003:ホルス
一言日記:今日もまた黒歴史がまた一ページ追加されてしまった。
※※※
起きると、そこは見慣れないが知っている天井。
「・・・ここは」
「その通り、僕の屋敷の中だよ。何か僕に伝えることはあるかい?」
窓際で本を片手に涼む爽やかイケメンは俺の親友、ホルス。
「ホルス、僕は親友のクマが亜人に進化して、メスだったことを知るという恐ろしい夢を見たようだ」
「・・・なるほど、彼女はクマ君なわけか」
俺がそういうとホルスは苦笑い気味に僕のおなかの方を見る。
「クラミチ、ずっといっしょ・・・」
「・・・夢じゃなかったか」
そこには俺に抱き着き、気持ちよさそうに眠るクマの姿があった。
だが、その姿は気絶する前と少し違う。
「これが噂に聞く、半獣人か」
亜人となった生き物は、人型又は元の姿を保つのに多少エネルギーを消費するようになる。
それを極限まで減らすのがこの半獣人モードなのだ。
頭にはかわいらしい丸い耳に、クマには見えないかわいらしいふさふさのしっぽ。
「クラミチ~、どこ~」
彼女は悲しそうな顔で寝ぼけながら僕の上半身へとよじ登ってくる。
「・・・ここにいるよ」
俺はそう言って彼女の頭をそっとなでる。
「ふにゃぁ・・・」
まるで猫のようなかわいらしい声を上げながから彼女は俺の肩の上で再び寝息を立てる。
「このなつき具合は、クマとみてもいいようだな。僕の鑑定もそう示しているが、亜人。それも動物からの亜人など聞いたことがなかったものでな」
そういったホルスはどこかうれしそうだ。
「まあ、君の面白いところが見れただけでも僕は大満足さ。これを姫さんや騎士団長、魔女様に言ったらどうなるかな・・・?」
「なッ・・・!?ばかっ、それはシャレにならん!」
俺が焦るとホルスはとてもうれしそうに笑う。
「でももう、聖女さんあたりが神託で何か聞いているんじゃない?まあ、僕の恋愛相談の時散々笑った仕返しさ。おかげで、今や貴族さ。・・・まあ、君がこの地にいてくれるぶん、いろいろと助かって入るんだけどね」
彼は申し訳なさそうにこちらに笑うかけてくるので、俺はぶっきらぼうに「気にするな」としかいうことができなかった。
「クラミチの・・・照れ屋さん♪」
「うるさい・・・クマ!?起きてたのか」
どこからかわからないが話を聞いていた思われるクマが僕の頬を指で軽くぐりぐりと押しながらそういう。
「うん。ホルくん、おはよう。サーちゃんは?」
「サーシャなら、・・・ほらきたよ」
ドアがノックされてはいってきたのは金髪の碧眼のメイドさん。
しかしみるものが見れば彼女が並はずれた実力者であることがわかる。
「おや、起きましたか?」
「こんにちは、サーシャさん。朝早くに済みません」
サーシャさんはホルスの幼馴染で、ホルスの奥さんの一人だ。
彼女は笑いながら朝早くに衛兵に追われながら俺をお姫様抱っこして領主の屋敷に飛び込んできて「サーちゃん!ホルくん読んで!?」と言ってホルスを呼び出し、治療を施してくれたことを語った。
「ところで、何があったのですか?あなたが気絶なんて珍しい」
「そうだよ。僕も思った。クマくんに魔石をあげに行って何があったの?」
二人は心配そうにこちらに問いかけてくる。
「…魔物がいたんだ、鹿の。雷を操るやつで、まだ成り立てといった感じだった。これがその肉」
そういって俺は空間魔法から鹿肉を取り出す。
すると、サーシャの目が光った。
「さすがクラミチですね。魔力抜きは完璧で、繊維に傷がない。夜はこの肉を使ったものにしますね、旦那様」
「クマも解体手伝うよ!」
彼女達はそれを持って厨房へと下がって行った。
「悪いね、クラミチ。また単独で、魔物狩りさせて」
彼はいつもは堂々として、頼り甲斐のあるリーダーなのだが、俺の前ではこうやって弱々しくなる。
俺としてはホルスが潰れないように、ガス抜き役になるのは俺が彼の恋の背中を押すためとはいえ押し付けたのだから、甘んじて受け入れる。
俺たちは持ちつ持たれつの関係だ。
貴族として、この教国に置いてある一定の権力を持つ代わりに自由に制限のかかる彼の代わりに俺は彼の手の出しにくいことをやるのだ。
親友として…。