一章:【能力戦闘】〜絶対的強者〜
更新は1週間以内に1話は出来るようにしたいです
巨狼の男との闘いを終えた悠は、適当に選んだ扉から隣の部屋に来ていた。
もしかしたら、人がいるかと思い、警戒しながら扉を開けたが、どうやら誰もいないようだ。
俺は、部屋を見渡してみるが前に居た部屋と同じで、扉が四つ、壁には武具、そして色は白で差は見られなかった。
よくよく考えてみるとこっちはさっきの【獣化】の男が居たであろう部屋なので、今は人の居ない可能性の方が高かったわけだが。
まあ、人が居ないのでは仕方ないと悠は次の部屋に移動しようと、扉を選び始めた。
ガチャリ! 悠が扉を選ぼうと周りを見渡していると、不意に一つの扉が開いた。
悠は音のした方に目を向けた。
そこには一人の少年が立っていた。
年齢は悠と同じくらいで、背は悠より高いが体格は同程度。服装は、黒いズボンに明らかに破いて無理矢理長袖から半袖にしたYシャツで、シャツの裾をズボンから出している砕けた格好をしていた。端正な顔の造りをしていて、服装に気を使えばモテるだろう。
パッと見では、強そうには見えない。それが第一印象だった。
少年と眼が合った。
ブワッ!! 眼が合った瞬間、身体中から汗が吹き出た。無意識に左手がベルト部分に指し込んである《月下》に触れる。いつでも動けるよう、前傾姿勢になる。
「ストップ。 ストップ」
少年は今にも飛び掛りそうな悠を緊張感の欠片も無い声で止める。
「そんな警戒しないでさぁ」
ーーーー警戒? そこでようやく悠は自分が《月下》に触れていることに気付いた。
《月下》からは手を離す。それでも、警戒は解けなかった。それほど目の前の少年が危険だと、直感が告げている。
悠が警戒を解かないと感じたのか、待ちくたびれたのか、少年が話しかけてきた。
「まあ、いいよ。 取り敢えず今、闘う気は無いよ」
「何だと?」
「僕は初対面の人は必ず見逃す様にしてるから、今はそっちから仕掛けてこない限りは闘わないよ」
少年は軽い調子であっち行っていいよ、みたいな感じで手を振った。
見逃すと言われては、黙っていられなかった。
「お前、俺を舐めてるのか!」
「別にそんなつもりはないよ。 僕はただ、事実を言っているだけさ」
「俺がお前に勝てないとでも」
「勝てると思っているなら掛ってくればいい。 闘う気なら相手になるし」
まあ、こいつの言う通り、正直、勝てる気はしない。全力で戦っても十中八九死ぬ。例え勝ててもこの先は生き残れないだろうし。それじゃ勝てても意味がない。
悠は頭を抱える。
「なあ、何で初見は見逃すんだ?」
何だそんな事といった感じで「僕、最強だしさ」と少年は胸を張る。
「だけど、最強って暇なんだよ。 僕は強い相手と闘うのが好きなんだ。 だけど、相手になるような相手はいなくてさ。 だから、何ていうのかな未来の可能性に賭けるって感じで一度は見逃すんだ」
完全に強者の理論。ワガママだ。まあ、一度見逃すだけマシか。
「二度目は殺すのか?」
「勿論! 強者ってのは運も必要だからね。 強くなる前にまた、僕に会っちゃう様な運に見放された奴はもう強くなる可能性が無いんだよ」
目の前の少年は言葉は全て本音だろう。それぐらい眼を見れば判る。
ーーーーーーさて、どうする?
と言っても、答えは出ている。
闘わない!だ。
少年の上から目線は酌に触るけど、流石にここで死ぬ訳にはいかないからなぁ。
そうと決まれば長居は無用だ。
「じゃ、今は止めとく。 次が無いことを祈ってるわ」
そう言って悠は踵を返し、次の部屋に移動しようとする。
「出来れば僕の強さを感じとれるぐらい強い君とはもう一度会って、闘いたいけど、まあいいか。 うん、それじゃあねぇ〜〜」
気の抜けた声と供に足音が悠から離れていく。
悠はやっと警戒を解く。
そこで気付いた。
あれっ、そういえば・・・・・・。
悠は振り返る。
「ちょっと待った」
その声に、怪訝な顔をしながら少年が振り返る。
「何?」
「そういえば、名前を聞いていなかったな、と思ってさ」
「ああ、そういえば」
多少、今更感が拭えないが聞いといた方が今後に便利だろう。
「俺の名前は御堂悠だ!」
悠が名乗る。
「御堂悠」と少年が名前を吟味するように呟く。
「うん。 憶えたよ。 それじゃ僕の名前は・・・・・・」
そこで少年は真っ直ぐに悠の眼を見た。
「・・・・・・神内、・・・・・・神内天魔だよ」
そう言って、天魔は部屋から出ていった。
「神内天魔か。 出来ることなら二度と逢いたくないね」
悠はそう言いつつも、天魔ともう一度、逢うだろうことを予感していた。
そして、天魔とは、反対側の扉を開けた。
この時点で【能力戦闘】・・・・・・。
生存者は残り・・・・・・五十八人。
やっと名前あるキャラが登場!!
天魔はもう少し先でまた出てきます。
次回はまたバトルです。
後、2話か3話でヒロイン的なキャラが登場します。