005:ギルドあるある
今日の一行日記:みんな〜、道を開けろ〜!クマが通るぞ!
※※※
「クマ、ここが冒険者ギルドだ。ギルマスに話してお前の身分証がわりに冒険者カードをつくってもらおうと思う」
「わかった!でもこの建物はホル君の屋敷くらい大きいね?」
確かに建物の大きさとしてはホルスの屋敷と同じくらいかもしれない。
それはホルスがあまり大きな屋敷が苦手な事と、彼の屋敷の庭と呼ばれる範囲の大きさのせいである。
彼の屋敷の裏には山があり、少し登ったところに洞窟型のダンジョンがある。
ダンジョンマスターがこの辺境の守護獣ともなっており、かの守護獣に認められないと領主にはなれない。
守護獣は認めた領主に自らテイムされ、呼び出せる様になる。
かつてこの領地において、モンスターパレードと呼ばれるダンジョン内のモンスターの間引きを怠った為に起こる人災に俺とホルスのパーティは参加し、俺かホルスのどちらかを主人として認めると言われ、ホルスを選ばせた。
まあ、俺は二人のことを知っていたから、その下準備だったんだけど。
まあ、今ではホルスがこの辺境を冒険者の街にしようと考え、私兵の訓練場や冒険者ギルドと結託して新人教育の場として活用している。
たまにホルスもソロで挑んでいる様で、ようやく40階(55階層ある)まで行ける様になったらしい。
…と、話はそれたがそんなホルスの小さな屋敷程度の大きさの冒険者ギルドだが、中は随分と賑やかだ。
綺麗な内装に依頼を受け付けるボードの前にはたくさんの冒険者が並んでいる。
ボードの反対側では夜間依頼を終えたのか中年冒険者が昼間から飲んでいる。
一部の冒険者が俺の登場に騒つくがそれも収まり、どちらかというとクマに興味が向いている。
それでもクマは気にした様子はないのでそのままカウンターまでまっすぐ歩く。
一応俺はそれらを横目に見ながら空いている受け付けの少年に声をかける。
「すまない、少しいいかな?」
「いらっしゃいませ。あ、クラミチさん^_^」
彼は憧れの人に出会ったかの様なキラキラした目で俺を見てくる。
しかし、残念ながら俺の中で彼の様な少年と面識はない。
「すまない、初対面だよね?」
「はい、自分アルビダギルドマスターの弟、コロンです!」
「・・・え?アルビダに弟いたんだ。君は姉とは性格が全然違うね」
「はは、よく言われます。それで、今日はそういったご用で?」
「知り合いの子の冒険者カードを作りたいのと、アルビダに話がある」
そこ言葉にカウンターの多くにいた女性達が顔を見合わせ、黄色い聞こえをあげる。
「・・・」
「コロン?」
「おっと、すみません。放心してしまいました。わかりました。姉を読んできます」
そういって彼は上の階へと上がっていった。
ーーーとっとと、グシャ
「ぎゃあああああ!」
「あ、ごめんなさい!」
変な音が聞こえ、謝罪したほうの声には聞き覚えがあった。
「大丈夫?(ごきっ!)」
「ぐぁああああ」
振り返るとそこには、あらぬ方向にあしが曲がった冒険者を力でなおすクマの姿とそれによって悲鳴あげる冒険者一人遠同じ仲間なのかクマの前に立つ。
「おいおい、姉ちゃん。やってくれるじゃないの」
「これどう見ても折れちゃっているよね?」
「でも、その人が足を出してきたからで…」
クマは本当に折った負い目からか強くいえない。
あの様子、おそらく常習犯デーだろう。
俺は彼らの下まで歩き、クマの頭に手を乗せる。
「く、クラミチ〜」
「安心しろ、お前は悪くない」
そういって俺はクマの前に立った。