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16話~ほんとうのきもち~
キスの感触を忘れるために僕は全速力で空を飛んでいた。
――しかしアレは何だったのだろうか。身体を奪われたような感じは。
「僕の本心なのか?」思いあたったのはあれが僕の本心ではないかという疑問。
「いやまさかそんなはずはない……はず」
「葉月どうかしたの?」
「うん、――ってなんで佳織が!?」
いきなりの事で困惑する僕を見て佳織は微笑んでいた。
「それは、葉月が……って、何を言わせようとしてるのよっ!」
「ちょっと、今のは痛いって。叩かないで!」佳織は無意識のうちに力をほぼ全力注いで僕を叩く。
「もうっ、知らない!」と言いながら顔をそむける佳織。
心なしか頬が赤いような気がするのは夕焼けのせいなのか。
「冗談だよ。ごめん」本当は分かってる。佳織が僕に向けている好意も。
僕はその気持ちに気づかないふりをしてたんだ。臆病になりすぎてたんだ――それが一番悪いことだと知りながら。
だから僕はもう逃げたりしない。
「僕は、佳織が好きだっ!」