中編
兵士達が車内で倒れている。
頭部を打ったのか、数人は血を流していた。
いち早く起き上がった指揮官が鋭い声で叫ぶ。
「敵襲だ! 外に出て反撃するぞ!」
横転した軍用車から兵士達が這い出る。
そこは焼け落ちた廃墟が並ぶ荒れ地だった。
進路の先がローブ姿の男が立っている。
男の顔や手には複雑な紋様が刻まれており、宝石のはめ込まれた杖を構えていた。
いずれも典型的な魔法使いの特徴だった。
「総員、あいつを撃て!」
指揮官の命令に合わせて、兵士達が一斉に発砲する。
しかし、銃弾は魔法使いを囲う半透明の結界に阻まれてしまった。
「ふはは、無能の民め。貴様らに格の違いを教えてやろう」
魔法使いは浮遊して上空を陣取ると、杖から大量の火球を生み出した。
火球は自由自在に飛び回り、地上の兵士達へと炸裂する。
爆炎と共に悲鳴が上がり、血肉が飛び散った。
「ぎゃあああああああぁぁっ!」
「お、俺の腕がッ!?」
「無理だ! 魔法使いに勝てるわけねえよ!」
火だるまになった兵士がばたばたと倒れ、熱線に四肢を切断された者が大声で喚く。
突然の攻撃に兵士達はパニックに陥っていた。
そんな中、指揮官は頭上に向けて銃を連射する。
数発の弾が結界の隙間を抜けて魔法使いの胴体に命中した。
魔法使いは攻撃をやめて目を見開く。
「……ッ」
傷口の肉が蠢いて膨らみ、間もなく塞がった。
血の滲むローブを撫でた魔法使いは勝ち誇ったように言う。
「馬鹿め! 鉛玉で俺を殺せると思ったか!」
魔法使いは杖を高々と掲げる。
そこに特大の火球が生まれようとしていた。
火球は回転しながら膨張し、既に魔法使いの何倍もの大きさまで成長している。
「俺に弾を当てた褒美だ。最強の魔法で葬り去ってやろうッ!」
魔法使いが杖を下ろそうとした寸前、乾いた銃声が鳴り響く。
魔法使いの胸に一発の弾丸が炸裂した。
「フッ、無駄な抵抗を――」
余裕の笑みを浮かべた魔法使いだったが、すぐに怪訝な顔になる。
結界の一部が砕けて穴が開いていた。
さらに胸の傷は再生せず、溢れた血が瞬く間にローブを染めていく。
「なっ、なぜだ!? おかしいぞ、こんなことが……!」
困惑と焦りを見せる魔法使いが、何かに気づいて廃墟の物陰を睨む。
静かに銃を構えるのは狙撃兵のモナだった。
彼女の顔には、右目を中心に紋様が浮かび上がっていた。




