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魔弾の狙撃手  作者: 結城 からく


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3/3

後編

 モナの顔を目にした魔法使いは、驚愕と怒りに顔を染める。


「その紋様……裏切りの魔女ミモナドールかァッ!」


 激情により、魔法使いから迸る魔力が膨れ上がった。

 彼は唾を飛ばしながら叫ぶ。


「人間の軍に紛れ込んだと聞いていたが、まさかこんな場所で会うとはな!」


「…………」


「魔法使いの知恵と誇りを捨てた恥知らずがッ! 塵一つ残さず焼き尽くしてやる!」


 魔法使いは、頭上に生成した特大火球を放とうとする。

 しかし、それより早くモナが発砲した。

 弾は特大火球を撃ち抜き、音もなく霧散させる。


「何……っ!?」


 攻撃を妨害された魔法使いは再び火球を生み出す。

 ところが同じ要領で火球を狙撃されて掻き消されてしまった。

 二度の失敗で魔法使いは怒鳴り散らす。


「き、貴様! 何をしたッ!?」


 モナは返答代わりに発砲した。

 弾は魔法使いの左脚に命中し、彼の体勢を崩した。

 そのまま魔法使いは真っ逆さまに墜落し、地面にぶつかって転がる。


 魔法使いは小刻みに震えて悶絶する。

 辛うじて速度を殺していたものの、全身を打ち付けた痛みは凄まじいものだったのだ。


「く、くそ……」


 魔法使いは浮遊を試みる。

 しかし僅かに浮いてからすぐに着地してしまった。

 何度か繰り返すも結果は同じだった。


(魔法が上手く発動しない……!?)


 狼狽する魔法使いの肩を銃弾が貫通した。

 たまらず魔法使いは走り出して近くの廃墟の陰に身を隠す。

 彼はモナのいる方角を睨みながら大声で指摘した。


「わ、分かったぞ! 貴様、魔法を中和する魔法を使っているな! 弾に付与しているんだ! だから結界でも防げず、再生できず、魔法の出力が安定しないのかッ!」


 銃声が連続で轟く。

 身を低くした魔法使いは怒りのあまり地面を殴った。


「この、卑怯者め! 姑息な戦い方しかできないのかァ!」


 物陰から飛び出した魔法使いは、火球は連打で投げつける。

 モナは遮蔽物を利用して逃れつつ、射撃で反撃する。

 脇腹を撃たれた魔法使いは後ずさり、全身から炎を噴き出した。


「ええい、鬱陶しい! 俺の炎を直接叩き込んでくれるッ!」


 魔法使いは炎で加速して一気に距離を詰める。

 モナが迎撃のために引き金を引くも弾は出なかった。

 目ざとく気付いた魔法使いが勝ち誇る。


「弾切れか! 無能の民の武器に頼った貴様の負けだ! 死ねぇッ!」


 魔法使いが両手に炎を纏わせる。

 刹那、モナの狙撃銃が仄かに発光し、魔力で構成された非実体の弾丸が放たれた。

 弾丸は炎を中和しながら突き進み、勝利を確信した魔法使いの眉間を捉える。


 魔法使いの後頭部が爆ぜた。

 脳の破片を撒き散らしながら、魔法使いは膝から崩れ落ちる。

 そして二度と起き上がることはなかった。


 銃を下ろしたモナは、途中から戦闘を傍観していた指揮官に報告する。


「敵を撃破しました。次の指示をお願いします」


「あー……とりあえず死体を回収してこい。確か魔法の触媒とか武器に使えるんだろ」


「了解。お気遣い感謝します」


 一礼したモナは魔法使いの死体へ歩み寄る。

 その途中、腰を抜かす新兵と目が合った。

 新兵は口を開けたまま呆気に取られている。

 モナは立ち止まって言う。


「……私が」


「は、はいっ!?」


「私が魔法使いなのは機密情報ではありません。ただ、不必要に吹聴するのは控えていただけると助かります」


「あっ、えっと、言いません、誰にも!」


 慌てて立ち上がった新兵は敬礼する。

 モナはあるかないかの微笑みを見せた。

 女神のような美しさと眩しさに、新兵は思わず赤面してしまった。

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