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01.プロローグ

「オレと結婚してくれ!!!」


澄んだ秋空に響き渡る、求婚の調べ。

振り向くと紅髪の少年ユーリが立っていた。


小さな白い花を握り締めている。

花だけでなく指にまで土がついていた。

そんな彼の背後では、牛がマイペースに「もぉ~」と鳴いている。


何もかもが不格好なプロポーズ。

それなのに胸の奥がじん、と熱くなる。

貴方とならもしかしたら――。


秋の冷たい風がわたくしのミルキーブロンドの髪を揺らす。

その影に紛れるように、きゅっと唇を噛んだ。


夢は夢のままで。

そう自分に言い聞かせて、小さな彼と視線を合わせる。


「……っ」


彼はたじろいだ。

けれど、直ぐに持ち直す。

下がった右足を前へ。

ぐっと顎に力を込めて見つめ返してくる。


「ありがとう、ユーリ。とっても嬉しいわ」


ユーリの手に自分の手を重ねる。

わたくしのものよりも一回り以上小さなその手は、汗でしっとりと濡れていた。


「……OKってことでいいのか?」

「ええ。喜んで」


ユーリの手から滑りかけた花を受け取り、そっと胸に抱く。

太陽を思わせるような甘く香ばしい香りがした。

ユーリ、貴方を思わせる香りね。


「~~っ! よっしゃー!」


ユーリは跳ね回る。

ウサギのように、何度も、何度も。

そのあまりの無邪気さに、周囲で見守っていた大人達からも笑みが零れた。


わたくしも笑みを浮かべる。

その真意が決して暴かれることのないように。


これは叶わぬ恋。

この出来事も、互いの存在すらも、いつかは露のように消えていくのだと――そう思っていた。


あれから三十年。

わたくし達は今も愛し合っている。

死で分かたれてしまった今でさえも。




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