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なんか、クリスマス争奪戦みたい。

こんにちは、シストです。

 殺人鬼連合のリーダーをしております。


 普段は僕がメンバーに色々指示を出すのですが・・・・・・。


「貴方達ー、今年こそはリョナ子ちゃんを、私達のパーティーに御招待するのよぉーっ!」


 僕を他所に、今メンバーの前で叫んでいるのは。


 史上最高レベルのレベルブレイカーで。

 食人血深泥殺人鬼、ヴァセライーター。

 

 僕とタシイの母さん。


 ちなみに、殺人鬼連合のメンバーではない。


 母さんの左右には、タシイと目黒ちゃんが立ってて、互いに厳しい顔を見せている。 


「おらぁ、お前ら、ちゃんと聞いてただろうなぁ!? 今、ママが言った通りだ、なにがなんでもリョナ子さんを連れてこいっ! 手段は問わない、ただ、傷一つつけるなよぉーー」


「・・・・・・でも他は何してもいいよ、邪魔する奴は皆殺しにしな」


 三人共殺気立ってるなぁ。

 ちょっと離れたここからでもビリビリ感じるよ。


「さぁ、散りなさい、必ずよ、今年こそはっ!」


 母さんが激を飛ばし。


「はいっ!」「おうっ!」「かしこまり」「任せてください!」


 殺人鬼連合の皆がそれに応えた。


 総勢11人。

 全員が異常すぎる殺人鬼達。


 今、その全てが一斉に動き出す。



 うう、リョナ子です。

 なんだか、今日は朝から変な視線が纏わり付くの。


 全身に悪寒がする。

 

 今日はクリスマスイブ。

 休日だったから、朝から予定を入れてたんだけど。


 日中は、殺菜ちゃんと買い物。

 夜は蓮華ちゃんとお食事。

 

 それで、予定通り、家を出て、駅で殺菜ちゃんと合流。

 買い物をしてたのだけど。


「なんだろう、この感じ・・・・・・」


 敵意とか悪意とかそんなのじゃない。

 ただ、嫌なものに見られてるような。


「ん、どうしたんすか? リョナッち、さっきから様子がおかしいっす」


「いや、なんでもないよ」


 隣を歩く殺菜ちゃんが心配そうに声をかけるも。

 確信のない以上、話す事はない。

 ただの気のせいかもしれないし。


 週末で、クリスマスイブ、街は人で溢れていた。

 

 溢れていたはず、なんだけど。


「・・・・・・あれ」


 路地を一本入ったら、一気に人の流れが無くなった。

 周囲には誰一人いない。


 おかしい。

 そう思った時には、僕達の前に、人影が。


「・・・・・・リョナ子様ですね」

「突然申し訳ありませんが・・・・・・」

「わ、私達に、だ、黙ってついてきてもらいませんか?」


 いつの間にいたのだろうか。


 僕と殺菜ちゃんの前には三人の男女。


 2メートル近くある長身長髪の男。

(その実、40歳以上の女性を好み、被害者の上は90歳まで、いたぶりとことん陵辱、熟女殺しの殺人鬼、シルバーメダル)


 コートをびしっと着こなす僕と同世代くらいの女性。

(その実、そのコートの下は全裸。殺す際はつねに全裸、家でも全裸。返り血をその身に浴びて、それをコートで隠す、露出狂殺人鬼ヌードナチュラル」


 こちらをオドオドと見つめる丸眼鏡の少女。

(その実、極度の男嫌い、謝りながら滅多刺し、でも息絶えた姿を見ると、最後に笑う、アダムキラー奏)

 

 うわー。

 三人の背中に、無数の骸骨が見えるよう。

 それだけ、一般人とかけ離れた雰囲気。


 ただ、悪意は見えない。

 気の緩みもあったのだろう、その油断が命取り。

 潜在的な抵抗力が薄れていた。 


どうだろう。もし、ここにいたのが僕一人だったのなら。

 そのまま、この得体の知らない人達に黙ってついていったのかもしれない。


 でも、今は一人ではなかった。


「ん~? なんすか、あんた達、私の連れになんか用っすか?」


 殺菜ちゃんが僕の前に出た。


「・・・・・・用があるのはリョナ子様のみ・・・・・・」

「邪魔者は・・・・・・皆ごろ・・・・・・」

「すいません、すいません、貴方には何しても・・・・・・」


三人の目付きが変わった。

 僕に向けられてなかった殺気が。

 

 生臭い異常過ぎる霧が。


 殺菜ちゃんに黒い突風となり襲いかかる。


「あぁ? なんすか、もしかして喧嘩売ってんすか?」


 だが、風はかき消される。

 殺菜ちゃんにとってはそよ風も同然。


「なら、買うっすよぉぉ、なんだかあんた達、嫌な感じだわぁぁ」


 殺菜ちゃんが睨み返した。


「・・・・・・うっ」

「な、なに、この子」

「あぁあ、すいません、すいません、嘘です嘘です嘘ですっ」


 切れ味が冴える刃物が一気になまくらになった。

 三人の、顔はうってかわって怯えをみせた。


「リョナっち、先にカフェに行っててっす。店に入るまで私が見てるっすから」


「あ、う、うん」


 なんかわからないけど、僕はやばそうな人達に絡まれそうになったみたい。

 こんな人達には仕事以外では関わりたくないので、殺菜ちゃんのいう通り、路地から出ることに。


 大通りに出ると、人は普通に大勢歩いている。

 なんだったんだ、さっきの人気の無さは。


 人の流れに乗り、進むと、車道から一台の車が近づいてきた。


「あんれ~、やっぱりー、リョナ子さんじゃないですかぁー」


 赤いクラシックカーに乗ってたのは。


「あ、君は、確か、シストくんの妹の、タシイちゃん」


 ツインテールの美少女。相変わらずシストくんと同じでキラキラしてる。


「どこか行くんですかぁ? 送っていきますよー」


 目的のカフェは、もう少し先。でも、態々車で行くような距離ではなかったんだけど。


 ぞくっ。


 ここで、またさっきのような嫌な視線。


「・・・・・・じゃあお言葉に甘えてすぐそこだけどいいかな?」


「ええ、喜んでっ!」


 一人の状態で、さっきみたいな事になると面倒だ。

 ここは、タシイちゃんに乗せてもらおう。


 二人乗りの助手席に乗り込む。

 外車かな、左ハンドルだったから、僕は右。


「格好いい車だねぇ、これタシイちゃんの?」

「はい、元々父のコレクションの一つだったんですけど、譲ってもらったんです、ジャガーEタイプ、私も気に入ってるんですよー」


 車はよく知らないけど、古そうな割に外装も内装も新品のようでとても高級そう。もしかして、タシイちゃん、ものすごいお嬢様なのか。


 そんなこんなでしばらく車を走らせていると。


「・・・・・・あれ、検問してる」


 前の方で、警察車両が数台。

 道を止めて、聞き込みをしてるね。


「・・・・・・これは・・・・・・」


 タシイちゃんが小さく呟いた。

 一瞬、ほんの一瞬だけ、タシイちゃんの顔が違って見えた。

 それは、とても同一人物とは思えないような恐ろしい形相で。


「・・・・・・ごめんなさい、リョナ子さん、なんだか時間かかりそうなので、ここから歩いたほうが早そうです」


 だけど、そう言い、こちらを見たタシイちゃんの顔はいつも通りの整いすぎた可愛らしい笑顔で。

 

「あ、うん、そうするよ。ありがとう、また今度ね」


「はいっ! またっ! ええ、そうですね、すぐ・・・・・・近いうちに」


 車を降り、また一人になった。


 そのタイミングでスマホの着信が。


「はい、あぁ、蓮華ちゃん」


 相手は蓮華ちゃんだった。夜に食事へいく予定だからその話かな。


「ああ、リョナ子さんですか。いきなりですが、これから私の指示に従ってくださいっ!」


「ええ、どうしたの、いきなり」


「実は、かくかくしかじかで・・・・・・」


「なんだってぇっ!」


 蓮華ちゃんの話はこうだ。

 僕が拷問士とどこかで情報が漏れて、それを狙って恨みを持つ過去の罪人が報復しようとしてるらしい。

 

 じゃあ、さっきの奴らはそういう目的だったのか。


 いや、それにしては、敵意はなかったような。


「とにかく、今は私のいう通りに動いてくださいっ!」

「う、うん、なにがなんだか分からないけど分かったよ」


 殺菜ちゃんには悪いけど、事情が事情だ。

 今は、蓮華ちゃんのいう通りにしよう。


「〇〇ショッピングモールの地下駐車場へ向かってください。公共機関は、私とあちらで権限のイタチごっこになりますので、私の息のかかった局員を向かわせます、最終的に私のいる執行局で落ち合いましょう」 


「わ、わかったよっ」


 〇〇ショッピングモールはここからすぐ近くだ。


 僕は足早にそこへ向かった。


 

 地下への階段を下る。

 ここまでは無事だった。


 広い駐車場に足を踏み入れると。


「ちゃんリョナさん、こっち、なのだっ!」


 お、その声としゃべり方は。


「円じゃないか、って、一体どうなってるんだ」


 目線を声の方に向けると、思った通り円が一人立っていて。

 驚いたのは、その周りに、呻き声を上げて、倒れてる数人の男女がいること。


「今は、そういうのはいいのだっ、多分、腹痛なのだ、すぐ車に乗るのだっ!」


 腹痛なら尚更駄目じゃないか。


「もう救急車は呼んだ、のだっ! だから、早く、乗って、欲しいのだ、ですっ!」


 救急車は呼んだのかっ、なら大丈夫だっ。

 円が蓮華ちゃんに言われて迎えにきたのだろう。

 なら、それに従おう。


「あ、あと、スマホの電源は切るの、だ。それで特定されてしまう、のだ、腕時計もここに置いてくのだっ!」

「あ、そうなのか。でも時計は後で回収してよ」


 僕はなんの疑いもないまま円の言う事に素直に従い。

 青いスポーツカーに乗り込んで、僕はこの場を後にする。


 向かった先は、執行局。


 ここの駐車場も地下。

 執行局の建物とは別にあった。

 でも、目と鼻の先だから降りたらすぐだ。

 執行局に直接繋がる通路もある。


 車を降りた瞬間。

 また、あの嫌な感じが纏わり付いた。


 えぇ、ここにもいるって事? 


 他の車の影から数人の男女が姿を見せる。


「こっからは意地でも通さねぇです」

「最終ライン、ここで止めなきゃ、私達がお仕置きされる」

「あぁ、それは嫌、嫌、嫌、いやぁああああああああああああああああああ」


 う~ん、これまたやばそうな人達が出て参りました。


 顔の上半分が焼けただれている男。

(その実、放火殺人の常習者、ただ、普通じゃないのが、放火した後に殺すこと、炎の中で人を殺す、殺人鬼ファイアーフラワー)

 

 白目部分が真っ黒、多分そこにタトゥーを入れてるんだ。とにかく目を合わせたくない青年。(その実、男女問わず拉致したのち、自宅の地下に、吊して放置。大きな釣り糸のようなフックを複数背中に刺し空中に吊す。殺人鬼ハングドマン)       

 

 ナース服の上にコートを纏い、右手には注射器、とにかく見た目が場違いな女。

(その実、元ナース。故意に殺した患者は数知れず。彼女が担当した患者は謎の死を遂げる。殺人鬼エンジェルナース)   


見るからに普通じゃない。


 彼らの用は勿論、僕みたい。


 だが、あちらもすぐには動かない。


 それもそのはず。

 

 こちらにいるのは。


「うくく、なんだ、来るなら来るのだ、いつでも、相手してやる、のだ」


 あの葵ちゃんの後継者。

 

 蓮華ちゃんの右腕、レコード持ちのレベルブレイカー、切り裂き円。


「あぁ、どうすればいいんだ・・・・・・」

「勝てるはずない、でもやらなきゃ・・・・・・」

「私達が、カリバさんに・・・・・・」


 聞き取れないけど、三人はブツブツ何かを言っている。

 何かに怯えてる、それは円というよりは・・・・・・。


「もういいわぁ、貴方達じゃ無理よぉ」


 遠くから足音が。


 建物の影からゆっくり歩いてくる人影。

 その顔が近づく事により鮮明に。


「リョナ子ちゃん、迎えにきたわぁー、さぁ、一緒に行きましょう」


 にこりと、同時に悪寒。


 細目で微笑む妙齢の女性。

 何度か会った事はある。


 シストくんとタシイちゃんのお母さん。


「ち、やばいのが出てきた、のだ。ちゃんリョナさん、この場所にいって、欲しいの、だ、です」


 円の余裕が消えた。

 渡されたのは一枚のメモ。


「今日何度目かの、よく分からないだけど、とりあえず、行くよ、おばさん、今日はすいません、先約があるのでぇっ!」


 後ろを向くと、一目散に走った。


「あぁ、待ってぇ~、リョナ子ちゃん、駄目よぉ~」


 黒い手がいっぱい迫ってくるよう。

逃げるように離れる。


「切り裂きぃぃぃ、なに邪魔してるのぉぉ、私達の、私のぉ、悲願なのよぉ、私はあの女、人形遊びの約束なんて知らない、だから、別にお前を、どうしようがぁあああああああああああああ」


 最後にそんな雄叫びにも似た声が聞こえた。



 エレベーターに乗り込む。


 メモには最上階の部屋が記されていた。


「あれ、蓮華ちゃんは地下にいるはずじゃ・・・・・・」


 まぁ、急遽場所を変えたのかもしれない。


 僕は指示された場所の部屋を開け、中に入る。


 部屋の中は暗く、されど数十のキャンドルが淡い光を灯していた。


 扉を閉めた瞬間。

 ガチャリと音を立てて、鍵がかかる。


「え、え、え、え、あれ、開かないぞっ」


 ノブを力任せに動かしてもビクともしない。

 えぇ、何故か、閉じ込められたみたいだよ。


「メリークリスマス、リョナ子ちゃん」


 聞き間違いか。

 この部屋には人の気配はまるで無かった。

 なのに、声が聞こえて。


 そしてその声は、とても・・・・・・。


 驚きながらも振り向くと。


 数々の料理が置かれたテーブルの奧。


 タブレットのようなモニターが立てかけられていて。


「・・・・・・葵ちゃん」


 そこに映っていたのは、紛れもない彼女の姿。


「うふふ、驚いたかな、これを見てるって事は円ちゃん、ちゃんとお願い聞いてくれたんだねぇ。さすが私の妹だよぉ」


 なるほどね。これで少しだけ分かったよ。


 円は蓮華ちゃんに従ってたんじゃなく。

 葵ちゃんの言う事を聞いていたのか。


 それも数年前の・・・・・・。


「君って奴は、もう呆れを通り超すね。こんなもの撮ってたなんて」


 僕はもう素直に席に着いた。


「多分、私の予想では、このクリスマス、リョナ子ちゃんを巡って色んな人が取り合いになってると思うの。でもね、最後に勝つのは私なんだよぉ」


 そうだね。取り合ってたかどうかは知らないけど、とにかく僕はここにいて。

 

 いう通り、君の勝ちみたい。


「ここからは私が一方的にリョナ子ちゃんへの想いをしゃべり続けるのだけど、電源切っちゃ駄目だよぉ。ちなみにこの先数十年先まで撮りためてますっ」


 それは、ちょっと困るなぁ。


 でも、なにはともあれ。


「メリークリスマス」

本当はイブに投稿しようとしたんですが間に合わず、まぁ本来は今日なので。

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