03話 アセント学園
俺たちはアセント学園の入り口で合流した。
「お兄ちゃん。なんか見られてない?」
「ん?」
耳を澄ませてみると
「あれ、風神と海神の子供じゃない?」
「え?噂の双子?」
「そうそう…孤児院育ちだけど…」
「兄が異能授かってないんだっけ…」
意外と俺たちの両親は名は知られてるみたいだ。だが俺は異能はもう既に授かってる。正しく言うなら元から持っていたと言うべきだろうか。
「まあまあ、別に悪い噂って訳じゃ…あれ、あいつどこ行った」
「貴方たち!私のお兄ちゃんばかにしてるの?」
「ちょ…ユミ」
「ひいっごめんなさいぃ!!」
「え、あ、あすみませぇえん!!」
「あ!ちょっと!」
「ユミ…初日からこれだと心配なんだが…」
「もうお兄ちゃんのことばかにするのが悪いでしょ!」
「まあまあ、俺は別にいいから」
俺らは入学式の会場まで向かった。
「入学式楽しみだね」
「そうだな」
俺とユミは隣の席に座っていた。
時々視線を感じるがそこまで気にしていなかった。
「諸君、入学おめでとう。」
「え、あれって…」
「氷神のレイじゃないか?」
ざわざわと生徒達が騒ぎ立てている。レイ。俺は聞いたことがなかったが意外と知名度はあるみたいだ。
「お兄ちゃんすごい!氷神のレイだよ!」
「お前は知ってるのか?」
「当たり前じゃん!雷帝のヴァルディオスの次に強いって言われてるクライマーだよ!」
「雷帝…」
ヴァルディオス…聞いたことはあるが今はこの世界のトップのクライマーなのか。
「静粛に」
すると静かになった。
「諸君がこの学園に来たと言うことはそれ相応の覚悟を持っているのだろう。クライマーとは常に死と隣り合わせだ。甘く見ているならここで帰りたまえ」
「…」
帰るやつはもちろんいなかった。
「それではこれからの予定を話す。まず初めに君たちには異能適性検査を受けてもらう。君たちの異能の情報は保護者から頂いているが念の為学園でも行う。この後、場所を移動してもらう。その異能適性検査のランクによってクラスが分けられる。高い順にA、B、Cと行く」
なるほど。さて、俺とユミが同じクラスだととても嬉しいのだが。
「お兄ちゃん、大丈夫かな」
「大丈夫だろう」
「それでは諸君は移動してもらう」
検査結果は検査後に検査官から知らされる。
「こちらへどうぞ」
「うわぁあ!Cかよ!!」
Cは一番低かったな。可哀想に。
「次の者」
「はい!」
俺より先にユミが異能適性を受けることになった。
異能適性検査は学園にある専用の機械で異能の性質、出力、安定性や使用時の負荷を数値化する。
その結果は将来の登攀任務にも直結してくるという説明を受けた。
まあ学園で成長すれば将来はなんとでもなるだろう。
恐らく、この説明も表側のものでしかないしな。
「!!君は素晴らしいね」
「おお!お兄ちゃん!Aだよ!」
「すごいじゃないか」
ユミの適性結果は
異能の性質 A
出力 A
安定性 B
だった。まあまあすごいみたいだな。
「次の者ー」
「お兄ちゃん頑張れー!」
何を頑張れっていうんだよ…
「お願いします」
「それでは開始します。よろしいですか?」
「はい」
俺はアセント学園入学前にカイに俺の異能の名称の提出に関して相談しに行っていた。俺はカイに《少し力が強くなる》という異能で通すようにお願いした。意外と学園は緩くそれで通された。
異能適性検査、
それは学園のクラス決めのために行うもののように思える。そう説明されたからそう思うのは当たり前だろう。だが、裏の面では国を脅かしかねない異能を見つけ出すために行なっている。俺はそう考えている。
「…?」
検査官が首を傾げている。
「もう一度お願いします」
「はい」
そろそろだろう。
「…?…こちらへ」
俺は紙を見て疑問符を浮かべた。
適性検査終了後、この場に残ってください。
そう書いてあった。
「お兄ちゃん!どうだったー?」
ユミが楽しみそうに聞いてきた
「俺は残らないといけないみたいだ」
「え?どうして!」
「わからない」
「えー!もしかしてあの時異能授からないまま帰ってきた?」
「そんなことするほど俺はクズじゃないから安心しろ」
「えー…」
「とりあえずAクラスおめでとう」
「うん!ありがとう!」
異能適性検査終了後、俺はその場に残っていた。
検査が終わった生徒達はそれぞれのクラスの場所へと連れていかれていた。
検査官がため息をついた後、俺を見た
「こちらはついてきてください」
検査官は紙を2枚持っていた。
恐らくそれに俺の適性検査の結果があるのだろう。
「この中へどうぞ。連絡は済ましておりますので。この紙を中の人に渡してください。渡すまではその紙は見ないでください」
「わかりました」
3回ノックをした
「どうぞ」
低い声が中から響いた
部屋の名前は学園長室と書いてあった。
「失礼します」
「君がユウくんだね?」
「…?はい」
「その紙をくれ」
「わかりました」
「そこにかけてなさい」
この人は恐らく学園長だろう。黄色の髪に黄色の瞳。片目を怪我している…どこかで会ったような
…そうか…そりゃそうなるか。
学園長が向かいのソファに腰をかけて机の上に2枚の紙をこちらに見せるようにのせた。
「さて、君の適正結果についてだが。まずはこの紙を見てもらおうか」
それは俺の適性結果だった。
1枚目
異能の性質 ⬛︎
出力 ⬛︎
安定性 A
2枚目
異能の性質 ⬛︎
出力 ⬛︎
安定性 C
「君の異能の名前は確か、少し力が強くなるだったか?」
「はい」
「2回やって結果が異なったみたいだ。基本このようなことは有り得ない。何か心当たりはあるかな?」
「ないです」
「そうか…」
「…」
「二つの異なる結果が出ると言うことは二つの可能性がある。一つ目は君が二つの異能を持っているという可能性。二つ目は君ともう一人、君の中に誰かがいてそいつの異能が適性検査されてしまったという可能性」
一つ目は聞いたことがある。二つ目は俺も聞いたことがなかった。
「二つ目に関して詳しく聞けますか」
「異能は世間では1人の人間に一つとされている。だが、数年前とある人間が1つの人間ではなく1つの人格に一つなのではないかと…そういう説を立てた」
「…なるほど」
「その説を立てたのは君の母、風神の異能を持っていたミレイアだ」
有り得ない話ではないが興味深い。
「俺はほとんどの確率で一つ目だと考えている。2つの異能を持つことはごく稀にだが実例はある。そういうやつを見たことがある」
「いつですか?」
「6年ほど前だよ」
「もしかして…」
「君はよく知っているみたいだ。6年前に塔にバグが起きたな。その時に15階層に突如として現れた悪魔の王ルシフェリオス。そいつを倒した奴が居たんだ」
「その人の名前は」
「そう。ディオスだ」
ディオス…
「俺とディオスは2人でルシフェリオスの討伐に向かったんだ。俺とディオスなら倒せる。そう信じて疑わなかった」
そうだろうな。こいつとディオスなら楽とはいかないが普通に倒せたはずだ。だが…
「だが、15階層だというのにデバフがあったんだ。それも悪魔の呪いというな」
俺は既にそれを知っていた
「悪魔の呪い…」
「俺は悪魔の呪いにめっぽう弱くてな。ほとんどディオスが倒し切ったんだ。あいつが覚醒していなかった限り不可能だっただろう」
覚醒か…
「それで、そのディオスって人は二つ目の異能を手に入れたんですよね」
「そうだ。ディオスはルシフェリオスを討伐したら急に異能をもう一つ手に入れたんだと言い始めたんだ」
異能を手に入れた…か
「ディオスの元の異能は《不滅》だ」
不滅。それは様々な応用が効くとても強い異能だった。俺の知る数少ない悪魔の呪いを無視できる異能の一つだ。
「そしてディオスが授かった二つ目の異能…奴は
《塔の使徒》と言っていた」
「塔の使徒…?」
塔の使徒…聞いたことがない。バグによって生まれたボスを倒したから塔に呑まれたのか?
「これ以上この事を話すことはできない。ひとまずお前のクラスをどうするかについて話そう」
「そうですね」
「お前は、妙に落ち着いているな。どんな事が起ころうと冷静さが担保されている」
「…慌ててもいいことがないので」
「そうか。ひとまず。お前の場合は二つ異能を持っている可能性があるがそのもう一つに気づいてないパターンだ」
「なるほど」
「適性検査ができないのなら実戦で試してみるしかないだろう」
「え?」
「ついてこい」
「えぇ」
「訓練場に移動する。俺が相手してやる」
「ところで学園長」
「なんだ?あぁ、まだ名乗っていなかったな。
俺の名前はヴァルディオス。人々は俺を雷帝と呼んでいる」




