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ふたりぼっち

 朝目が覚めると隣で横になっている死神の服装の色は、全ての光を吸収するか如く、真っ黒な色に変化していた。それでも色が変化している場所は装いだけ。きっとまだ、もう少しくらい時間はあるだろう。

 今までしてきたように伸びをする。背中に痛みを感じる事はなかった。

 朝食を運んできてくれた看護士さんに痛みがないことを告げると、驚いた顔をした後、仮眠をしていたと思われる髪の毛がぼさぼさになっている担当医を連れてきてくれた。

 触診をしてもらった後、午前中にレントゲンを撮ってくれることとなった。

 いざ冷めた朝食を食べようとすると、もうデザートのゼリーはなくなっていた。


 レントゲンで写し出された僕の背骨は完治していた。医者曰く早すぎるらしい。

 健康人を寝かせておくベットはないらしくすぐさま退院の手続きに入った。

 おっさんに連絡すると親のように喜んでくれた。


 解放されたのは16時、ちょっとだけ速く終わるかと期待していたがそんなことはなかった。

 退院祝いと称して僕は一人でザギンに高級な焼き肉を食べに行くことにした。正確にはふたりで。

 受付で2名でと言ったら怪訝そうな顔で後から合流予定ですかと尋ねられた。そう言う事にしてもらい、2名用の個室に通してもらった。

 スタートセットと称された肉や野菜が運ばれてきた。

 追加で注文をするにはこれらを食べきらないといけないらしい。

 彼女もその旨を理解したのか、肉を手際よく焼き始めた。追加注文にはデザートが含まれている。

 それでも彼女は肉や野菜は食べたくはないらしく、僕に食べることを強要するかの如く、僕の皿に乗っけてきた。

 20分くらい彼女が焼き僕が食べるを繰り返すと、それらは無くなった。

 すぐさま彼女は注文用の端末巧みに操り、僕の分の肉とデザートを注文した。

 肉とデザートを運んできた店員さんの僕を見る瞳は光が灯っていなかった気がした。


 2時間、僕は肉を食べ彼女はデザートを食べた。

 料金は1人分となっていたので諭吉を払った僕に返還された野口3枚はレジ横の募金箱に入れておいた。


 2人でカンダ川を歩いていると、彼女は僕に向けて時間ですと言った。


「そっか、楽しかったよ」


 彼女の目を見てそう言うと意外な返事がきた。


「私もです」


 詰まんないかと思っていたけれど、それは良かった。

 手を差し伸べて見ると彼女は僕に抱き着いてきた。

 僕の体が光の粒へと変わっていく。きっと今僕は普通の人がしない体験をしているのだろう。

 目を瞑り、彼女の耳元で囁いた。


「またね」


 彼女は僕の耳元で意外な言葉を発した。


「またはないんですよ」


 瞑った目を開けると彼女の体も光へと変化していっている。

 彼女は涙を零していた。

 でもそれは僕には拭く事さえできない涙だった。


「私は貴方だけの死神なのですよ」


 その言葉を最後にして僕たちは完全に光へと変わり大気へと溶けた。


 周囲の人間は人1人が消えたことに気付く様子はない、ただ夜空を映すカンダ川が星空へと昇る光の粒を映していた。


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