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テンジョウ~念を科学するRPG~

 ヤエザキと農林寿サンの試行錯誤は続く。

「これさあ、『自由に設定可能』じゃなくて。何パターンか考えてプレイヤーに委ねる方が良いんじゃない?」

『普通はそうなんじゃが、【ルールは破るもの】じゃからなあ。思いっきり規約をぶっ壊すプレイしそう……』

「それは自分のせいじゃ……、徐々にバージョンアップしていけばいいと思うよ」

『じゃな、とりあえず。プレイヤーの要望に応えてシステムがその文字数の中で自動クリエイトするといった感じかのう』

「じゃあ、さっきの設定をシステムにぶち込んで自動生成っと」


 レア度1『ヤエザキの長剣』10/10文字

 強靭・無敵・最強です


▼テキスト自動生成開始。


 レア度1『勇者ヤエザキの剣』10/10文字

 とても強そうな長剣。


 自動生成されたテキストがヤエザキの眼前に現れる。それはゲームのリアリティをある程度壊さないようにオブラートに包まれている文章になった。

「ふむ、だんだんこの世界のルールが解って来たわ。設定生成を楽しむゲームなのね、これ」

『でも、この装備だけで戦闘に入るのは……忍びないなあ。最初のスライムぐらいじゃったらこれぐらいで良いかもしれないが。装備枠を3個にするか、文字数を増やすか……』

「勇者の武器は1つの方が良いと思う。だから一般のアイテムは文字数10文字以内で固定で。勇者の武器は20文字から出来て、お得で強いとか……」

『なるほど、NPCの武器と差別化するためにNPCの文字数制限をすれば。バランスは取れるわけか』


 というわけで、一般NPCの武器の事も考えて練られた設定がこちら。

 一般NPCの武器。

 レア度1:10文字

 レア度2:20文字

 レア度3:40文字 

 勇者専用の武器。

 レア度1:40文字

 レア度2:80文字

 レア度3:160文字

 レア度4:320文字

 レア度5:640文字


「んで、プレイヤーの要望をシステムがこの世界観に合うように自動修正するシステムがいると」

『名称決めないとな。WSSワードスピリットシステムかな』

 ここで【勇者専用武器は1プレイヤー1個】というのが、なんとなく決まった。

 プレイヤーの要望に応えてシステムがその文字数の中で自動クリエイトする。も【テキスト自動修正】と名称が決まった。


 そこそこ時間が経ったあと。そこで、ふと物思いにふけった後。姉に結論を言う。

「ねえ、お姉ちゃん。今の流行に合わせるんじゃなくて。【自分の肌に合った】ゲームを作るべきじゃないかしら。お姉ちゃんの空想って、本来は夢と現実の融合でしょ?」

『回りくどいな、何が言いたいのじゃ?』

「コレ、て言うか。【ここから先】はARの方が良いと思う。拡張現実かくちょうげんじつ

『言うと思った、だがそれなら。MRのほうが肌に合ってるかもな』

「エムアール?」

複合現実ふくごうげんじつ:ミストリア・リアリティじゃ。現実空間と仮想空間を混合、ま【私達】の間で言うのなら。概念空間じゃな、それでゲームを作るってこと』

「概念ゲーム……」

『ま、どっちにしろ寝たきりゲームなんて。わしの本来の理想像じゃない。もう起きて良いぞ、今度は拡張現実で話をしよう』

 農林水サンはそう言うと。ヤエザキを現実世界へ引き戻した。


▼『ワードスピリット・オンライン』の世界からログアウトします。



 現実世界へ呼び戻された天上院咲は目を覚まし、瞼を半閉じから全開まで開ける。勿論自然体に。

「ふぁ~おはよ」

 VRゲーム機、MFC000。ミラーフォースコンバートオーズを名残り惜しそうに見つめる天上院姫。

「おはよ、フ。こいつともお別れか」

「?」

 そう言って未来のネコ型ロボットのごとく、後ろからパっと手のひらサイズの科学アイテムが飛び出してきた。見た目はメガネ型のそれと何ら変わらない。

「ほら、今度は拡張現実の世界へようこそ。なのじゃ」

 咲は、読者置いてきぼりになりそうな発言なのは解っているが。それでも言わずにはいられない。彼女は嘘が下手なのだ。する必要もない。

「それって『おーぐまー』とは別のものなの?」

「違うな。拡張現実は【現実世界にポリゴンを乗っけて拡張する】が、こいつは【概念世界にポリゴンを乗っけて拡張する】それが。複合現実、ミストリア・リアリティ。MRじゃ」

 科学用語連発でついて行けない咲は、若干の混乱をし始めたので。姫が補足する。

「簡単に言うと、つまりは。念・超能力じゃ」

「それは本当に科学なのだろうか?」

「実現可能ならそれは全て科学だろうさ、だからここでは。『念科学』とでも言っておこう。そうだな、そこらへん行くと。『ワードスピリット・オンライン』は。~念を科学するRPG~。とでも言えば楽しそうだな。フフフ」

 と、楽しそうに。己の自我を誇張する。

「拡張現実、ARは過去、あと数年・数十年すれば実現可能な科学だ。そんなものやったって【つまらない】、だからもうちょっと概念に寄り添ったゲームを作ってみたくなって来た。もちろん、現実でな」

 話が2段階ジャンプしたような気がするが。近未来SFゲームではありそうな話だなあぁ、と他人事のように考える咲。

 姫は、このメガネ型の科学道具を咲に手渡す。にこっと満面の笑みを浮かべて。

「で、こいつの名前どうしよっか?」

「『おーぐまー』さんってなんか熊さんと似てるよね? 大熊さんとか。だったら」

「…………ニヤリ」

「「テンジョウ!」」

 二人の声が重なった瞬間であった。

 あとがき

 VR=仮想現実、バーチャル・リアリティ。

 AR=拡張現実、オーグメンテッド・リアリティ。

 MR=複合現実、ミクスト・リアリティ。


 仮想も拡張も、今のこの姉妹にとっては遊び飽きたおもちゃに過ぎなかった。ということに気づいちゃったのです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゲームを作る話って新しいです。
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