使い捨てフィルムカメラ
出会った時は真っ白い色だった死神は今はもう灰色になっている。
ただ死神も死神で器用なもので、身に纏っている衣服だけを灰色にしている。
肌はまだ白いままだ。
トーキョーの街並みを歩いていそうだ。
真っ黒い死神らしさ溢れる彼女も出来る事なら見てみたいものだ。
「今日は何する?」
隣で僕の朝食のデザートを食べている彼女に問いかける。小学生同士が長期に渡る休暇を遊び尽くす時、出会ってから考えるように。
「ケーキが食べたい」
「じゃ、売店行きますか」
「ん」
売店で栗が乗っているモンブランとチョコティラミス、バスクチーズケーキ、温かいお茶と鮭おにぎりを買った。
会計をしてくれた店員さんは流石に昨日とは違う人だった。同じ人だったら何か思われているのかと思いはしたが、それはきっと今も同じことなので思考を止めた。
今日も空は青々としていて、今日は中庭のベンチで食べようと思ったが、人がいたので昨日と同じく屋上に出た。
呑み込むようにケーキを食べている彼女を眺めていると目が合った。それでも恥じらうことはなく彼女はケーキを食べる手を止めなかった。
彼女の瞳は、人間の瞳を光沢紙にモノクロームで焼きつけられたように、白と黒に分かれていた。
まるで白と黒しか色のない世界の住人のようだ。
彼女を被写体に写真を取ればきっと良い写真が撮れるだろう。撮れるのならば。
「帰りまた売店寄っていい?」
彼女は唇に付いていたチョコクリームを手で拭って答えた。
「またケーキを買ってくれますか?」
1時間後、日向ぼっこを楽しんだ後、売店にいた。燃費の悪い死神は笑顔でケーキを選んでいた。
僕は彼女にバレないように先に使い捨てのフィルムカメラを買った。
彼女が選んだのは昨日も食べた苺のショートケーキとミルクレープ、チーズタルト。
段々と燃費が悪くなってきている気がする。
病室の椅子に座ったと同時に彼女はケーキを食べ始めた。
すかさず僕はフィルムカメラで彼女の写真を撮る。
現像はするつもりはないのでこのカメラのフィルムに彼女が映っているかは誰も知らない。
今日も昼食、夕食のデザートは彼女が食べた。
夕食を終えるといつの間にか彼女はパジャマ姿になっていた。パジャマの色も灰色だ。そしてそれは昨日売店で買った奴であった。
今日も手を繋いでいてもらおうと思っていたら、彼女はベットに乗っかってきて僕の脇に挟まる位置で掛け布団を被さった。
彼女の思惑は読めないが、彼女の鼓動と体温が伝わってきて心は段々と安心していった。




