前だろう」

「守りたい者がいるみたいですね。早く向かった方がいいでしょう」

「それもそうだな」

「最後に、貴方に言わなければならないことがあります」

「なんだ?」

「塔は、以前と姿を変えています。貴方の経験で補えるものにも限度がある。それを自覚して行きなさい」

「俺を誰だと思っているんだ」

俺がそう言うと、彼女はふふっと笑って

「それもそうですね。信じていますよ。     」

「ああ、()()()



扉を抜け、俺は33階層についた。

「お兄ちゃん!遅いよ!」

「ああ、すまないな」

「1人で大変だったんだからね。暗いし!怖いし!」

そう言ったユミの手を見ると、血のようなものがついていた。

「お前…」

「33階層の生物なのかな?入ってきた途端群れで襲ってきたから全員殴って倒したよ」

床を見ると。恐らく、その生物だったであろうものたちの残骸が山のように積み上がっていた。

正直少し引いている。

「すごいでしょー?」

褒めて欲しそうな顔で近寄ってきながらそう言った。

「…すごいな。ユミ」

俺はそう言い頭を撫でた

「えへへ」

と嬉しそうにいうユミ。

()()()()と重なった。

俺はまだ、囚われているのかもしれないな。

33階層から35階層までは目立った何かがあるわけではない。

「ここからはさっきに比べたら楽だぞ」

「え!そうなの!やったー!」

「だが、どうなるか」

『聞こえるか、諸君』

「あ!この声」

『レイだ』

安否確認…だろうか

『安否確認だ。A班から現在の階層と安否を教えてくれ。それでは、A班』

『A班、31階層』

『次、B班』

『B班〜、今はね〜』

通信機越しに打撃音が聞こえてくる。

『34階層!』

『次、C班』

『…』

『C班の者、聞こえるかね』

『…』

通信機越しだから聞こえづらいが、ノイズ混じりに何か聞こえる。

呼吸音。

通信機の向こうで、誰かの呼吸音だけが残っていた。

「お兄ちゃん。何か聞こえるよ」

「ああ、ユミ。異能を使って聞いてみてくれ」

「…っ!!」

「どうした」

「何か引きずる音が聞こえる…」

…嫌な予感がするな。

「遠いところから助けてって聞こえる!!あ、切れた」

「…」

あぁ…そうか。

「どうしよう…」

「どうしようもない」

「…え?」

「二人組である以上、相性の問題。経験値の少なさ。壊滅する班があってもおかしくはない」

「うそ…」

「すみません」

『この声は?C班の者か?』

「違います。E班のユウです」

『どうしたのかね』

「C班は恐らく壊滅しました」

『…なるほど。わかった。それでは、D班』

「え?これで終わり?人が死んだかもしれないのに」

「ユミ。塔は常に死と隣り合わせなんだ。死んだ奴はそこまでの人間だった。それで終わってしまうんだ」

『D班だ。現在、39階層で簡易拠点を作成している』

…やはり早いな。

『早くて頼もしい限りだ。少し待たせる事になるがそれは我慢してくれ』

『大丈夫です』

『我々は、現在37階層にいる。諸君は引き続き頑張ってくれたまえ』

…C班が恐らく壊滅した。

名前、そしてそいつらの異能を知ることもなく消えていってしまった。

利用できる異能だったかもしれない…

壊滅したかもしれない今、考えても仕方ないか。

『あぁ!すまない!忘れていた。E班』

俺も忘れてしまっていた。

「E班。現在33階層にいます」

『了解した。諸君らに言う。C班は仮だが壊滅した事になっている。君たちはそうならないと、期待しているよ』

ブツっと通信機が切れる音がした。

「…それじゃあ行くぞ。ユミ」

「わかった」


俺たちはすんなり33階層で扉を見つけていた。

と言ってもここから、35階層までの扉の位置は全て固定だった。

「お兄ちゃん。私達、死んじゃうのかな」

「年を取ると死ぬな」

「そうじゃなくて…」

…死、か。

「ユミ」

「どうしたの?」

「俺がいる限り、お前は死なないし、死なせない」

「…相変わらず、頼もしいね。信じてるよ!お兄ちゃん」

「ああ」

ギィィと、音を立て、扉は開く。

これを聞くのはあと何回なのだろうか。

その音を聞くたびに悪夢ように思い出す。

()()()()を。

「いくぞ」

「はーい!」

俺たちは扉を突き抜ける。

たとえ、その先に地獄が待っていようと。

それでも。

俺は、その地獄を何度でも、踏破してみせる。

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