02話 隠された力
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎だと…?」
「認識不能ってことですかね…」
「そんなの聞いたことないぞ」
どうやら俺の異能は塔の異能機では認識されないみたいだ。
「ユウ、何か心当たりはあるか?」
カイに聞かれたから俺は
「いや…なにもわからないです」
と言った。正直、こうなることは予想していた。
昔もそうだったからだ。
「博士、俺たちはとりあえず外に出ます。この事は上層部に報告し」
「いや、報告しなくて良い」
カイが博士の言葉を遮るように言った。
「それは…どうして?」
「今の上層部に報告してもいい事なんてありゃしない。下手すれば彼の両親の後を追わされかねない」
「わかりました。このことは口外禁止ということですね」
「それじゃあ頼んだよ。カイ」
「博士、お体には気をつけて」
「はは、わしもそんな歳か。安心したまえ」
「それではまた」
俺とカイはその場を後にした。
エレベーターの中。
「カイさん、俺の異能は」
「今はわからない。今の人間の技術じゃ説明の付かない何かなんだろう」
「…そうなんですね。」
俺は自分自身の異能を既に知っている。
それは隠さなくてはいけない事だ。
強い力には代償が付き物だ。今はこれでいい。今は。
俺たちは塔の外へと出た。
「ユウ!どうだった?」
俺は塔の外にいたランスに話しかけられた。
「えっと…俺の異能は…」
俺がもたもたしていると隣にいたカイが小声で
「ランスさん。・・・」
「…なるほどな。わかった」
何かを伝えられたランスは俺の近くに来て耳元で
「上層部には気をつけろ。この塔で人間に支配が及んでいる層は常に監視されている。」
孤児院に戻り俺は院長に呼び出されていた。
「院長、どうしました?」
「ユウ、君は今日塔に異能を授かりに行ったみたいだね」
「そうですね」
「そろそろ君達もクライマーになる歳だろう。君達もいつまでも孤児院にいるわけにもいかない。」
なるほどな。
「そこで君と君の妹に来年の4月から、アセント学園に通ってもらうことになった」
アセント学園。
塔に登るクライマーを育成する学園だ。16歳くらいの時に入学するのがほとんどだ。
今は3月4日。猶予は1ヶ月内くらいか。好都合だ。
「わかりました。妹にも伝えておきます」
「よろしく頼むよ」
「それでは失礼します」
「ああ、ちょっと待ちたまえ」
「なんでしょうか」
「異能はなんだったんだい?」
「…」
俺は少し考えたのち
「少し力が強くなる異能でしたよ」
「そうか。それじゃあ学園に入学するまでの間頑張りたまえ」
「ありがとうございます。失礼します」
俺は院長室をあとにした。
…
ドアが開く。
「院長、ユウの異能はなんだった」
「少し力が強くなる異能だそうです」
「はは。彼は面白いね。あのソンの息子だというのに」
「人に隠し事の10や100くらいありますよ。ねぇ、雷帝のヴァルディオスさん」
「ユウがこの孤児院に通い8年くらいか。あいつは異能を欲するわけでもなくダラダラと過ごしていたみたいだな」
「そうですね」
「ソンとはまるで大違いだな」
「悪い意味でですか?」
「当たり前だ」
「ですがそろそろ貴方の管轄に行くみたいですね」
「その節は助かった。あいつなら行きたくないと言いかねなかったからな」
「私は何もしてないですよ。ただ彼がクライマーにならないといけない自覚を持ち始めたのでしょう」
「あいつが面倒くさがらずにくるとはな…」
「不思議ですね。孤児院に入ってきた頃なんて私の言うことまるで聞かなかったのに」
「ふん、あいつはソンに似ても似つかないところがある。たまにソンの息子なのか疑うほどにな」
「そうですね」
「8年間ご苦労だったな。あとは俺がやる」
ヴァルディオスはその場を去っていった。
「はぁ…頑張ってくださいね。ユウ」
部屋に帰ってくると
「お兄ちゃん!どうだった!」
真っ先にユミが出迎えてくれた
「近いな。離れろよ」
「もー早く教えて」
「少し力が強くなる異能だった」
「ええ何それ!弱そう…」
ごもっともだ。まあ本当は違うけどな。ユミがバカで助かった
「ユミ、話がある」
「え?なに」
「座れ」
「俺とユミは4月からアセント学園に通うことになった」
「え!あのアセント学園?!」
「そうだな。アセント学園だ」
「やったー!!」
喜んでくれてなによりだな
「国が建ててるクライマーを育てる学園でしょ!」
「楽しみか?」
「楽しみ!どんな人達と会えるのかな!お兄ちゃんも楽しみ?」
「そうだな。楽しみだ」
学園…か。警戒をしなくてはならない。昔のような過ちを繰り返さないためにも。俺が今どれだけ異能を扱えるか知っておかなくてはならないかもしれない。
「お前、異能の扱いは大丈夫なのか?」
「お兄ちゃん?私を誰だと思ってるの!」
「ユミだな」
「最強のユミさんだぞ!もう完璧だよ!」
「それは心強いな」
「でしょー!!」
「今日はもう遅いから早く寝ろ。俺は風呂に入ってくる」
「はーい」
俺は湯船に浸かりながら考え事をしていた。
学園。噂によると異能によってクラス分けがされるみたいだ。俺の異能は《⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎》であることは隠されている。そのことは明日ランスに話さなくてはならない。このことを知っているのはおそらくそいつとカイくらいだろう。今日ランスに言われた
「上層部には気をつけろ」
これは恐らく利用されかねないということだろう。
これは昔から変わっていないのだな。
のぼせてしまうな。早く出よう。
3月31日。明日から俺とユミはアセント学園に入学する。この数週間の間でわかったのはユミの異能はかなり強い部類だった。俺は妹と孤児院の庭で異能を使用した戦闘訓練のようなものをしていた。
「お兄ちゃんすばっしこい!」
「振りかぶりすぎじゃないか?」
俺は妹の攻撃を避けながら妹と話していた。
「なんでッ!そんな避けるッ!の!」
空気を裂く拳の音が耳によく聞こえる。風を感じる。
当たったら普通に折れそうだな。まあ、俺なら大丈夫だろう。俺が妹の攻撃を避けていたら
「あっ」
後ろにあった小足に足を躓かせて後ろに倒れてしまった。
「やっと!当てれるッ!!」
妹が拳を俺の顔面にぶち込もうとしていた。
ドゴォォン!!
地震かと思うほどの揺れを感じた。
俺はなんとか避けたが…
「これは…やべぇな…」
「もう!なんで避けれるのよ!」
見ると庭にクレーターのようなものができてしまっていた。
(孤児院の庭広くてよかったな…)
「何してるの貴方達!!!」
「あっ院長…」
「ユミ!あれだけここでやらないでって言ったよね!」
「すみません…」
「ユウも!なんで妹にダメって言うように頼んだのに!」
「…すんません」
流石にここまで強いとは思っていなかった。
「終わりにするか…」
「そうね。でもこのクレーターどうするの?」
「…まあなんとかなる」
「…えぇ」
夜、俺らは荷物の整理をしていた。
この孤児院に過ごして8年。まあ長かった。
アセント学園はどうやら寮があるらしい。
「お兄ちゃんこれ持ってく?」
そう言ってユミが見せてきたのは母と父がいつも大事にしていたペンダントだった。
「当たり前だろ」
「そうよね。ママとパパ、今何階層にいるのかな…」
「60とか言ってるんじゃないのか」
「生きて帰ってくるよね」
「…そりゃな」
妹は両親が死んだことを知らない。
塔は下に物を送ることはできない。
人が生身一つで降りてくるしかない。
塔には自分たちが物資を持っていかないといけない。その中で塔の生物と戦い、勝たなくてはならない。80階層まで行けばほとんど帰ってこれないとされている。俺たちはそんな塔に挑むクライマーを育てる学園に、明日から通うことになるのだ。
翌日。朝。
「ユミ、準備はいいか」
「もちろん!お兄ちゃんこそ準備はできてるよね」
「当たり前だろ…」
孤児院の入り口、院長と他の子供達がいた。
「ユウ兄ちゃん!元気でね!」
「コウタも元気でな」
「ユミ姉〜!!」
「もう、ミユったら泣かないの」
子供達と別れを告げ俺とユミは院長と対面していた。
「ユウ、学園ではちゃんとしてね」
「わかってますよ院長」
「ユミ、お兄ちゃんを頼んだわよ」
「もちろん!お兄ちゃんは私がいないとダメだからね!」
「ふふっ」
「ユミ、先に行っててくれ」
「…?わかった」
ユミはその場をあとにし、学園へと向かった。
「ユウ」
「はい」
「ユミを頼むわよ」
「俺は自分のできることをやるだけです」
「そうね」
「それでは達者で」
「貴方こそね」
俺は自分が知る人間が学園にいることを予想していなかった。




