流れる汗と神経高速処理
戦闘開始から20分が経過して10分歩いて自宅に帰って来た。
咲からの第一声は「汗かく!」であった。
当然である。ほぼ冬のこの時期であっても。今までの寝ているだけのVRと違って、こっちはリアルで運動をしている。汗をかけば喉も乾くしお腹だって減る。運動不足もたたってか体の動きがぎこちない。
ハアハア言いながら深呼吸をしたあと、家に帰ってバタンキューで寝てしまった。ついでに熟睡である。データ的なHPはセーフで何とか勝ったものの。リアル体力は0になってしまったようである。相手が強すぎたのか、咲の運動不足なのかは本人のみぞ知る。と言ったところであろう。徒歩で歩いてバトルして家に帰るまでが遠足を今回地で言った形だ。
今回は初めてで新鮮だっただろうが、次回からは犬の散歩のように。同じところをグルグル歩くことになるはずだ。たまに別の道にそれたり駅に行ったりするだろうが。この姉妹二人のリアル運動能力は、ロボットのように一定の場所しか歩かない。
姫の研究はここからが本番である、データを元にして研究する。なお、咲と同等かそれ以下の体力なので無理に頑張っている。あとで熟睡すること受け合いである。
「ふむ、歩くだけで経験値が入るようにして。スタート地点を自宅に、これは良い。問題はゴール地点が同じということと、そのゴール地点まで行くのをダンジョン化して。帰るまでが遠足ですにするか? いや片道クエストにするのがやはりベターであろう……てことは」
などなど考えた頃には3時間を経過しており、咲はお昼寝から起床。あとはご飯を食べてお風呂に入って寝る。などをして今回のパート(?)は終了となった。
二次元的な感覚から三次元的な感覚になり、やることが増えたのか減ったのか微妙な所である。「リアル体力は考えてなかった」というのは天上院姫本人談。どこらへんでワードでスピリットしてるのだろうか?
翌日。
「うーん。そうなってくると、運動するゲームを研究する必要があるのかなあ~フィットネスとか」
「え、私歩くだけで疲れたんだけど」
30分歩いて腕を上下運動するだけで、カロリーはだいぶ消費されるのは目に見えている。たかが上下運動、されど上下運動である。
「まあ~やってることは【位置情報ゲーム】と【フィットネスゲーム】の複合だからあなあ。そこに【念ゲーム】が入ってくる、本来こっちがメインだ」
などと申しており、やることが3つあることになる。しかもリアル経験値不足でだ。
「これじゃあ運動神経が良い人に絶対勝てないじゃん~! あ~あ、100歩で加速世界で戦闘終わって次の冒険へ。てならないかなあ~」
などと咲が申しており。
「できないこともないぞ。要は神経高速処理じゃろ?」
などと姫が申しており。
「何それ……歩き通信加速?」
「じゃあ早速やってみようか」
「え、ちょ! ここ学校の登校時間……!」
「バーストスタート!」
ギュリュリュリュン……と、メガネ型MRゲーム機 《テンジョウ》は。途端に世界を超加速させた。
世界が静止したような感覚を持ってから咲の自我が目覚める、この感覚をどこか懐かしいと感じるのは何処かの子孫の遺伝子的配列なのだろうか? とか思ったところで。
咲は頭の中で思考する。
(え? 何これ体動かないんだけど、学校遅刻しちゃわない? 時計は動いてない、いや。感覚的に微妙に動いてるはずなんだけど、1秒たりとも針が動いてない。でも思考は動いている、どうなってるのこれ。混乱に混乱が重なって何がどうなってるのか解らない、お姉ちゃんを呼べば何とかしてくれるかな? お姉ちゃんを呼べば、お姉ちゃん、お姉ちゃん! お姉ちゃーん!)
『ほうほいほーい! 懐かしいなあ~、この空間って……で。どうする?100歩にする? 1000歩にする?』
今、咲と姫は電脳空間で二人で会話している。咲と姫の間の繋がった世界線に、1つの青白い空間が広がってその中で会話している。自分と相手と、その間の電脳空間。ネットのデータで持ってる知識ではここの加速度世界は。思考を1000倍に加速させる。
『それって……すれ違った相手と超加速空間でバトルして、終わってまた歩き出せる。って事でしょ?』
『そうじゃ』
『まあ、確かにそれやったら。楽そうだけど……計算めんどそう』
『ワシら計算してたか? それっぽければ良いんじゃよそれっぽければ』
『う~ん……』
『まあ、ここで入り浸ってたらまた面倒な事になるだろうからもう止めるぞ。せめて100歩か1000歩か、どっちが良いか答えてくれ』
『う~ん、じゃあ1000歩で10ポイント、それで色々出来るでしょ』
『おっけ~い、んじゃ切るぞ~』
『バーストゴール!』
ギュリュリュリュン……と、メガネ型MRゲーム機 《テンジョウ》は。途端に世界を日常に帰還させた。咲は突然の精神消耗にキリキリするが、やってることはフルダイブVRゲームと同じだったので。どうってことなかったが、立ち歩きしながらというのが何ともやりきれない難しさを覚えた。
「ふう……いきなりやんないでよ」
「メンゴメンゴ~~。あとはこれらを【皆で】できるようにしないとなあ~」
反省の色なしの姉である。
咲と姫の登校時間中の歩きダイブは、入ってから出てくるまで、ここまで1秒。姫の今までやって来た【業】から考えれば、比較的良心的な加速だった。
新作ゲームの試行錯誤は続く……。
フルダイブ型VRゲーム総合掲示板
中級冒険者【俺、今さっき加速世界の片鱗を味わってきました】
上級冒険者【そりゃ災難だったな。で、何年時間持ってかれた?】
中級冒険者【えっと8年ぐらいだな、もう考えたくもねえ】
初級冒険者【私初心者なんですけど、何が災難だったんです?】
上級冒険者【説明しよう。こいつは加速世界で8年入り浸ってたら、現実世界では8時間だったって話だ。軽い逆浦島太郎状態だぜ(軽くない】
初級冒険者【そんなこと可能なんですか? 怖くてゲームできないんですけど】
上級冒険者【運営がちゃんと管理してるゲームだったら、そんな事にはならないはずだ。てことは管理されてないアプリをインストールして遊んじゃったってわけ】
中級冒険者【つまり違法ゲームで遊んじゃったツケだな】
中級冒険者【そんなー(ショボーン】
上級冒険者【吸血鬼大戦の余波がこんな所に出ているとわな~】
あとがき
私の中では神経高速処理は、かなり昔のネタですね。およそ高校生ぐらいの頃だったような気がする。
(仮面ライダーカブト感