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最強の登頂者〜名を持たぬ異能は、百階層の頂へ至る〜  作者: アヌア


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06話 塔の実習Ⅱ ― 俺の時間 ―

俺達は30階層に来ていた。

30階層。

これまでの階層と決定的に違う点が一つある。

生物の強さだ。

25階層から29階層までの生物とは比べものにならない。

そう言われている。

――俺には関係のない事だがな。

どうやらここも荒廃した街だった。

だが、29階層とは明確に違う点があった。

「お兄ちゃん。夜だ」

「夜の階層だ。暗い。早く仮拠点になる場所を探そう」

この階層は()だという事。

そして、

この闇は35階層までこれは続く。


「お兄ちゃ」

「静かに」

「なんで?」

「あれを見ろ」

物陰に隠れ、様子を伺っていた。

あれは…この階層に現れる亡骸(スカベンジャー)だ。

人型に近く、皮膚が剥がれたような灰色の体が特徴的だ。

「あれは音に反応する。なるべく音を立てずに行くぞ」

「わかった」

ガタンッ!

「あっ」

瓦礫が転がる音が、やけに大きく夜に響いた。

「何してるんだ…」

その瞬間だった。

カクン、と。

亡骸の首が不自然な角度で跳ね上がる。

見つかった。

「キ…キィ…」

喉を擦るような音を漏らしながら、亡骸はゆっくりとこちらを向いた。

次の瞬間、地を蹴る。

「っ、来る!」

「下がってろ」

亡骸は異様な速さで距離を詰めてきた。

下の階層とは比べ物にならない。が、

正直なところ俺からすれば関係ない。

俺は一歩前に出た。

「うるせぇな」

踏み込み。

闇を切り裂くように拳を振るう。

ズン、と鈍い衝撃。

拳は亡骸の胸部を正確に捉え、

骨ごと、内側から砕いた。

「ギ…」

亡骸は、声にならない音を残し、崩れ落ちる。

地面に落ちる音すら、もう響かなかった。

「…え」

ユミが固まったまま呟く。

「今の、一瞬じゃなかった?」

「音を立てるなって言っただろ」

「いや、そこじゃなくて!」

俺は周囲を見渡す。

幸いなことに、他に反応はなかった。

「亡骸は群れる。今の音で寄ってくる」

「…最悪じゃない」

「急ぐぞ」

「…うん」

ユミはさっきよりも慎重に動いているみたいだ。


「ここら辺で大丈夫か」

「そうね。ここで一休みしましょう」

俺達はビルのような所の上で様子を伺っていた。

「うわ、さっきのやつが沢山いる…」

「音を立てなければ大丈夫だ。寝る準備でもしておけ」

塔の中で時計を使おうとすると変な方向を向いて動かなくなる。

体内時計が重要だが、これはほぼ勘でしかない。

「俺が見張りをする。お前は寝とけ」

「え?でも…」

「俺は大丈夫だ」

「…わかった。気をつけてね」

「俺はお前の兄だ。そう簡単には死なない」

「おやすみ」

「ああ、おやすみ」

ユミは寝巻きに包まって寝る準備をしていた。


数分後、ユミの寝息が聞こえてきた。

塔の環境に適応するのが早くて助かる。

幸いにもこの建物に侵入者はいない。

それじゃあ、

ここからは()()()()だ。

ユミの安全の為だ。妥協はしない。

「《⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎》」

これでこの建物に亡骸が入ってくる事はない。

正確には()()()()()()()()()()()()()()()()

久しぶりに使ったが。不思議な異能(ちから)だな。

俺はビルから飛び立った。

トッ、と俺は地面に着地をする。

「ギィィ!」

亡骸が俺の着地の音に反応する。

ざっと50体くらいだろう。

いや、この音を聞きつければ更に増えるだろう。

「お前達は貴重な()()()だ。

大切に扱ってやるから安心しろ」




「《氷葬拘束(コフィン)》」

私がそう唱えると亡骸の足元から氷が展開され、

棺のように封じ込められた。

「ヴァルフ。そろそろ休む所を見つけよう」

「そうですね。この階層に生息する亡骸には俺の重力操作が効かない。急ぎましょう」

「にしても、ヴァルフ。亡骸が少ない気がするのだが、気のせいだろうか」

「レイさん!誰かいます!」

「なんだ?」

「あ、去っていきました。後を追いますか?」

「誰か見えたか?」

「いえ…早くて見えませんでした。ただ、黒い影でした」

「後を追うのは良くない。警戒を高めるだけで良いだろう」

「わかりました」

ヴァルフが目で追えないとはな…

一体何が居るんだ?

まさか…




2日目だ。

ユミが体を起こして、

「んー。お兄ちゃん。おはよう」

と眠そうに言ってきた。

「おはよう。と言いたいところではあるが。残念な事にこの階層にいる限り夜は続く」

「えー。そうなのか。お兄ちゃんは休めた?」

「あぁ、休めたさ」

「扉を探しに行こっか」

「そうだな」

一応言っておくべきか。

「ユミ」

「なにー?」

「亡骸についてだが。アイツは光に弱い。ライトは持っているだろう」

「そうなのか!わかった」

「準備がしっかりしていて頼もしいな」

「へへ!お兄ちゃんの妹だもんねー」

「そうだな」

警戒しつつ歩くが亡骸はいなかった。

数分歩き。ユミが

「なんか…亡骸がいないけど」

「そうだな」

昨日と比べ、明らかに亡骸は減っていた。

理由を教える必要はない。

「扉の場所へ向かうぞ」

「わかるの?」

「ああ、昨日見つけた」

俺は昨日の見張りの時に扉を見つけていた。



数十分歩き、

「あったぞ」

「ほんとだ!やっぱりすごいねお兄ちゃん」

「亡骸がいたら面倒だ。早く次の階層へ行くぞ。走れ」

俺は地を蹴り走った。

「お兄ちゃん!急に走らないでよ!」

「もう二日目だ。早い奴らは39階層についているかもしれない」

「…D班とかのことね」

「そうだ」

あまり待たせていても仕方ない。

俺たちは扉の前に立った。

ギィィ、と音を立て、扉は開いた。

「行くぞ」

俺たちは扉に入った。



31階層。

扉を抜けた瞬間、期待していた光はなかった。

相変わらずの夜だ。

「まだ夜…?」

「35階層まで続くと言ったはずだ。もう忘れたのか?」

「あー!そうだった」

俺たちは少し歩いていた。

「お兄ちゃん。なんか30階層より静かじゃない?」

「ああ、だから危険だ。警戒は怠るな」

「わかった」

俺だけか。()()()()のは。

ユミの《強化》でも感じれないみたいだ。

遠くの方で何かがこちらの様子を伺っている。

俺はその方向を向き。

(…来るな)

心の中でそう呟いた。

「お兄ちゃん。どうかした?」

「なにも」

この階層は扉の位置はランダムだ。パターンとかでもない。

「31階層では扉を探さないといけない」

「そうなのかー。面倒だね」

「だが、敵対の生物はいない」

「え、そうなんだ」

「だが注意が必要だ」

「なに?」

「生物を攻撃してはいけない」

「なんで?」

ユミがそう聞いてきた。

「死にたくないなら言う通りにしろ」

「えぇ…こわ」

万が一ユミがこの階層の生物を攻撃しても死ぬ事はないだろう。

()()()()()()、ユミを死なせる事はしない。



「ヴァルフ。この階層でやってはいけない事は?」

「生物に攻撃をしてはいけません」

「そうだな。その理由は?」

「生物の持つ特殊な力によって闇に引き込まれます」

「そうだ。過去、引き込まれた者達がいたが、誰も帰ってこなかったみたいだ」

「扉を探せばいいだけのことですよ」

「それもそうだな」




俺たちは扉を見つけていた。

妙だな。

下降者と会わない。一つの隊と遭遇してもおかしくないはずだ。

今は人手不足なのだろうか。

今考えても仕方ないか…

ギィィ、と音を立て扉が開く。

「お兄ちゃん。こんな広いとこでよく見つけれたよね。私たち」

「そうだな。運が良かったのだろう」

「それもそうだね」

俺たちは扉に入っていった。

扉が閉じた後も、あの視線だけは、しばらく背中に残っていた。

この階層で起きた事は、まだ知るべきではないだろう。

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