後編
モナの顔を目にした魔法使いは、驚愕と怒りに顔を染める。
「その紋様……裏切りの魔女ミモナドールかァッ!」
激情により、魔法使いから迸る魔力が膨れ上がった。
彼は唾を飛ばしながら叫ぶ。
「人間の軍に紛れ込んだと聞いていたが、まさかこんな場所で会うとはな!」
「…………」
「魔法使いの知恵と誇りを捨てた恥知らずがッ! 塵一つ残さず焼き尽くしてやる!」
魔法使いは、頭上に生成した特大火球を放とうとする。
しかし、それより早くモナが発砲した。
弾は特大火球を撃ち抜き、音もなく霧散させる。
「何……っ!?」
攻撃を妨害された魔法使いは再び火球を生み出す。
ところが同じ要領で火球を狙撃されて掻き消されてしまった。
二度の失敗で魔法使いは怒鳴り散らす。
「き、貴様! 何をしたッ!?」
モナは返答代わりに発砲した。
弾は魔法使いの左脚に命中し、彼の体勢を崩した。
そのまま魔法使いは真っ逆さまに墜落し、地面にぶつかって転がる。
魔法使いは小刻みに震えて悶絶する。
辛うじて速度を殺していたものの、全身を打ち付けた痛みは凄まじいものだったのだ。
「く、くそ……」
魔法使いは浮遊を試みる。
しかし僅かに浮いてからすぐに着地してしまった。
何度か繰り返すも結果は同じだった。
(魔法が上手く発動しない……!?)
狼狽する魔法使いの肩を銃弾が貫通した。
たまらず魔法使いは走り出して近くの廃墟の陰に身を隠す。
彼はモナのいる方角を睨みながら大声で指摘した。
「わ、分かったぞ! 貴様、魔法を中和する魔法を使っているな! 弾に付与しているんだ! だから結界でも防げず、再生できず、魔法の出力が安定しないのかッ!」
銃声が連続で轟く。
身を低くした魔法使いは怒りのあまり地面を殴った。
「この、卑怯者め! 姑息な戦い方しかできないのかァ!」
物陰から飛び出した魔法使いは、火球は連打で投げつける。
モナは遮蔽物を利用して逃れつつ、射撃で反撃する。
脇腹を撃たれた魔法使いは後ずさり、全身から炎を噴き出した。
「ええい、鬱陶しい! 俺の炎を直接叩き込んでくれるッ!」
魔法使いは炎で加速して一気に距離を詰める。
モナが迎撃のために引き金を引くも弾は出なかった。
目ざとく気付いた魔法使いが勝ち誇る。
「弾切れか! 無能の民の武器に頼った貴様の負けだ! 死ねぇッ!」
魔法使いが両手に炎を纏わせる。
刹那、モナの狙撃銃が仄かに発光し、魔力で構成された非実体の弾丸が放たれた。
弾丸は炎を中和しながら突き進み、勝利を確信した魔法使いの眉間を捉える。
魔法使いの後頭部が爆ぜた。
脳の破片を撒き散らしながら、魔法使いは膝から崩れ落ちる。
そして二度と起き上がることはなかった。
銃を下ろしたモナは、途中から戦闘を傍観していた指揮官に報告する。
「敵を撃破しました。次の指示をお願いします」
「あー……とりあえず死体を回収してこい。確か魔法の触媒とか武器に使えるんだろ」
「了解。お気遣い感謝します」
一礼したモナは魔法使いの死体へ歩み寄る。
その途中、腰を抜かす新兵と目が合った。
新兵は口を開けたまま呆気に取られている。
モナは立ち止まって言う。
「……私が」
「は、はいっ!?」
「私が魔法使いなのは機密情報ではありません。ただ、不必要に吹聴するのは控えていただけると助かります」
「あっ、えっと、言いません、誰にも!」
慌てて立ち上がった新兵は敬礼する。
モナはあるかないかの微笑みを見せた。
女神のような美しさと眩しさに、新兵は思わず赤面してしまった。




