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うん、枕が欲しいですね。

 暖かい風。


 それを纏いながら街を歩く三人の少女達。


「悪いね、私事なのに」


「いいよ、いいよ、目黒ちゃんの頼みなら」


「そーっすよー、気にしないでください」


 ツインテール、おかっぱ、ポニーテール。


 二つ縛りの少女が一際その美貌で人の目を惹きつけ、おかっぱは目の周りが真っ黒、ポニーテールがつねに舌をベロベロなめづっている、それ以外は至って普通の三人組の少女。


「いやはや、うちのばあちゃんが引っかかるとはねえ」


「みんなそう思ってるよ、まさか、自分が、ってね」


「そうっすね、大抵、惨事ってのは他人事です」


 三人が話ながら向かう場所は。


 あるビルの六階、その一室。


「ここだね」


「そうだね、じゃあ、行きますか」


「紅子、今日も頑張りまーす」


 あらかじめ手にいれていた鍵でドアを開ける。


「まいどー、殺人鬼連合でーす」


扉を激しく蹴り上げ中へ押し入る。


「っ!?」


 中には六人の男達。


 皆、机の上で受話器を手に取っていた。


 こいつらはつねに警戒している。


 拠点も1、2ヶ月で変えるほど。


 警察の踏み込みに対してすぐに証拠を消せるようにも対策。


 だから、出来るだけ迅速に。


 されど可能なかぎりだけ惨たらしく・・・・・・。


 殺さなければならない。


「おらぁああああああああああああああああああ」


 ツインテールの持つバールが一番近くにいた男の頭にめり込む。


 まるで型にはまったようにバールがこめかみに収まり男は無言でそのまま倒れた。


「な、なんだ、お前っ、あぎゃああああああああああ」


 横から二人が素早く侵入。


 それぞれの得物が別の男達に突き刺さる。


 おかっぱの千枚通しが眼球に。


 ポニーテールのナイフが、喉に。


 その間も、ツインテールのバールは振り下ろされ続ける。


 突入してきたのは警察ではない。


 だからだろう、男達の判断が遅れた。


 対抗するか。


 逃げるのか。


 突如現れたのは女が三人。


 そうこうしているうちに。


血が机に飛び散る。


 窓に鮮血がこびり付く。


男達は逃げるべきだった。


 この三人は殺すことに一切躊躇がない。


 受話器に。


 パソコンに。

 

 手書きの電話マニュアル。


 どんどん赤に塗り替えられる。


 破壊、人体が、形を変える、景色が変わる。


「こんなもんかな」


「はぁー、すっきり」


「紅子、一応、顔の皮剥いでいくっす」


 男達は役所をかたって還付金詐欺を繰り返す詐欺グループ。


 その末端であるかけ子の六人は全員息絶えた。


 判別不可能なほどに潰された顔は、目玉が全てくり抜かれ、顔の皮は剥がされている。


 おかっぱの祖母を欺したのが彼らの運の尽き。


 本来、関わる事がない彼女達と繋がってしまった。


「証拠は山ほどあるから、後は深緑深層に匿名で教えてやればいいだろう」


「うんうん、勝手に処理してくれるよね」


「でも、カメラとか盗聴器とかバッチリっすけど、大丈夫っすかね」


 女達は白昼堂々、ビルに入り大暴れ。


 実際すぐ捕まりそうなもの。


「何言ってんだ、それ使ってここを割り出したんだろう、あいつが慈悲を見せるのは一般人だけだ。少しでも道を外れた奴なんて知った事ないだろうさ」


 それでなくとも、彼女達には大きな後ろ盾がある。


三人が返り血を浴びならが談笑していた、丁度別の場所では。



 こんにちは、シストです。


 今日は、一人で買い物に来ています。


 ちょっと、枕をね、変えようと思ってたんですよ。


 人の一生、大部分が睡眠です。


 なので、そこにはお金をかけていいと思うんですよね。


 すでに体重を分散するタイプのマットレスはあるので、今度はいい枕を。


ついでに色々見て回ろうかな。


 目的地まで歩いていると。


 背後にピタリと誰かに立たれた。


 背中に固い感触。


 銃か、ナイフか、いづれにせよ脅しの類い。


「殺人鬼連合のボスだな、声を出したら殺す、妙な動きをしても殺す。黙って指示に従ってもらう」


 そう囁く聞き慣れない男の声。


 僕は黙ってそれに頷く。


 一人の所を確実に狙われた感じかな。


 てことは、他のメンバーの動向を全てチェックしているのか。


 道路の近くへ誘導され、そこへ一台の車が停まった。


「乗れ」


 僕は大人しく後部座席に乗り込む。


 目隠しをされ、車はゆっくり走り出した。


 

 しばらく走行した後、僕はある場所に連れてこられていた。


「入れ」


 背中を押される。その際、目隠しは取られた。

 

 室内は光に慣れる必要のないほどの薄暗さ。


 中はかなり広い。元ショッピングモール。


 業績不振でテナントも埋まらず閉鎖した感じか。


 僕のいる場所はその中心で、階層をぶち抜いて上は吹き抜けになっていた。


「これから仲間を一人ずつ呼び出せ」


 一度は取られたスマホを投げて返される。


「余計な事を言った瞬間、お前を殺す」


 なるほど、そういう事か。


 基本、メンバーには単独行動を控えるように言っている。


 それは別にメンバー同士とは限らない。別に友達だろうが知り合いだろうが、一人になるなって意味だ。周囲に人さえいればいい。要は隙を見せるなって事。


 ただでさえうちのメンバーの警戒心は強い。


 だから簡単には狙えない。

 

「一人ずつ呼び出してどうするんです?」


「・・・・・・決まってるだろう、お前の目の前で殺していく」


 まぁ、それ以外ないだろうね。


 男がそういうと、二階、三階、さらに上の四階からぞろぞろと人影が現れる。


 全員黒いマスクをしていて、鉄パイプやバットを手に上からこちらを見下ろしていた。


 ざっと20人以上いるかな。


「こいつらは金さえ払えば何でもする連中だ、仲間が蹂躙されていく様をしっかり目に焼き付けろ」 


 男の言動からエントランスの上、そして男の近くにいる連中は仲間というよりこのために集められた雑兵か。よくこんなに集めたね。


「大体わかりました。他のメンバーでは警戒心が強くてなかなか手が出せないので一人でいた僕を狙ったわけですね」


「そういう事だ。それに、他を捕まえた所でお前は見捨てる可能性もある。だが、ボスであるお前なら他のメンバーものこのこやってくるだろう」


 確かにそうだね。タシイなら僕が呼んだら最優先で駆けつけるだろうし。


 その認識間違ってない。


 間違ってはないけど・・・・・・。


「一ついいですか?」


「なんだ」


 堪えていた笑いが少しだけ漏れる。


「なんでボスである僕が他のメンバーより簡単に捕まえられたんでしょうね」


「・・・・・・お前に危機感が足りないからだろう、実際、お前からは危険な臭いが全くしない。一般人そのものだ」


そりゃそうだよ。だって僕はこれまで誰も殺した事がない。一番まともで一番普通。


「もういい、さっさと誰でもいいから電話をかけろ。言っておくが全メンバーの動向はすでに把握している。お前を助けにくるものなどおらんぞ」


 メンバー達もそれぞれプライベートがあるからね。


 そりゃいつも一緒にいるわけではない。


「そうですか。メンバーがどこで何をしているか全部知っていると。だから誰もこの状況を分かってないと、そういう事ですね」


「だから、さっきからそう・・・・・・」


 確かに男の言う事が本当なら僕を助けにくるメンバーはいない。


 そう、メンバーはね。


「あああああああああああああああああああああああああああ」


 男の言葉を遮って、三階から人が落ちてきた。


 鈍い音が静寂を破る。


「なんだ!?」


 何が起こったか分からない目前の男。


「僕を助けるメンバーはいない。でも、他にもいるんですよ。それもとびっきりなのが」


 僕が男に言い放つ。


 それに伴い、周囲から一斉に別の気配が沸き立つ。


「シストきゅん。あぁ、シストきゅん。どうしたの、なんで、こんな事に、あぁ、シストきゅん、今日もいい、ああああ、近いね、鼓動も呼吸も聞こえそう」


 青と黄色の外套を纏った人物が僕の後ろにすっと現れた。


 人の皮を貼り合わせて作られたマスク。


 ゾディアックファミリー、ニルヴァーナ。


その人物に追随するように青を黄色がこの場を埋め尽くしていく。その数はあちら側を軽く越えていく。


「シストきゅん、なにされるの、でも他の人は駄目、だから、どうしよう、なにすればいい、どうしようか?」


「そうだね。あんまり人に見下ろされるのは好きじゃないかな」


「そうだね。そうだよ、じゃあ落とさなきゃっ! いますぐっ! おい、お前らぁあ」


 途中、急に変化した声色で指示を出す。


 それに答えて。


「ああああああああああああああああああああ」

「ぎゃあああああああああああああああああ」

「ひゃああああああああああああああああああ」


 二階、三階、四階、からどんどん人が落下してくる。


 まるで人の雨。


「なんだ、一体、お前ら・・・・・・」


 急に登場した青と黄色の外套集団に首謀者の男は驚きを隠せずにいた。


「じゃあ、僕はそろそろ帰りますね。買い物も途中なので」


 男を背に出口へ向かう。


「え、え、え、え、シストきゅん、これどうするの? どうしておけばいい?」


「あぁ、その男だけは生かしておいて、後は全員殺していいから」


「分かったよっ! 全員必ず、殺す、一人残らず、絶対っ! おい、ベアトリスっ!」


「はい」


 ニルヴァーナの声で、その後ろから出てきたのは。


 青と黄色のオッドアイ。髪も青と黄色で色分けされている。


 両手には長い二刀の鉈。


「このベアトリスはとても優秀。なんせ、二人いた知力と武力の役割、それを一人でこなす、うちの最高戦力」


「そうなんだ、まぁ後はよろしく」


 二人の間を通り過ぎ、僕は離れていく。


「おらぁあああああああああああ、お前らぁあああああああああああ、きっちり落とし前付けてやれぁあ、簡単に殺すな、少しずつ、ちょっとずつ、早く死にたいって、ヒューヒュー言いながら泣いて、叫んで、殺せ、抉れ、打ち付けられる、そんな、あああああああああああああああ」


 木霊する声、降りしきる人の雨の中。


 落ちてきた人の回りに青と黄色の外套が取り囲んでいく。


 絶叫が始める、これから、ここは屑殺場に。


 まだ脇は甘かったけど、一応僕を捕まえて他のメンバーの動向も探った事には一定の評価はしなければならない。これは単独では無理だろうから他にもいるね。


 それはあの男から聞くとして。


 とりあえず、僕はいい枕を吟味しようと思います。

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