ういうい、ゲームスタートなのだ(対ゾディアックファミリー編)
登場人物。
円、こっちの主人公ポジ。殺人鬼、とにかくやばい。
白頭巾、円の妹ポジ。殺人鬼、こいつもやばい。
殺人鬼連合。
シスト、リーダー。でも殺人鬼ではない。でも一番やばい。
タシイ、通称九相図の殺人鬼、ツインテールやばい。
目黒、通称殺人鬼眼球アルバム、おかっぱやばい。
ゾディアックファミリー。今回の敵。みんなやばい。
私達は、三人並んで鎖で縛られているのだ。
狭い室内、椅子に固定、手と足、そして胴体は、グルグル巻き。
ゲームの始まりは大体いつもこんな感じ。
遠くからの爆発音。
「始まったの、だ」
小さく呟く。
「・・・・・・お姉ちゃん、これからどうする、どうすればいい?」
右隣には白頭巾。
「この手錠、おもいっきりやれば外れそうだよ、でもこれは・・・・・・」
そして、左には・・・・・・。
「そうな、のだ、これ、三人同じ鎖で繋がってるのだ、てことは・・・・・・」
三人協力しなきゃ駄目なやつ、だ。
案の定、端に爆弾が付いてた。これは、一人が基準率錯誤で勝手な行動をしたら、他の二人も巻き添えなのだ。
この場合、各自の偏向が足を引っ張るのだ。
合同偏向、確認偏向、選択指示偏向、いっぱいある。
「お姉ちゃんに任せるよ、私は何を思っても口にしない」
「そうだね、円が指示しなよ、私は従うから」
二人が私の顔を見た。
これはこれで、駄目だと思うが、ここは信頼されてると捉える。
「分かったのだ、まず、鎖の巻かれ方に法則があるのだ、多分、白頭巾の方から動かして、連動してこちら側へ・・・・・・」
数十分後、何とか三人とも鎖を外し椅子から解放される。
「さて、次は・・・・・・」
扉の前には、樽が3つ。
表面には紙で文字が。
水、砂、空気と。
「これ、樽を爆発させて扉を開けろって事だ、でも、スイッチは一つ、チャンスは一回。このうちの一つが正解なの、だ」
それぞれに導火線が繋がれている。
スイッチは三つ、表示は樽の紙と同じ。
「砂や水は中身って事か。なら、砂ではないねー」
「お姉ちゃん、これは空気が一番なんじゃないの? あ、口出さないんだった」
そういうことなら答えはもう出てるのだ。
「みんな、柱の陰に行くのだ」
想定されていたかのように、身を隠す柱があった。
「中身が砂なら衝撃は吸収される、空気は圧縮される、逆に水は圧縮されにくく、中の爆弾の衝撃を伝え・・・・・・」
スイッチを押す。
樽を粉砕する爆発。
それにより扉が開いた。
さっきの爆発音はこれか、それとも最初に誰か勝手に行動してのものか。
扉は開いたが、まだ外ではなかった。
これ、こんなの何回かやらせる気なのだ。
思った通り、外に出るまで何度もあったのだ。
「お姉ちゃん、板は三枚だよ、これじゃ届かない、せめて後三枚ないと・・・・・・」
「いや、レシプロカル構造なら足りるのだ、三枚の先を中央で・・・・・・」
こうして。
順々に課題をクリアしていく。
「下のスイッチを同時に押せって書いてある。つり下がってるのは、ボーリングの玉、缶ジュース、冷蔵庫だ」
それぞれに紐が繋がれており、ハサミで切って落とす感じだ。
それでタイミングを計れって事なのだ。
「下まで、三十メートルってとこか、なら・・・・・・」
物が落ちる速度は、質量に関係なく同じ。
そして、この距離なら終端速度に達しないから、空気抵抗も無視。
「同時に紐を切るのだっ」
私達は掛け声と共に紐を同時に切った。
こんな事を繰り返しながら。
「やっと、外なの、だ」
外に出た私達が見た光景は。
ゴーストタウン。
廃墟となった街だったのだ。
剥き出しの錆びた鉄筋、割れたガラス。
ネズミの巣窟であろう寂れたビル。
コンクリートの隙間から延びる緑。
こういう場所は世界には結構あるのだ。
産業の失敗、戦争、大事故、などが主な原因。
本来、ここは閉鎖されていて人の気配はないはず。
だが、今は、うじゃうじゃ感じるのだ。
私達が、周囲を伺っていると。
「お、これは獲物じゃないねー」
「・・・・・・参加者か」
「ま、いいんじゃない? 女が三人、間違ったって事で」
私達の前に現れたのは。
青に黄色のラインが入った外套を纏う三人の男女。
「・・・・・・青と黄色の外套、うくく、いきなり見つけたのだ」
今回の私達の標的。
ゾディアックファミリー。
あっちから来てくれるなんてラッキーなのだ。
そもそも、なんでこんな事をしてるかと言うと。
時間は数日遡る。
私と白頭巾は、キラキラこと、殺人鬼連合のリーダー、シストに呼び出されたのだ。
奴らの溜まり場に足を踏み入れる。
「切り裂きさん、お疲れ様ですっ!!」
すでにあっちは全員集合。
キラキラとバール、目玉以外のメンバーが、私達に深々を頭を下げる。
「一体、なんなのだ・・・・・・」
やれやれと奥に進むと。
「んあ~、これが切り裂き? ただのちっせぇ女じゃねぇーか」
いや、頭を下げなかったのがもう一人いたのだ。
見ない顔、多分新入りか。
人数は同じだから、入れ替わりで補充されたっぽい。
オールバック、全身ひょろ長く、歯が所々抜け落ちてガタガタなのだ。
こいつは、威嚇しながら私の前に来た。
完全にいっちゃってる目で睨み付け、フラフラしている。
「・・・・・・お姉ちゃん、こいつ殺していい?」
隣の白頭巾がその態度に怒りを覚えたようで、スカートのポケットに手を入れた。
「あぁ? なんだ、このガキはっ、おお、やんのか、あ?」
男の視線が白頭巾に移る。
「まぁまぁ、どっちも落ち着くのだ・・・・・・」
私は冷静で大人だから、あれだ、二人を宥めるのだ。
「あぁああああああ? うるせぇよ、お前、あれだろが、あのドールコレクターの妹だったかなんか知らねぇが、俺には効かねぇぞ、そもそも、ドールコレクター自体、大した・・・・・・」
その一言で、私の臨界点が一気に振り切れる。
「あ? 今なんて言った?」
この時、すでにナイフは握っていたのだ。
後は、首目掛けて振り抜くだけだったのだが。
「おらぁああああああああああああああ」
その前に、突然、前にいた男が消えたのだ。
横に吹っ飛ぶ男。
代わりに前に立っていたのは。
「わりいな、切り裂き、こいつ、新入りなんだわ」
キラキラの妹で、九相図の殺人鬼こと、バール女タシイなのだ。
タシイが男の頭をバールで吹っ飛ばしたのか。
男は吹っ飛んだ先で呻いている。
「おい、てめぇー、切り裂きに詫びいれろやっ! 切り裂きはオネニー様の客人だぞ、失礼な事してんじゃねぇえええええええ」
男は、蹌踉めきながら身体を起こし、服からナイフを取り出す。
それを、目に突き刺すと抉り出す。
血だらけの眼球を手に、這いずりながら再び私の前に来た。
「あああ、す、すいません、こ、これで・・・・・・」
差し出される男の眼球。
だけど。
「いや、いらないのだ」
そんなもの差し出されても。
「きゃはははは、ばーか、ばーか」
男の様子に、同じメンバーの紅子が大笑いして。
「あ、いらないなら、アタシもらうー」
幹部の眼球アルバムがそう口にした。
「はいはい、早く本題に入りたいので、みんな戻って」
最奥で、手を叩きながら仕切り直したのが、今回私達を呼び出した張本人。
殺人鬼集団、殺人鬼連合のリーダー、シストなのだ。
女性よりも漂う色香、妹と同様、超美形の少年? なのだ。
こいつ自身は殺人鬼でもなんでもない。
だけど、みんなこいつには逆らわない。
うちのボスも、シストだけには一目置いているのだ。
「切り裂きさん、お呼び出てして申し訳ありませんでした。ですが、どうしても貴方に頼みたいことがありまして」
「・・・・・・頼み事?」
私は、こいつらにいくつか借りがあるのだ。
未熟だったときに、何度か助けられた。
だから、無下にはできない。
「・・・・・・一応、聞くのだ」
シストの話を要約すると。
今、自分達は、ゾディアックファミリーとかいう同じ殺人鬼集団と抗争している。
最近、メンバ―の一人が見せしめに酷い殺され方をされた。
報復しようにも、あちらの規模は大きく、拠点も遠い。
で、今回、お誂え向きのイベントが開催される。
ある国が、死刑囚、無生産者などを1カ所に集め、狩りの獲物にする。
参加者は、大金を払い、それに参加し、獲物を殺しまくれる。
つまり、金さえ出せば、合法的に人狩りができるのだ。
三人一組のチーム戦で、何人狩れるかの勝負。
獲物達は、後ろで手錠され逃げる事しかできない。ただしイベント終了まで生き残っていれば恩赦や賞金などが出るらしい。
そして、そのイベントに、今回、ゾディアックファミリーの面々が参加するとのこと。
「そこで、僕達もチームを組んで、これに参加することになりました。しかし、ゾディアックファミリーのメンバーは一人一人がとても狂気に満ちている。そうですね、例えるなら、全員が前にいたマーダーブリゲードのアリア・アクアマリンクラスといってもいいでしょう。なので、うちであのクラスに対抗できる人は残念ながら少ない」
「・・・・・・そこで、私達も参加しろって事か」
殺人鬼連合で、アリアレベルは、タシイと眼球アルバムくらいか。
「こっちで一つチームを作るので、そちらはそちらで一つお願いします」
ふむ、そっちがキラキラ、タシイ、眼球アルバムって事なのか。
なら、こっちは、私と白頭巾、あと一人・・・・・・。
「いっとくがレンレンはこんなのに出ないのだ、あれは極力自分は動かず、人を使うから、間違っても海外など行かないのだ」
「ええ、知ってます。それでも、お手数ですが、もう一人はそちらでご用意してくれればと・・・・・・」
キラキラはそう言うが、こっちに戦力になりそうな知り合いなど・・・・・・。
あぁ、一人いたのだ。
とっておきのが。
そんなこんなで、私達はゲームに参加する事となり。
そして、今、標的であるゾディアックファミリーのメンバーと対峙してるのだ。
「じゃあ、私、あの小さい女の子にする」
「ち、しゃーねー、じゃあ俺は、真ん中の金髪にすっか」
「おいおい、なに勝手に決めてんだ」
青い外套の三人が近づいてくる。
なるほど、こちらを獲物と見定めた瞬間、凄まじい殺気を出したのだ。
前の私ならただ怯えて後ずさっていたかも。
三人が、鉈やらナイフやらを取り出した。
このイベントでは銃の使用は禁止されている。
「子供は内臓が綺麗で最高なのよね」
「金髪は、どういたぶろう、まずは殺してから犯すか、犯してから殺すか」
「くそが、俺は残り物かよ、変なマスクしてっから、顔わかんねぇし」
ここで、こっちの仲間が動いたのだ。
私と白頭巾の前に立つ。
「あー、こいつら幹部連中じゃないね、なら手っ取り早く私がやるよー」
「そうか、なら頼むのだ、蛇師匠。私達は先にもう少し周りを見てくる、のだ」
「ラジャー」
兎の仮面、鍛え抜かれた筋肉は衣服の上からでも確認が容易。
この人なら、相手が誰であろうと関係ないのだ。
蛇師匠は、私達とは立ってるステージが違う。
彼女は殺人鬼キラー。どんな狂気も殺気も無意味。
圧倒的戦力で相手を叩き潰す。
「あぁ、キラキラから、ゾディアックファミリーの奴らは出来るだけ派手に惨たらしく殺してくれって頼まれてるのだ」
私がそう言った時には、蛇師匠はすでに臨戦態勢に入っており。
「そうなんだー、なら・・・・・・血も骨も臓器も、何もかもグチャグチャに混ぜちゃおうー」
その余りある闘気と死の香りに。
敵は言葉を失い、ついには恐怖を感じ始める。
それは阿鼻叫喚が始まる刹那の出来事。
ここで漸く。
ゲームスタートなのだ。
続き。蛇苺。色々あって円の師匠。殺し屋集団ハイレンズのボス。戦闘能力は作中最強クラス。ほぼ誰も勝てない。範馬勇〇郎みたいな人。