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また、装填や射撃がしやすい猟銃ができると、狩猟がより便利になった。それは同時に、地位の高さを見せつける手段にも繋がった。
「ハンティングドッグは、銃器の進歩に合わせて作られた。射撃の快楽を、より味わえるように。身体が大きくなるように改良された犬種が多く見受けられるのは、素早く獲物を追い詰められるようにするためでもある。そして、時代遅れの銃が用無しになるのに合わせて、それまで人気だった犬の価値もなくなっていった」
どの狩猟スタイルが人気かによって、猟犬の改良は素早く進んだ。ところが銃の開発が先を行き、結局は犬の力を借りる必要はないという考えが強くなっていった。
「犬の能力はテクノロジーに敗れた、ということ。刺激を求め続けたハンター達にとって、猟犬を使うハンティングは、もはや物足りなくなった」
しかし、歴史は繰り返されていく。猟犬と共にある狩猟を懐かしむ人が現れると、狩りをする時間は、再び緩やかなものになり始めた。多くを仕留めるのではなく、少数の獲物をじっくりと狙う手法が蘇ったのだと、講師は説く。
「何故帰ってきたのか。それは、執拗に同じ行動を取る犬――ポインターが理由だった。彼等は、狙うべき方向を飼い主に的確に伝えられる能力がある。獲物を前にした時、機械的に動きを止められる力が魅力的だとされた。そして、その様な犬を所有していることは、飼い主自身の趣味のよさ、優れた感覚、我慢強さの証明に繋げられた」
とはいえ、デメリットもあった。その犬種は神経質で、驚きやすく、飛び上がるのもしばしばだった。よって、獲物に向かって硬くポーズしてしまうのは、そうすることで落ち着けるからだとも言われている。
「どんなに触れてもフリーズ状態にるのは、まるで強硬症のよう。だけどそれは、儀式的なハンティングをするハンター達が望んだ、枠に当てはめたスタイル故のもの」
その犬の行動は現代でも、“見られる存在”として保たれている。撮影されることが多くなった“動かない状態”は、景観を乱さない、静的で従順さがある点で、裕福層を特に魅了した。より目を惹くために拡散するという行為は、狩猟よりもすっかり重要になっていった。
富裕層に焦点を当てたところで、講師は、そうではない庶民の猟師にも触れ始める。
庶民の中にも、間違いなく腕のいい猟師と猟犬がいた。彼等が連れている有能な犬達は、粗野で、洗練されていない卑しいもの、と言われてきた。そのように、教養ある人達には嫌われがちだが、強靭さや狡猾さがしっかり備わっていた。
「純血種ではない、何でもない呼ばわりされてきた犬達が、現代まで生き残っているのは、そのよさを主張してきた人達がいたから。知力や体力が優れている雑種犬もまたいるのだと、訴え続けることを惜しまなかった」
彼等は、食料を得ることを目的に狩りをして生きてきた。ところが、高い階級にある人々の、これが最良だと信じていた行いのせいで、迫害を受けることもあったのだと、講師は強く語る。
「雑種犬が優れていると耳にしたならば、その存在を撃ち消そうと広まった。“そのようなことが有り得るならば、こちらは最高級を上回る犬を作るまで。たとえ雑種犬にその能力があると認められても、その飼い主にとっては、特に利益にならないだろう”と」
それでも、庶民の猟師達は、異議を唱え続けた。そして、狩りの経験が豊富な医師を振り向かせることに成功した。
その医師は、自身の主張を裏付けるために、どこにでもいる1匹の犬を例に挙げた。
“由緒ある血統もなければ、訓練も受けていないにも関わらず、狩りにおいては飛びぬけて信頼できる。犬もまた、人のように、自ら力を身につけられるのだ”と。
その後、飼い主の血統こそが重要ではないのか、と問われる時がきた。講師は話しを止めると、使い終えた手元の資料を纏めては、さらに付け加える。
「処によっては、定められた場所で犬を散歩させなくてはならない。でも、そのルールを守っていても、時に、その犬と飼い主を白い目で見、挨拶もしない人がいる」
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