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最高の目覚め

目が覚めると俺はまたあのベッドの上に寝ていた。

正確には「ベッドと思われるもの」の上だ。

今の俺は体が全く動かせない。眼球さえも。

もう何回目覚めたろうか。

目に映るのはひたすら真っ白な空間だ。

無味乾燥な何もない世界。音も。匂いも。

まばたきもできないのに、どうして寝ることができるのか不思議だが、それを言ったら呼吸していないのに生きているのも不思議だ。

…いや、ひょっとしたら俺はもう死んでいるのか?


最後に残っている記憶は自分の運転する車にトラックが突っ込んできたシーンだ。こういうシーンがスローモーションになるというのは本当なんだと思った。

大学のテニスサークルの帰りに、まだつきあい始めたばかりのミエちゃんを助手席に乗せて「晩御飯どうしようかー?」などと楽しく会話をしていた時だった。

ミエちゃんは無事だろうか…

衝突のシーンを何度も思い起こすが、トラックは運転席を直撃しているのでミエちゃんはきっと大丈夫だったろう。

そうえいば、ミエちゃんが作ってくれた「スペシャルスープ」は美味しかったな…


それにしても、この状態は一体何なのだろうか。

これが死後の世界なのだろうか。

もしこの状態がずっと続くのだとすれば自分は間違いなく天国ではなく地獄に来たということだろう。

だが、神様も閻魔様も話しかけてこない。

こんな世界が存在するのであればそこの管理者なり何なりが接触してくるはずだ。

しかし、誰も接触はしてこない。

ということは、俺はまだ天国にも地獄にも来ていないはずだ。

そう自分に言い聞かせた。

これも何度目だろう。


あれこれ考えているうちにまた寝てしまったらしい。

目覚めるとまた無味乾燥世界だった。

もし自分がまだ生きているのだとすればこれはいわゆる植物状態になってしまっているということではないだろうか。

現実世界で植物人間と化している自分の脳がずっとこのような夢を見ているという状態なのではないだろうか。

だとすると、何とかして現実世界で目覚める必要がある。

しかし、まったく体が動かせない状態で何をどうすればよいのか途方に暮れる。

当初、一生懸命体を動かそうと努力したが全く望みがなく諦めてしまった。

声を出すことも努力したが出来なかった。


また寝てしまった。

!?

寝てしまうまでの間隔が短くなってきていないか?

このまま「起きている」時間がどんどん短くなっていって最後に本当に目覚めなくなったらそれが「死」なのではないか?

まずい。

なんとかしなくて。なんとか…


その時、急に口の中に異物を感じた。

「モゴッ!?」

真っ白だった世界がゆっくりと色と形のある世界へと変わっていった。

俺は病院のベッドの上で寝ていた。

口の中にはスプーンらしきものが入っている。

「熱っ!」

口の中に熱々の液体が入っていた。

これのおかげで目覚めたのか?

目の前に泣きながら笑っているミエちゃんの顔があった。

「オカヤマくん…」

「み、みえひゃん…?」

「良かった…」


俺は将来この娘と結婚する予感がした。


ミエちゃんの傍らに看護師さんが立っていた。

「いや、ハラハラしました…ミエさんがどうしても自分の作ったスープをオカヤマさんに食べさせたいと仰って、人工呼吸器を外して無理やり流し込むものですから…」


いやいや、止めるだろう、普通。

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