第6話:魔法と謎の装備効果
その17:決戦
手下の全滅を知ったブラックTは、不気味な笑みを浮かべてモチ&イオを見る。
「我が力、一〇〇〇年前と同じと思うなよ…」
邪悪なオーラが漂い始めた。
「…って言われても、一〇〇〇年前の事なんか覚えてないけど」
「そうそう、何で俺たちを憎んでんのか知らないし」
動じないモチ&イオ。
「だまれガキ共。くらうがよい、闇黒火炎!」
ブラックTの手から黒い炎が飛んだ。
「あちあちあちっっ」
慌てて衣服に点いた火を手ではたき消す二人。
「火ならこっちだって使えるよ、炎系呪文!」
負けずにやり返すモチ。
「火と間違えて覚えちゃったけどまぁいいや、雷系呪文!」
後に続くイオ。
二人の魔法、直撃。
「…ふっ、そんなものは効かぬな」
などと言うブラックT、ヨロヨロしている。
「嘘つけ、ダメージ受けたくせに」
イオが言うと…
「気のせいだ」
…言い返すブラックT。
「かき氷にでもなるがいい、闇黒冷気!」
火傷だらけの手から、冷たい風が吹き出した。
「かき氷よりアイスの方が温度低いんだよ、氷系呪文!」
やり返すイオ。
「Y根さんの絶対零度の微笑って見た事ある? 水系呪文!」
続くモチ。
そんな調子でお互いに魔法のレパートリーを出し尽くした後には、力の差は歴然としていた。
「…ゼエゼエ…今日はこの辺で勘弁しておいてやろう…」
ズダボロになりながら、ブラックTが言った。
「待たんかいっ!」
逃げようとするその首根っこを、モチがむんずと掴む。
ズル~リッ
いきなり、ブラックTは脱皮した。
「うわっ!」
さすがにビビって手を離すモチ。
「ふはははははは! 馬鹿め、我が肉体は不死身なのだ、貴様等人間と違ってな」
無傷の身体となったブラックTが、勝ち誇ったように仁王立ちする。
しかし脱皮した際に服も一緒に脱げてしまったのですっぽんぽん
「きゃっ、やだっ」
両手で顔を覆うカジュちゃん。
でも指の隙間から、しっかり見てたりする…
「気色悪いもん見せんなっっ!」
イオは咄嗟に自分の腰に巻いていたセーターを投げつけた。
パサッ。
セーターはブラックTに当たり、その両袖が首に軽く巻き付いた。
「?」
ブラックTが笑うのをやめた直後…
うぞぞぞぞぞ!
突如、セーターが生き物のように動き出した。
「な…何だこれは…ぐはっ」
セーターは急速に形を変え、不気味な生物と化してブラックTを締め上げる。
「…も…モチ、あのセーター一体何っっ?」
投げたイオが一番びっくりしている。
「だから言ったろ、首には近付けるなって」
顔を引き攣らせながらモチが言う。
もはやどう見てもセーターではなくなった生物は、獲物をがっちり捕らえて離さない。
「…おのれ…小癪な道具を使いおって…」
脱皮して逃れようとするブラックTだが、四方八方からギュウギュウ締め付けられていては無理。
「…このままU川先生んとこへ送っちゃおっか?」
魔法対決で散らかった部屋の床に落ちていたホウキを拾い上げ、その柄でブラックTをツンツンと突付きながらカジュちゃんが言う。
U川先生の名を聞いた途端、ブラックTは青ざめた。
「やめろっ、あやつのところに行くくらいなら死んだ方がマシだっ」
必死に訴えるブラックT。
「頼むっ、このままトドメをさせ、殺してくれっ」
「でもお前、不死身なんだろ?」
困った顔でにモチが言う。
本当に不死身であるらしく、絶句するブラックT。
「あっ、そういえばU川先生、これが一番効くとか言ってたよな」
ふと思い出し、背負ったまま使われてなかった武器を手にするイオ。
「ひっ…そっそれはっっ…」
発泡スチロールの剣を見たブラックTの顔が、より一層青ざめた。
「そっか、そんな事言ってたな確か」
モチも武器を鞘から抜く。
顔面蒼白となったブラックTの耳元で、モチ&イオは刀身を合わせた。
キュシ、キュシ、キュシ…!
人の耳にも不快な、発泡スチロールが擦れ合う音。
「…………!!!」
相当なダメージとなったか、ブラックTは泡を吹いて動かなくなった。
「…死んだかな?」
ツンツンと剣先で突付いてみるモチ。
モチ 「で、どうするこれ?」
イオ 「土に埋める?」
カジュ 「焼却炉で燃やしちゃおっか?」
モチ 「燃えないゴミで出すとか…」
イオ 「大きいから粗大ゴミかも」
三人で相談していると…
「あ~ら、やったじゃなぁい?」
…いきなり現れるU川先生。
「でもこれじゃ箱詰めは無理でしょ~、トラック借りてくるからそれに積んじゃって」
スキップしながら駐車場へ向かうU川先生を見送る三人。
モチ 「…U川先生のとこへ行くのは嫌とか言ってたよね、こいつ…」
イオ 「うん、死んだ方がマシとか言ってた」
カジュ 「でも、死後なら別にいいんじゃない?」
そしてU川先生の指示のもと、謎の生物ぐるぐる巻き状態のブラックTをトラックの荷台へと積み込む三人なのでした…