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012:挨拶(後編)

 

「ようこそ、亜人様。我々は貴方様にきてもらう日を心待ちにしていました」


 カーテンをはさみ、正面にいる教皇が声をけけた瞬間、風のが起こるはずない室内に風が吹く。

 その風は螺旋を描き、七聖典と教皇の目の前にあるカーテンを無理やり引きはがす。

 彼らはフードを深くかぶり顔は見えない。

 しかし彼らは俺の魔力に体を震わせ、放出していたスキルを無意識にオフにしてしまう。


「・・・クラ、その位にしたら?」


 クマの右斜め後ろに立っていたクラミチは光の声に発動させていた空間魔法:置換(魔力→風魔法)を消す。

 魔法は消したが、怒りによってあふれ出した魔力はいまだの周囲に残り、空気が重い。

 カーテンが外れ姿を見せた七聖典は全員がその場にへたり込んだ。


「・・・どういうつもりだ?」


 低い声で誰かにそう問いかけるクラミチ。

 少なくともその質問は目の前の教皇でもなければ、へたり込んでいる七聖典に向けられたものでもない。


「・・・十、九―――」


「「「「「「「申し訳ありませんでした、先生」」」」」」」


 クラミチがカウントダウンを始めると7色の神衣を纏った神官が現れる。

 3名の女性と4名の男性。

 彼らの登場に、俺は少し魔力放出の方向を全方位から7人へ変える。


「色々と術を施し、認識を捻じ曲げようとしたようだが逆に力で破り易くなっていた。俺相手に試すのはいいが、せめてダブルSのクマくらいだませるようなものを作れ。クマ、術が掛かっているの気づいたよな?」


「うん!」


「・・・はあ、だめだったね」


 今現れた7人こそほんとうの七聖典であり、彼らにふんしていたのは彼らの副官に当たる人物だ。

 クマは元気よくクラミチの問いに返事を返し、ヒカリは苦笑いをしていた。

 彼女がこの偽七聖典を知っていたのは知っている。


 なにせ、ヒカリもこの術式を組む時の一助をしたからだ。


 数が多すぎてうっすらとしか感じられなかったが、ヒカリ特有のスキルの波動を感じたからだ。

 こうなってくると、あの暗殺者たちもこれの準備のための時間稼ぎと監視ということだろうと考える。

 こういった頭脳系特価の司令官系スキルを保有する霊樹聖典の男と暗殺者たちをまとめる暗黒聖典の女性は申し訳なさそうに視線をそらす。


「はあ、・・・もう、許す。あ、ヒカリも手伝ったな?・・・はあ、シアは知っていたのか?」


「こんな大がかりな仕掛けは、予想はしてませんでした?」


「うん?予想していたのか?」


「ええ、みんなクラミチ様の弟子ですから」


 そう言ってクラミチが7人を見ると全員が照れたように顔を赤くする。


 事実、彼らが7聖典になったのは半年前だ。


 少しばかり神を軽んじ、欲におぼれかけていた老害を排除してみただけだ。

 この七人はその時俺が魔法の素質を見極め、極めさせ、背中を預けた大切な弟子であり、戦友だ。

 もっと言えば、もう一人。

 俺よりも容量が良く、頭もいい上に同じ地球の記憶を持つ転生者の仲間がいた。


 彼女は・・・


「だーれだ?」


「!」


 俺は驚いた。多くの戦場に立ち、並み居る権力者の送り込んできた暗殺者の気配すら勘づくほど、気配の感受性に優れた俺でも気づけなかった相手。


 それは一人しかない。


「・・・、おっと。まさか、また気づかなかった」


 声の主が後ろの飛びのいたのを感じたので振り返ると、そこにいたのはくの一のような格好の幼女がいた。


「フフ、驚いた?クラミチ」


 彼女こそ、この教国の現教皇。


「お久しぶりです。ガーネットさま」


 ガーネット姫である。




 ※※※




 俺から降りるとヒカリの影へと入るガーネット姫。

 ヒカリは先ほどから一言もしゃべらなかったのは俺の注意を他に向けるため。

 気づけばライトに背を向けるように立っており、姫様の持つ2つのスキルの一つ〈闇の極み〉の影移動により影と俺との距離がゼロになり、俺の背中に影ができていた。


 ガーネット姫はかつてそのスキルのせいで殺さされかけていたところを保護し、ひそかに守ってきた。


 彼女は転生者ゆえに大人びていて見た目よりずっと賢い。


「おまたせ、どう?」


 影から再び出てきた彼女は教皇の服を着ており、白いその服は彼女の銀髪と相まってとても神々しかった。


「クマは初めましてだから、自己紹介でもしようか。まずは・・・」


 かくして、本当の教皇と七聖典がそろい、顔合わせとあいさつを済ませた。


「挨拶も済んだし、そろそろお暇するぞ?」


「あ、まって。クラミチ」


 そろそろ帰ろうとするクラミチをガーネットは呼び止めた。


「ちょっと、お願いがあるの」


 その言葉に彼は『またかぁ…』と天を仰いだ。







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