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朝日くんとハーレムの夢

ハーレムを作りたい。


それが俺、南雲朝日のささやかすぎる夢だった。

きっかけは覚えていない。ただ、親父が複数の女性に囲まれている姿を見た時思ったのだ。


いいなあれ、と。

小さい頃の俺は今よりもっと単純で、世間知らずな美少年だった。



訂正しよう、美少年は言い過ぎた。道行く人々が振り返るようなイケメンだった。いや、俺が一声かけるだけで女性が失神するような絶世の美男子と言っても過言ではなかっただろう。

まさに神の落とし子だ。南雲朝日という少年はそれほどの逸材なのである。


まあこんなところでいいだろう。第一印象は大事だからな。

過去は常に美化されてゆくもの。誇張するに越したことはない。


たとえ俺がフツメンであろうとも、言わなければバレないのだ。

世の中はそういうふうにできている。



まあとにかくそんな親父の背中を見て育った俺は、たくさんの女の子に囲まれてみたいと思うようになったのだ。


ちなみに親父は現在消息不明である。

金は振り込まれているから生きてはいるようだが、時おり親父以外の口座からも振り込まれている事実からは目を背けていた。

金は多いに越したことはない。熟年ハーレムの末路など、若い俺には関係ない話だった。




ハーレムを夢見る俺は、幼馴染である麻宮双子とはことさら仲良く接していた。打算ありきじゃないかと言われるかもしれないが、そんなことはない。


俺もあいつらのことは好きだ。なんだかんだ長い付き合いでもあるし、単純にすごい美少女だ。

性格も嫌いじゃないが、なにより顔がいい。

世話焼きだったり甘やかしてくれるのは嬉しいが、二人はとにかく顔がいいのだ。


かわいい。本能が訴える美的観念に、抗える男がいるだろうか?

つまり打算ではなく100%下心である。悪いかよぅ、俺だって男の子なんだよぅ!



閑話休題。なんにせよ、俺の愛に優劣などない。

二人が望むハッピーエンドを俺が作り出してやるぜと中学までの俺はヤる気に満ちみちていたのである。

あ、ごめん。ミスった、やる気だった。そこは訂正させてほしい。



まあそんなわけで俺と麻宮双子が同じ高校へと進学し、一年経った春休み。長年の努力が実を結び、俺はとうとう彼女達から告白されることになったのだ。


普段仲の悪いあの二人が同時に同じ場所に俺を呼び出すなど、これはもう告白以外考えられない。


感無量だった。天にも昇る心地とはこのことか。

今は二人も仲が悪いが、俺の恋人ともなれば長年の誤解も溶けて、お互いが大好きな仲良し姉妹にジョブチェンジするだろう。


俺は鼻唄を歌い、口ではハレルヤを奏で、手は弛むことなく指パッチンを繰り出し、足は軽快なステップを刻みながら待ち合わせ場所に喜びを全身で表して向かうのだった。まさに有頂天の極みである。



ちなみに双子の間には長年の誤解もなにも、そんなものはない。

単純に仲が悪いだけであり、ついでにいえば誤解してたのは俺のほうだった。


ハーレムという夢がどれほど困難な道なのかを、俺はこれから思い知ることになるのである。







「朝日、遅いぞ」


「きてくれたんだね、朝日ちゃん」


待ち合わせ場所である公園には、既に二人が揃っていた。

ただ、二人の距離はかなり離れていた。ざっとみても5メートルは距離を取っている。


この二人がこれから俺の手で仲良し双子姉妹に変わっていくのだと思うと、自然とテンションも上がるというものだ。


「あー、待たせてごめんな。用事ってなんだ?俺への告白とかかな?」



俺は我慢ができない男だった。

上がりきったテンションのせいか、内心の声が思わず漏れてしまう。そんな俺を時雨は呆れた目で見ているし、氷雨は苦笑しながらも困ったような顔をしていた。


だがそんなことは二の次だ。

予想が今、確信に変わる。否定しないということはそういうことだ…そういうことだろ!!



テンションが天元突破してしまい、思わず二度つっこんでしまったが、構わない。

俺は二人からの言葉を、いまかいまかと待ち続けた。

だが何故か双子は黙りこんだまま何も喋ることがない。


我慢など放り投げていた俺は、たまらず口を開いてしまう。


「え、どしたの?二人で同時に俺に告白する、ギャルゲみたいなシチュエーションじゃないのこれ?俺、早く二次元主人公の気分味わいたいんだけど」


「お前、雰囲気とか場の空気って言葉を知ってるか?」


「なにそれおいしいの」


俺は正直な男でもある。

包み隠さず話したら、今度は時雨からゴミを見るような目で見られた。何故だ。


「えーと、そこまで気付いてるなら朝日ちゃんのほうから告白してほしいかなって…」


氷雨が時雨をフォローするなんて珍しい。

いつもは姉の足を引っ張ることを最優先に考えているのに。

だが言われてみれば、氷雨の言うことももっともだ。


女の子は男からの告白を待つものらしい。

恋する乙女はいじらしいということか。


俺はそんなかわいらしい想いを秘めた子が不良や教師に寝取られるシチュエーションに興奮できる男だが、目の前で呆れた顔をしている幼馴染達の想いを無下にできるほどクズではない。


その想いに答えようと、俺は二人をまっすぐ見据えて声を上げた。


「俺は二人が好きだ!俺と付き合ってくれ!そして俺のハーレムに入ってくれ!!」


子供の頃からの夢。なにひとつ偽りのない純粋な俺の願い。

俺はあますことなく本心の全てを二人にぶつけた。

二人もきっと俺の想いに応えてくれる。



そう信じてたのに。




「は?寝言は寝て言え。ハーレムとかクズかお前は」



「いくら朝日ちゃんが最低な人でも受け入れるつもりだったけど、最初からハーレム宣言とか…ふふっ、なに言ってるのかな、朝日ちゃんは♪」



…あれれー?おかしいぞー



二人はクズを見る目で俺を見ていた。

ブクマありがとうございます


今回は主人公の過去話でした

主人公はゲスいわけではありません。嘘です

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