6話~さよなら、僕の日常!~
僕が教室に入ると、奏ちゃんは席に座っていた。休み時間に、奏ちゃんの使い魔――聖龍に聞いてみよう。
「おはよ!」僕の声を聞いて皆、僕を見てる――――その視線からは"負の感情"が籠められていた。
奏ちゃんは、それに気付いていないようでいつも通り。僕はその感情に気付かないフリをしていつも通りに席に着いた。
その人達からは舌打ちを聞こえてくるけど……僕は何もキコエナイ。……って魔法使えばいいんだ。早速、自分に消音魔法を掛けた。
―――もう、“神様のお願い”を聞いてあげないんだから! ばかあ!
奏ちゃんが僕に近づいてきたので、《サイレンサ》を解除させる。
「奏ちゃん? どうしたの?」負の感情を向けてた人達が静かになって奏ちゃんを見つめている。
「どうしたの? じゃ無いわよ!」――奏ちゃん、もしかして怒ってる?
奏ちゃんは、舌打ちをしてた人達に指さしをして睨んだ。
「貴方達もよ! はづちゃんを妬んで…っ!」奏ちゃんの周りの魔力が収束を始めてる。魔法でも使うの…って止めないと!
「奏ちゃん、ダメだよ」と言ってから、収束しかけている魔力を吸収する。
「はづちゃん……」奏ちゃんは僕の名前を言って、自分の席に戻った。
ふと、僕は“神様のお願い”を思い出す。―――知識からすると、もう少しで"日常"が崩れるんだよなあ。
天使と悪魔の戦いが此処で行われるのだ。僕が守らなければ、世界は崩壊してしまう…。――だから僕は。いや、僕だからこそ守るんだ。
ドアがガララッと開いて、先生が入ってくる。
「はーい。皆、席について!」と先生が、かけ声をかけると皆、席に座って静かになる。僕もかけ声と同時に座った。
「では、授業を始め………たいのですが、お知らせがあります」日常の崩壊が始まったのか。
「私達が住んでいる国――フランシーズ王国だという事はご存じですね。その王都の空に“穴”が開いているとの知らせがありました」
その事を聞いた生徒がザワザワと騒がしくなる―――が魔法で、喋っている生徒達を静かにさせる。
「その穴から、白い羽根を付けている人と黒い羽根を付けている人達が"降りて"きました。それで、その穴が消えるまで学校を休校とします。
皆さんは、家に帰って、大人達がその穴を消すまで祈っていてください」と先生は言うと、魔法を解いて教室から出ていった。
その話を聞いて、混乱している生徒達は帰りの支度をして急いで家に帰っていた。――僕と奏ちゃんを除いて。
奏ちゃんは心配そうな顔をしながら、僕に近づいてくる。
僕は、奏ちゃんが喋る前に、言う。
「大丈夫だよ。僕が日常を守って見せるから」と言って、力を"完全開放"させる。
僕は、そっと羽根を出す。―――羽根の数が増えていた。
前は、合計で4枚で純白だったのに、今は合計で12枚で色は虹色で頭の上には黄金の光輪が浮かんでいて、目の色は金色になっていた。
「はづちゃん…?」
「うん。完全開放させたから。これが僕の本当の姿…だと思う」
「見つかったらまずいんじゃない?」奏ちゃんは僕を心配してくれている。
「そうだね…。じゃあ帰ろう」僕は教室で奏ちゃんをお暇様抱っこをして、窓を魔力で割って飛んでいった。
――羽根から魔力が出ていて葉月が通った後は虹が掛っていたとか。
無事に家に着いた僕達は、奏ちゃんとその家族を僕の家に集めてこれからの事を話した。
奏ちゃんと僕の母さんには前もって言っておいたので、余計な混乱は起きなかった。
だけど、僕の力の"完全開放"を見せるのには戸惑った。―――結局、見せたんだけどね。他人には言えないという魔法をかけて。
僕は、切り株に座って夜空を見ていた。星がきれいだなあ…。僕は羽根を出して夜風に当たらせる。
完全開放してから羽根から魔力が常に出るようになったみたいだ。羽根から、チラチラと虹色の粉が風に舞っているのが見える。
そうそう、この姿になるとますます女っぽく見えて……。
―――さてと、大分前から僕を見てるみただけど…。
「僕をじっと見てても楽しくないと思うよ? 奏ちゃんと母さん」
「分かっちゃうんだね」と笑って奏ちゃんが出てきた。母さんは無言だった。
「まあね」と言って、僕は寂しく笑った。
「………この村は大丈夫だよ。僕が守護してるから」と奏ちゃんに向けて優しく微笑む。
「はづちゃん」と言って、何処かに走っていった。
母さんは僕に近づいてきた。
「何、母さん…?」母さんは僕を抱きしめてきた。―――僕は、温もりを守るんだ。 と心に決めてそれを感じながら僕は眠った。
葉月よ。私の代わりに世界を―――――。
―――――君に掛っている。
と神様の呟きが聞こえたような気がした。
この『6話』は、9月29日に完成したものです。
だんだん終幕に近づいてきました。
次回もお楽しみに。