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自重を知らない忘却の姫  作者: てじ
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進みが遅いです。ご了承ください。

朝から式典に出席するため忙しなく準備をしていると、北に存在する森に異変が生じた。

それから少しして森を巡回中の騎士達から魔物の発生の知らせが届く。

殿下には魔法具でその旨を伝え、私は森に向かい父上達には式典に向かってもらった。

元々他国からの使者の護衛のため前もって我が騎士団の者の半数は王宮に滞在しているため、少ない人数の中からヒューバートとダン、セルラを連れて森に入る。

魔物が目撃された場所の周辺にはすでに痕跡がなく、どうやら森の奥の方に姿を眩ませたみたいだ。

この森は奥に行けば行くほど魔物の気配を感じることが難しくなるため、なるべく手前の方で討伐したかったが気を引き締めて捜索しなければ。


「これから先は森の奥深くになる、気を抜くなよ」


だいぶ奥の方まで進んだ頃、茂みの中に狼の姿をした中型の魔物がいた。


「ウーバルっすね」


見た目は狼だが体長2メートルを越す大きさに、鋭く生えた牙と爪、大きさに反比例してすばしっこい上に風魔法を使う。

討伐危険度はCランクだが、魔法の使えないこの状況ではBランクに跳ね上がる。

抜刀しウーバルの動きを伺っているとこっちに気付いたのか風の刃を投げてきた。


「ここは魔法が使えない、気を付けろ」


「「「はい(へい)」」」


それぞれ攻撃を避け体制を整え攻撃に入る。

ダンとセルラは気付いていないが、茂みの奥に同個体が2体攻撃を伺っている。

まだまだ鍛錬が足らないな。

そんな事を考えながらユリウスはそうそうとウーバルを倒した。

他に魔物の気配がない事を確認し、倒した魔物を持って帰るための準備に取り掛かる。

ダンとセルラが言い合いをしているが、いつもの事だと無視していると不意に上から笑い声が聞こえた。

見上げると少し離れた木の上に少女が座っていた。

自ずと皆が警戒態勢に入る。

こんな所に何故人がいる。


「君は誰だ。騎士以外の出入りは禁止されているはずだが、どうやって入った」


見るからに怪しい少女はくすくすと笑いながらこっちを見ている。

どう見ても平民には見えない上質なワンピースを見に纏い、なんの装備もせずこんな森の奥にどうやって入り込んだ。

さっきまで気配すら感じられなかった。

人に化ける魔物はいるが、この少女からは魔物の気配は全くしない。

人であることは間違いないが、どう考えてもおかし過ぎる。


「笑ってないできちんと答えなさい!何者ですか!」


他の者も奇妙さに気付いているのか、剣から手を離さずある程度の間合いをとっている。

その中でもセルラが少しずつ間合いを詰めよう動き出す。

それを手で制し再度少女に問う。


「もう一度聞く。君は誰だ。」


「私は・・・・通行人1ってところかしら」


少女は楽しげにくすくすと笑う。


「・・いい加減にしなさい!!答えないなら力尽くで答えさせるわよ!!」


耐えきれなくなったセルラが剣を抜き今にも飛び掛かろうとする。

それを止める前に少女が木から飛び降りる。


「すぐカッとなる性格だと早死にするわよ?ふふ」


「なっ!!」


「やめろセルラ」


完全に剣を抜いたセルラを再度手で制す。


「君は」


「アリシア。私の名前よ・・・・ユリウス・アルセーヌ様」


アリシアと名乗った少女の最後の言葉瞬時に他の者も警戒体制を強めた。


「そんなに警戒しなくても何もしないのに」


騎士が示す態度を前にしても変わらぬ態度をとる少女に更に違和感が募る。


「私を知っているなら、ここがどこかも知っているはず。騎士以外の立ち入りは禁止されているが、どうやってこんな奥まで入り込んだのか教えてくれないだろうか」


「ん〜教えるのはいいけど、タダで教えるのはつまらないと思わない?」


アリシアはユリウスに取引を持ちかける。


「貴方!そんな事を言える立場とでも思っているの!!ユリウス様!今すぐに捕縛の許可を!!」


セルラがアリシアに今すぐにでも動ける体制で食ってかかる。


「あら?どうして私が貴方達より立場が下だと思うの?」


「何を」


「後ろが無防備よ?ふふ」


「「「「!?」」」」


いつの間にかアリシアはセルラの真後ろに移動していた。

誰も、この中で一番の実力を持つユリウスですらその動きを追えなかった。


(転移・・・)


この行動にさすがのユリウスも剣を抜く。


「何者だ」


先ほどと変わり射貫かんんばかりの視線をアリシアに向ける。


「別に何者でもないわ、ただのアリシアよ?」


「ふざけてるの?!」


「聞かれたから答えただけなのに」


呑気な少女と緊張感漂う騎士。

とてもカオスな状況だ。


「セルラ、お前はもう下がっとけ」


「ヒューバートさん!?」


今まで状況を黙って見ていたヒューバートが、アリシアに一番近いセルラに指示を出すしユリウスに視線を向ける。

この少女がただ者でないことは分かりきっている。


「・・どうしたら教える気になる」


このままじゃ拉致が開かないと思ったユリウスが口を開く。

回答次第では実力行使で答えさせるしかない。

そう思いながら少女の言葉を待つ。

一方少女は、その言葉にくすりと笑みを浮かべる。


「美味しいご飯が食べたいの」


「・・・・・」


思わず沈黙がその場を支配する。


「何それ・・・」


思わずセルラの口から漏れる。


「腹が減っているのか」


あまりにも予想外の回答に毒気が抜ける。


「朝ごはん食べずに来ちゃったの、だめ?」


「・・・・・良いだろう」


「ユリウス様!」


「坊ちゃん!」


ユリウスの言葉に笑顔のアリシアと驚愕の表情を浮かべたセルラとダン。


「ただし、怪しい行動を少しでも取れば君を捕らえる」


完全に警戒心を解いたわけではないと示すために剣はそのまま手に握られていた。


「ええ、構わないわ」


まるで気にしていないといった様子で、さっきよりも嬉しそうに微笑む。


「怪しすぎます!今すぐにでも力尽くで聞くべきでは!?」


「そうっすよ!」


怪し過ぎるアリシアに未だに警戒心剥き出しの2人。


「お前らじゃ役不足だ」


「ヒューバート(さん)!!」


「この森にずっといるより一旦出ることが先決、話はその後だ」


この場で一番立場が上なのはユリウスだ。

そのユリウスの言葉は絶対である。


「アリシア嬢、ひとまずこの森を抜けるついて来てくれ」


2人が渋々ではあるが納得したのを見届けアリシアに向き直る。


「あら、話し合いは終わったのね」


そういうとアリシアは“パチン”と指を鳴らした。


「「「「!?」」」」


その瞬間、空間が歪み気付けば屋敷の近くにある森の入り口に突っ立ていた。


「嘘・・でしょ・・」


「転移魔法っ・・・」


「・・・ありえないっすよ・・・」


あまりの出来事にそれぞれ驚きを隠せないでいた。

そんな中ユリウスは無言でアリシアを見つめていた。


(さっきもそうだが・・・・この森で魔法は使えない・・・どういうことだ・・・・)


「何処でご飯を食べさせてくれるの?」


そんな皆んなの反応を他所にアリシアはユリウスに次を急かすのであった。



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