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2話

 眩い光から解放され、目を開けるとどこかの街の路地裏に立っていた。すぐそこには大通りが通っているようであり、ある程度人通りがある。そこそこ大きめの街にスポーンしたようだ。

 大通りに出てみると、中立陣営らしく様々な種族が歩いているのが見える。特にエルフが多いのを見るに、ここは中立陣営の中でもエルフの国の街なのだろう。私自身もエルフなので馴染みやすくて都合が良い。


 「とりあえず、ご飯にしよう」


 ただでさえステータスが低いのに、その上「スタミナ低下lv5」のせいで余計腹が減るのが早い。とりあえず大通りにいくつか並んでいる屋台でご飯を買って食べなくては。


 がっつり肉を食らいたいので特にいい匂いを漂わせている串焼き屋台へ向かう。耳を見る限りはエルフっぽいのだが、ガタイが随分エルフらしくない威勢の良い店主のおっちゃんに声をかける。


 「おーい、おんちゃん。串焼きとりあえず3つくれぇ」


「おう、嬢ちゃん。一本200Gな。だから三本合わせたらいくらかな?」


 「600だろ!んなのわかるわ!馬鹿にしてるのかぁ!?」


「がははは!かしこいなぁ、嬢ちゃんわ。あいよ、こぼさんように食べろよ」


 「はいはい」


 そんな掛け合いをして、少し先に見える広場へと向かう。そこへ行けばいくつかベンチがあるはずだ。


 広場について、ベンチに座る。低いステータスと「スタミナ低下」のせいで短距離歩いただけど少し疲れてしまった。我慢できず途中追加で買った果実水を口に含んでのどを潤す。


 「ふぁあ・・・」


 魔道の探求のためにこんなステータスにしたのだが、予想以上の虚弱体質だ。先ほどの移動で体力を消費したせいで、腹の虫がデスボイスを出している。実際、hpも少し削れているっぽい。せっかくベータで一切デスせずに過ごしたのに正式サービス開始早々に飢渇で倒れたら笑えない。腹が欲するままに犯罪的な匂いを漂わせ、肉汁を滴らせた串焼きに思い切り齧り付いた。


 「んんん・・・!」


 一口齧り付けば、そこから甘い油が溢れてくる。塩と胡椒というシンプルな味付けだがそれがたまらない。この肉はエルフがよく家畜としているビッグカウという家畜の肉だろうが、こいつの肉の最高に甘くてうまいので、それを引ききたせるシンプルな味付けが一番なのだ。あっという間に一本食べ終えて、二本目を食らい始める。


 「うまぁ・・・それにしてもビッグカウの串焼きが一本200Gで食えるなんて、中立陣営の街でも結構北の方街なんじゃないか?ベータで仲の良かったNPCの司書さんが北の街の方がビッグカウの特産で、安くてうまいって言ってたしな。まあ、詳しくは街で情報収集すればいいか。この規模の街なら図書館もあるはずだ」


「___みゃぁああ」


 可愛らしい鳴き声が聞こえて見れば、マギが座るベンチの横に茶トラの猫がいた。その猫はマギが持つ串焼きの方を見て、騒がしく鳴き声を上げている。


 「お、ねこ。なんだ食うか?最後の一本なんだが、私は優しくて可愛いから恵んでやる。ほれ、よし食え」


 そう言って串から肉塊を一つ抜いて茶トラ猫に与えると、追いそうに食べ始めた。


 「ふふ、うまいか?それなら良かった。でも、その肉結構味濃いけど健康的に大丈夫なんだろうか」


 猫が食べ終わるころにはマギも串焼きを食べ終え、口に広がる肉の油を果実水で流し込んだ。


 「このニャンコロめ。腹減ったらまた私のところに来るといい、私は優しくて可愛くて天才だから恵んでやる。じゃあ___」


(世界への適合が完了いたしました。ステータス画面の通知機能を確認し詳細メッセージをご確認ください)


 そんな声が突然響いてきた。


 「ん?なんだ、ようわからん」


 そう言って一瞬驚きつつも茶トラ猫を撫で始めた。そうして猫を撫でながら、かっこよく指パッチンをしてステータス画面を開く。(実際は念じるだけで開く)そうして確認してみると運営からメッセージが来ているのが通知から確認できた。


 〖プレイヤーの皆さん、この度は「Be god」にご参加くださりありがとうございます。時間倍率に関してですが、現実に対して四倍ともともとは告知しておりましたが、現在は時間の倍率が現実に対して5000倍となっています。・・・〗


 (な、なにぃいいい!五千倍!?もともと四倍だったのが五千倍!?もとよりゲームの筐体にある身体保護機能を使って現実時間で一週間はぶっ通しでやろうと思ってたのに、めちゃくちゃプレイできるじゃん!さすがに倍率上げすぎじゃね?とは思うけど、そんぐらい上げないといつまでもクリアできないくらいの難易度なんかな?まあ、そういうの考え始めると冷めちゃう性分だから脳死で受け入れちゃえばよし!で、続きはと___)


 すると、突然広場や大通りにいる人の一部が突然半狂乱になったり、orzとなったり不思議な行動をしだす。突然の行動に正常なキャラクターとマギはドン引きである。大声で叫んで何かぶちぎれているものもいるが、動揺して騒ぐものの声が多く、入り混じっているので一体何を騒いでいるのか全く把握できない。


 「な、なんだ!?とりあえず、なんか・・・なんかやべぇ。なんかのイベントなのかわからないけどとりあえず離れよう!いくぞ猫!」


 そうして半狂乱の人々に驚いて威嚇していた猫を抱いて、マギは走り出した___


 「う”っ、おえっ___まだ、ま、周りがうるさいけど___いったん水分補給だ」


 雑魚ステータスと「スタミナ低下」を前に、100mちょい走っただけで死にかけているマギは、先ほど果実水を買った屋台で別の味の果実水を買った。先ほどは、マギ大好物のエルーラ(特に甘い桃みたいな味、エルフ領の特産)の果実水だったが、今回はレモン(そのまんまレモン)水である。


 「ふう___うまっ。よし、猫。とりあえず走るのは諦めて歩いてやばいやつらから離れるぞ」


「にゃああ」


 「それにしても、お前重いぞ。痩せろ、でぶっちょ」


「な”あ”あ”!」


 「これ、怒んな。マジレスは広い心で受け止めるのが大事なんだ」


 実際は、マギが虚弱すぎるだけである。


 そうしてしばらく猫を抱きかかえながら歩き続きけているのだが、どこへ行ってもやばいやつらがいるのである。初めよりは大人しくなったが、今はorz形態のやばいやつが多い。


 「なんなんだろうなぁ。このゲームNPCとPCの見分けがつかんから事情知ってそうなPCも見つけられんし。やばいやつらに近づきたくないし。ねこ、どうしような?」


「にゃ・・・」


 ねこはいつまでも抱きかかえられて迷惑そうである。


 「とりあえず、街の外にも出てみるか」


 大通りを歩き続けてしばらくして、街を囲う外壁にある門が見えてきたので街の外に出てみることにした。


 門に辿りつくと、門の脇に衛兵がいるのが見える。プレートアーマーに身を包んでいるが、獣人なのかヘルメットの形がとてもプリチーである。


 「こんにちは~。街で騒いでるのは、あれどうしたの?」


「あ、ああ___俺は騒ぎが起きてからずっとここにいたから、詳しくはわからないんだ。ただ、今は俺と事務所にいる二人以外の衛兵は街中駆けまくってるはずさ。嬢ちゃん、こんなだから一人は危ないよ。親が仕事でいないなら、とりあえず家に帰るか、騒ぎがある程度落ち着くまで衛兵の事務所にいるといいよ」


 「ふふっ、だいじょうぶ!わたしはこれでも魔術を使えるのだ!だからあのへんなやつらもちょちょいのちょいだよ。それにわたし、一旦街の外に行きたいんだ。街の外なら変な奴らもいないでしょ?」


「外もだめだ。騒いでる奴らは外にもいるんだ。今日はスラムの家無し共が突然活発になってるし、いろいろてんやわんやなんだ。衛兵のいない街の外は危険だからやめておきなさい」


 「んん、は~い。わかった」


「いい子だな。家まで事務所の奴に送ってくように言うから、ちょっと待ってなさい」


 「ありがとう」


 そうして衛兵は一瞬門の脇の事務所に引っ込んで、一人の衛兵を連れてきた。その衛兵はヘルメットをかぶっていないおかげで、特有のとがった耳がよく見えた。どうやらマギと同じエルフなようである。


「こんにちは、お嬢さん。お兄さんをおうちまで案内してくれるかな?」


 「んん。おうち行かない。図書館行く」


「図書館・・・?でも、入館許可証は持っているのかな?」


 「だいじょぶ、もってる」


「そうか、じゃあ一緒に図書館へ行こうか」


 「うん」


「図書館に行くのはいいが。冒険者ギルドの近くは避けるようにして行ってくれ。今日はずっと家無しが殺到してるらしい」


「ああ、わかったよ」


 獣人衛兵が言うには冒険者ギルドが今日は大人気らしい。それは確実にPCだろう。そしてNPCにPCは家無しと認識されているようである。スラムがどうこう言っていたし、スラムの人間を通称そう呼ぶのだろう。


 獣人衛兵と別れてエルフ衛兵と図書館へ向かう。家に帰れと言われたが当然家などない。ただそこらのPC同様に家無しと呼ばれるのが嫌だったので図書館に行くことにしたのだ。図書館なら騒いでいる奴はいないだろうし、ベータ版と変わらなければ図書館は神によって書物の管理を任されて生まれた中立機関なのである。そのため図書館専属の兵が巡回しているので安全もある程度担保されている。だから図書館に行くことにしたのであった。

 図書館にはギルドで一定評価を得たり、金で買ったりして入館許可証を手に入れないと入れないのだが、マギは称号「司書の友」おかげで初めから入館許可証を持っているのだ。ベータ版で図書館に籠りまくって良かったマギは思うのだった。


 




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