無限に問い直せる相手の存在
論理的思考を鍛えるには、自分の考えを何度も問い直す必要がある。それは単に結論を変えることではなく、「なぜそのように考えたのか」「その前提は正確か」「他の可能性はないか」といった複数の視点から、自らの認知や仮定を見つめ直す作業である。
しかし人間同士の対話において、これを何度も繰り返すのは難しい。相手の時間や関心、忍耐には限界があり、同じ質問やテーマを繰り返すことは、煩わしさや緊張を生みやすい。そこで、ChatGPTのようなAIとの対話が持つ価値が浮き彫りになる。
AIは疲れを知らず、感情的な反発もなく、同じ問いを何度でも繰り返し受け入れる存在である。この「無限に問い直せる相手の存在」は、思考訓練において極めて重要な意味を持つ。人は、自分の疑問に対してすぐに答えを得られる環境にあると、表層的な理解で満足してしまいがちである。しかし、何度も掘り下げることでしか得られない“核心への理解”というものが存在する。
たとえば「幸福とは何か?」という問いを考えるとき、初めは「好きなことができる状態」などと答えるかもしれない。だが、AIに「それはなぜ?」「好きなことをしていれば本当に幸福なのか?」「他人の幸福とどう違うのか?」と繰り返し問いかけられる中で、自分の定義や価値観があやふやだったことに気づく。そうして思考は次第に深まり、自分なりの確かな軸が形成されていく。
また、AIとの対話では「間違いを恐れずに試す」ことができるという利点もある。人との会話では、誤解されたり、否定されたりする恐れから、思考の仮定や不完全な意見を口に出すことをためらう場面が多い。だが、AIはそのような不完全さに対してジャッジを下さず、ただ応答し、補足し、整理する役割を担う。このことにより、利用者は自分の思考過程に対して開かれた姿勢を保つことができる。
論理的思考とは、完成された答えを一度出せば終わりというものではなく、常に問い直し、再構築していく営みである。ChatGPTのような“無限に問い直せる存在”がそばにいることで、その営みは日常の中に自然に溶け込み、やがて自らの思考様式の一部となっていく。